国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2017年・193通常国会 の中の 倫理選挙特別委員会(阪神・淡路大震災の被災自治体の選挙期日法案)

倫理選挙特別委員会(阪神・淡路大震災の被災自治体の選挙期日法案)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ただいま提案者から趣旨説明が述べられました。阪神・淡路大震災の被災自治体において選挙期日と任期を延期し、その後、任期満了日を六月十日としたまま選挙だけは統一地方選挙に復帰をした結果、投票日と任期開始日に二か月のずれが生じた、これを解消したいという兵庫県の自治体の議会の皆さんからの要望は承知をしております。そして私たちも、選挙と任期は接近しているのが常識であって、投票日と任期開始日にずれが生じていることは問題だと考えております。
 このずれの解消には、統一地方選挙から離脱をして選挙期日を任期開始日に近づけるか、ないしは統一地方選挙のまま任期の短縮という二つの方法が考えられるわけであります。
 まず、総務省、お聞きしますけれども、統一地方選挙は、一九四七年の日本国憲法、地方自治法の施行前に一斉に地方議員選挙、首長選挙が行われたことに端を発するものでありますが、その後、統一率は随分下がっていると思いますけれども、今どの程度まで低下をしているのか、その理由についてお願いします。
○政府参考人(大泉淳一君) お答えいたします。
 直近、平成二十七年の四月の統一地方選挙における統一率は、これは選挙の種別ごとに大分異なるものでございますが、全体でいいますと二七・五%ということとなっております。
 その統一率の低下の要因といたしましては、首長の辞職や死亡、あるいは議会の解散、それから市町村合併などが考えられるところでございます。
○井上哲士君 今ありましたように、統一率は下がって、もう三割を切っております。
 一方、本法案は、統一地方選挙から離脱して任期満了に選挙期日を近づけるのではなくて、統一地方選挙にとどまって、任期の短縮によってずれを解消しようという内容になっております。
 提案者にお聞きしますけれども、任期満了に選挙期日を近づけると、こういう方法はどのように検討されたのでしょうか。
○衆議院議員(赤羽一嘉君) お答えさせていただきます。
 先ほどの本法案の趣旨説明にもございましたが、平成七年四月に実施予定でございました統一地方選挙は、阪神・淡路大震災による甚大な被害によりまして被災地の一部地域は選挙の実施が困難となりました。いわゆる阪神・淡路選挙期日等特例法の制定によりまして選挙期日が六月十一日まで延期されるとともに、議員及び長の任期については六月十日まで延長されたことは御既承のとおりでございます。
 そして、その四年後の平成十一年の統一地方選挙の特例法の制定に際しましては、阪神・淡路関係団体からの御要望を受けまして、任期満了日を六月十日としたままで四月の統一地方選挙に参加できるという規定が盛り込まれまして、国会審議におきましても全会派一致の賛成で成立したものでございます。それ以後、一昨年の平成二十七年の選挙まで、阪神・淡路関係団体は毎回統一地方選挙に参加をしているのが実態でございます。
 他方、震災から二十年以上経過した今、地元ではこのずれを空白の二か月間として問題視されておりまして、例えば先ほど説明にもございましたが、引退若しくは落選したにもかかわらず、二か月間は十分な議会活動もせずに議員報酬やボーナスを受給する状態であるとか、せっかく民意を得て当選をしても議員として仕事をすることができない状態の解消を求める強い声が高まっているのは御存じのとおりだと思います。
 このずれの解消のために、統一地方選挙に参加せず六月の任期満了に合わせて選挙を行うことも理屈の上では考えられないわけではございませんが、しかしながら、兵庫県議会を始め関係議会におかれまして、このような地元有権者からの批判の声に対し実に熱心な議論が重ねられ、今般、党派を超えて阪神・淡路関係団体として、統一地方選挙にとどまったまま選挙期日と任期のずれを解消するための特例法の制定を強く要望されるに至ったと承知をしているところでございます。
 私たちは、こうした要望を受け止めまして、地元の総意ともいうべき御意向や状況を踏まえつつ、あくまでも関係団体の判断により選挙期日と任期満了日の間のずれを解消できるようにするものがこの法案の趣旨でございまして、御党におかれましても格段の御理解を賜りたいと存じ上げるところでございます。
○井上哲士君 繰り返しになりますが、我々もずれの解消は必要だと考えております。
 ただ、やはり統一率が三割弱まで低下してきたのはそれぞれの地方自治体の様々な事情があるわけですね。今、関係議会からの要望ということがありましたが、やはり、この選挙期日統一ありきでいいますと、住民の選挙参加とか参政権に関わる問題が生じてくると思うんですね。
 総務省にお聞きしますけれども、これまでに議員の任期をこの法律で直接短縮をしたと、こういう例はあるんでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 現行制度下におけるお尋ねの事例については承知をしていないところでございます。
○井上哲士君 やはり、議員の任期というのは憲法と地方自治法に関わる重大な問題だと思います。有権者は、自分の投票によって議員に四年間の任期を与えて、その間仕事をしてもらうということで選ぶわけでありますから、これ選ぶ側の権利にも関わるわけですね。
 地方議会の自主解散というのがありますけれども、これも元々地方自治法にはなかったものですね。それが、いわゆる東京都議会の黒い霧事件という中で一九六五年に特例法として作られたという経過でありますし、しかもこの特例法は、解散による選挙によって当該地方公共団体の住民の意思を聞く方法ということで作られていることでありまして、そうでなく短縮をする、私は一度でもやっぱり短縮をした先例をつくるということは、今後に及ぼす影響を考えるならば相当慎重な検討が求められると思います。
 総務省にお聞きしますけれども、三・一一の震災の際に任期を延長して選挙を六月にした臨時特例法の際も、それからそれらの自治体が統一地方選の選挙期日に選挙を実施することができるようにした九九年の臨時特例法の際も、いずれも閣法で出されたと思うんですけれども、今回も関係自治体からは総務大臣に法改正の要望が最初されていると思うんですが、なぜ、にもかかわらず今回は閣法としなかったんでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 兵庫県議会等の関係者から昨年の六月に、総務省に対しまして、選挙期日と議員任期のずれを解消するための特別法制定に関しまして御要望をいただいたところでございます。
 もとより、任期の短縮などにつきましては、議員の身分や選挙の基本的なルールといった民主主義の根幹に関わることでもありますため、各党各会派において十分に御議論いただく必要があるものと考えていたところでございます。
 また、一年近く前になりますが、この当時は、他の震災地域への波及はどうなんだろうかと、あるいは議会の解散や全議員の辞職といった他の選択肢の可能性がまだあるのではないかというような検討の時期でもございました。そういうもので御指摘をさせていただいたところでございます。
 その後、関係の皆様、衆議院での起草案作成に携わられた方々において検討、整理されました結果、最終的に衆議院の委員会提出による法案になり、特別法の制定という方向でおまとめになられたものと承知しているところでございます。
○井上哲士君 先ほど答弁述べられたような中で、閣法には慎重にならざるを得ないという言葉が当時総務大臣から述べられ、結果として委員長提案ということになっております。
 これ、任期を短縮する際もこの兵庫県の自治体に限るという方法もあったと思うんですが、にもかかわらず地域の限定を入れなかった結果、要望を掲げている兵庫県以外の自治体も対象になっているわけでありますが、兵庫県以外でこの法律の対象になる自治体はどこか、提案者、お願いします。
○衆議院議員(井坂信彦君) ありがとうございます。
 本法案においては、次の統一地方選挙の年である平成三十一年六月一日から十日までの間に議員の任期が満了することとなる地方公共団体と、一般的な規定の形で対象の団体を規定しております。
 現時点において具体的にこの要件に該当しますのは、阪神・淡路関係の四団体五選挙、すなわち兵庫県議会、神戸市議会、そして西宮市議会、芦屋市議会、さらには芦屋市長であります。それ以外に、阪神・淡路関係団体ではないものの、この要件に当てはまって、そして統一地方選挙に参加している団体は、石川県野々市市長、三重県朝日町長、それから埼玉県鳩山町の議会の三団体三選挙、さらにこの要件に当てはまって統一地方選挙に参加していないものとして埼玉県蕨市長の計四団体四選挙があると承知をしております。
○井上哲士君 今挙げられましたけれども、こういう自治体は要望を特にしていないにもかかわらず、法律上は巻き込まれることになっているわけですね。なぜ兵庫県限定という法律にしなかったのでしょうか。
○衆議院議員(谷公一君) 委員おっしゃられるとおり、当初、阪神・淡路関係団体の要望は、阪神・淡路選挙期日等特例法の適用団体、適用対象となった自治体を対象とする形での任期特例法の制定というものでございました。しかし、ずっと検討する中で、仮に兵庫県限定あるいは一・一七の被災地限定という形にしますと、一つは、阪神・淡路選挙期日等特例法の適用対象となった団体以外にも同じように選挙期日と任期開始日のずれが生じている団体があるにもかかわらず、同法の適用対象団体のみ、つまり阪神・淡路の被災団体のみを任期特例の対象とすることについて合理的な説明ができるかということ。また、委員御承知のとおり、憲法九十五条によって、特定の地方公共団体のみに適用される法律については住民投票が義務付けられている、それで九十五条に抵触する可能性が極めて高いという指摘は考えられたところでございます。
 そこで、法案作りをする際、各党とも十分調整を行いまして、平成三十一年六月一日から同月十日までの間に議員等の任期が満了することとなる地方公共団体と、一般的な規定とする形で対象となる団体を規定をしたところであります。こういう決め方は、平成十一年の統一地方選特例法の規定ぶりをこれは踏襲したものであります。
 しかし、繰り返しになりますけれども、今回の法律は選挙期日と任期開始日のずれを解消する仕組みづくりをしたものでございまして、この法律が成立したときにこの適用を受けるかどうかは自治体自らが判断していただく、しかも単純過半数ではなくて極めて高いハードルを設けている、地方自治も十分尊重した形でつくり上げているつもりでございます。
 被災地、今日も兵庫県議会の藤田議長を始め御関係の自治体の皆様がたくさん来られておりますけれども、そういう地元の思いをしっかり受け止めながら、是非ともこの法律を成立させたいと、そういうふうに考えているところでございます。
○井上哲士君 憲法九十五条で特定の地方自治体に対してだけ拘束力を有する場合は住民投票が要るということがある、これを回避するというのが大きなことだったと思うんです。
 私は、やはり任期を短縮するという前例のない、しかも参政権に関わる問題ということについては慎重な検討が必要だと申し上げました。五分の四以上の同意という、ハードルを上げたとしても、有権者である住民の直接の意思を問う憲法九十五条の住民投票に取って代わるものではないと考えております。
 ずれを解消するには、選挙期日を任期開始日に近づければ可能でありますし、兵庫以外の自治体が巻き込まれる、こういうような中身になっていることは賛同できないということを最後申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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