国会質問議事録

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外交防衛委員会(核兵器禁止条約)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 在外公館法は必要な措置でありまして、賛成です。
 私からも、核兵器禁止条約のことでお尋ねをいたします。
 二十七日から国連の核兵器禁止条約の交渉会議が始まりました。被爆者を始め多くの声が国際政治を動かしたと思います。我が党、日本共産党からは志位委員長が核軍縮・不拡散議員連盟の一員としてこの会議に参加をしておりまして、昨日、会議での発言の機会を得ました。日本政府がこの議場にいないのは残念だが、被爆者と日本国民の大多数はこの条約を強く支持していると述べて、この条約が締結されれば、市民社会の組織が力を合わせ、核兵器に依存する国に対して、政策を変え核廃絶に取り組むよう迫るものになると強調いたしました。日本政府は、被爆国でありながら交渉開始決議に反対をし、国連会議の場でも反対を表明し、交渉に参加しないということも表明をされました。
 この国連会議で演説した日本の被爆者は、日本政府が決議に反対したことについて、心が裂ける思いだったと述べました。同じく、カナダに在住の被爆者は、自国に裏切られたと演説をされました。大臣の地元広島からも、多くの被爆者が憤りの声を上げております。
 この声をどう受け止めていらっしゃるのか、経緯については先ほど答弁ありました、短い時間なのでそれは結構ですので、どう受け止めていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、御指摘の被爆者の方々等の思いについては、大変貴重なものであり、重たいものであると考えます。そうした声をしっかり受け止めなければならない、このように考えます。
 そして、そういった方々と、日本政府も核兵器のない世界を目指す、こうした目標については共有しているものと思います。この核兵器のない世界を目指すために具体的な結果を出すため政府の立場としてどうあるべきなのか、こういったことについて慎重に、そして十分に検討をいたしました。その結果として、先ほど答弁させていただきましたような対応を取った次第であります。
 政府の立場から、これからも核兵器のない世界を目指す、そして具体的な結果を出すために、我が国の考え方を一貫して貫いてこれからも国際世論をリードしていきたい、このように思います。
○井上哲士君 核保有国と非保有国の協力が必要だ、分断を広げてはならないと、こう言われるわけでありますが、それをつくり出したのは誰なのかという問題なんですね。
 二〇〇五年、二〇一〇年のNPTの再検討会議では、核兵器のない世界の達成へ特別な取組を行うということを合意をしております。ところが、核兵器国がこの成約を実践するどころか、段階的アプローチの名で核兵器廃絶を先送りをして自国の核軍備の近代化を強化する態度を取ってきた。私は、分断をつくり出したのはこの核兵器国の側だと思うんですね。だから、もう待っていられないということで、被爆者や市民社会の声がこの交渉会議を実現をいたしました。
 核保有国が参加しない下で核兵器の禁止条約を作ることは分断をもたらすということになりますと、結局もう核保有国が反対することは何もするなと、こういう議論になってしまうと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 私も、外務大臣四年をやり、様々な場で核兵器国と非核兵器国の対立の場面を見てきました。その中で感じたことは、現実、核兵器を持っているのは核兵器国ですから、核兵器国を巻き込まなければ具体的な結果につながっていかない、こういったことを痛感してきた次第です。核兵器国の言いなりになるということは決してあってはならないと思います。ただ、核兵器国を巻き込んで議論をしなければ、核兵器を持っていない国だけで議論を行っても結果につながらないということであります。
 是非、核兵器国を巻き込む努力、これは辛抱強く続けなければなりません。これを諦めてしまっては現実は動かないという、このことをしっかり考えながら、粘り強く、辛抱強く、従来の核兵器国と非核兵器国、両方が参加する枠組みを前進させる努力を行っていくべきではないかと私は思っています。
 NPT運用検討会議、前回は残念な思いをしましたが、今年の五月からは次のNPT運用検討会議の準備プロセスも始まるわけです。こういったときに、この核兵器国と非核兵器国の亀裂を更に深めてしまうことは避けるべきではないか、こういったことを唯一の戦争被爆国としては強く感じています。是非そういった思いを訴えながら、核兵器国を巻き込んだ議論を粘り強く続けていきたい、このように思います。
○井上哲士君 核兵器国の言いなりになることではないんだと言われました。しかし、最大の核兵器国であるアメリカは、日本など同盟国に反対を迫ったわけですね。
 昨年の十月に、大臣、私の質問に対して、我が国と米国は核兵器のない世界を目指すという大きな目標を共有していますと、こういうふうに言われました。しかし、トランプ政権は今明らかに核増強の方向にかじを切っておりますが、それでも大きな目標を共有しているという認識でしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず米国においては、今現在、この新政権において核政策の見直しを行おうとしているということは承知をしております。これから具体的な作業が行われていくと承知をいたしますが、ただ、米国からは、例えばトランプ大統領自身も、私は核のない世界を誰よりも見たいと思っている人間だ、こういった発言も行われていますし、また先般、この核兵器禁止条約交渉会議の際に米国が行いました共同記者会見というものがありますが、その場で米国のヘイリー常駐代表も核兵器のない世界以上に望むものはない、こういった発言をしております。
 今現在、核兵器のない世界を目指すというこの共通の目標、日本も米国も共有していると考えております。
○井上哲士君 言葉としては否定をしないかもしれません。しかし、今アメリカのNSCで大量破壊兵器や不拡散を担当するフォード上級部長が二十一日にワシントンで講演をしております。オバマ氏のプラハ演説には非現実的な期待を助長したと述べた上で、トランプ政権の核政策の見直しについて、核兵器のない世界という目標が現在の国際安全保障環境を踏まえたときに中長期的な現実的な目標なのかどうかも含まれると、見直しに。
 ですから、長期的にも現実でないという話になりますと、核兵器廃絶をまさに、私、永遠のかなたに追いやるものだと思うんですね。こういう今のトランプ政権とどうして核なき世界を共有していると果たして言えるのかということだと思います。この間、橋渡し役というふうに言われてきましたけれども、今の日本の姿というのは、もう橋を渡って核保有大国の側にいるんじゃないかと、これが多くの今被爆者や市民が見詰めているこの批判の声なわけですね。
 私は、被爆者と国連加盟国の圧倒的多数の諸国が求めているこの核兵器禁止条約に核保有大国の協力を迫るということこそが被爆国日本の一番のなすべきことだと思います。その立場に転換することを強く求めまして、時間ですので質問を終わります。

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