国会質問議事録

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外交防衛委員会(米トランプ政権によるパリ協定脱退表明)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、環境に関わる二つの協定も提案をされております。ちょうど昨日から地球環境に関わってパリ協定の作業部会が開かれておりますので、この協定とトランプ米政権との対応についてお聞きをしたいと思います。
 トランプ大統領は、選挙中から、パリ協定からの脱退など地球温暖化対策に非常に否定的な発言を繰り返されました。そして、実際、三月十六日には気候変動と環境予算を大幅に削減する予算案を発表し、二十八日にはオバマ前政権の地球温暖化対策を全面的に見直す大統領令に署名をしております。これによって、パリ協定で米国が掲げた目標の達成は極めて困難になりますし、世界第二位の温室効果ガス排出国であるアメリカが目標達成に背を向けるならば全体の目標達成自身も困難になります。
 かつ、各国の取組にも大きな影響を与えることになります。特に、途上国の温暖化対策を支援する緑の気候基金への全体の三割に当たる総額三十億ドルの拠出を表明したわけでありますが、これも打ち切るという方針を表明していることは重大だと思うんですね。
 まず、外務省としては、こういうトランプ政権による地球温暖化対策見直しの具体的内容をどう承知しているのか、そして、そのことが世界の温暖化対策に与える影響についてどのように認識をされているでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、米国政府の動きですが、本年三月十六日に二〇一八年度予算の政府原案を発表し、その中で、御指摘の緑の気候基金、GCFや、気候投資基金、CIFへの拠出の停止を示したと承知をしています。また、三月二十八日にはトランプ大統領が、エネルギー自立と経済成長促進を目的とし、エネルギー資源の利用規制の見直しを命じた大統領令に署名し、その中でクリーン・パワー・プランの見直し、これはオバマ政権時代の政策ですが、この見直しのために必要な措置を実施することを関係閣僚に命じた、こうした動きがあることは承知をしております。
 ただ、現時点で、気候変動問題全体に対するトランプ政権の政策、この政策の全体像については必ずしもまだ明らかにされていないと認識をしております。
 こういった状況ですので、まだその影響について予断をすること、これはまだ控えなければならないと思いますが、ただ、トランプ政権、米国政権のこの気候変動政策に対する影響、これは当然大きなものがあると思います。引き続き注視をしていかなければならないと思います。グローバルな課題である気候変動問題について米国との連携、これは重視していきたいと考えています。
○井上哲士君 注視をするということだけでいいのかということなんですね。世界では危機感を持って行動が広がっております。アメリカ国内でも、ニューヨーク州など二十四の自治体の司法長官が連名でこの大統領令の署名に反対し、連邦高裁に提訴をいたしましたし、アースデーの四月の二十二日、それから、政権発足百日目の四月二十九日にもワシントンを含む世界各国で大規模な抗議の行動が行われて、四月二十九日にはワシントンは二十万人の参加でありました。
 一方、今、注視をするということでありましたけれども、私は、こういう様子見の姿勢というのは昨年の臨時国会でのこの協定承認のときにもあらわになったと思うんですね。政府は全体の世界の流れを理解せずに国会提出が大幅に遅れて、COP22には締約国として参加をできなかったわけであります。当時、TPPを優先してパリ条約は後回しだという、こういう批判が、我々もしたわけでありますが、政府は、伊勢志摩サミットでも早期締結を掲げた共同宣言を上げたということも言われました。
 しかし、その後の事態を見ますと、トランプ氏が選挙戦の中で、この地球温暖化対策の見直しとともに、TPPからの離脱を主張いたしました。そうしますと、安倍政権は、もう当選直後から異例の訪米をして、TPP脱退しないというような説得もするし、他の国にも働きかけをしてきました。
 ところが、このパリ条約の問題では、首脳会談等で地球温暖化対策を後退させないようにというふうにトランプ政権に働きかけたという痕跡は見当たらないわけですね。結局、やはりこの問題では世界の様子見と、こういう姿勢が私は変わっていないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、我が国としましては、この気候変動問題への対応、これは国際社会が取り組むべきグローバルな課題であり、米国の関与、極めて重要だという認識を持っております。
 そして、私自身も、あれは三月十六日の日米外相会談の場だったと記憶しておりますが、ティラソン国務長官に対しまして、パリ協定を含む気候変動問題への対応は国際社会で取り組むべきグローバルな課題であり共に連携していきたい、引き続き意思疎通を図っていく、こういったことをティラソン国務長官との間で確認をさせていただきました。
 引き続き、米国との間で様々なレベルを通じて意見交換を行っていき、日本の考え方、しっかりと述べていきたいと考えています。緊密に協力を続けていきたい、このように考えます。
○井上哲士君 その日米外相会談で、今紹介ありましたように、共に連携していきたい、意思疎通を続けていくと、こういうことでありますけれども、もう明確にトランプ政権がこのパリ条約で掲げた目標を事実上ほごにするという流れの中で、なぜ連携ということとか、こういう言葉にとどまるのか。私は、TPPに対するアメリカ政権への日本の対応とは随分やはり違いがあると思うんですね。
 政府が強調してきたように、伊勢志摩サミットで共同声明で強調しておりますが、その中で、パリ協定の速やかな、かつ成功裏の実施を確保する我々の決意もまた再確認すると、こういうことも書いていますし、それから緑の気候基金については、開発途上国が緩和及び適応に取り組み、国家の気候計画の実施に際して支援をすることを奨励すると、こういうことをお互いの共通の宣言にしているわけです。これに反する流れが起きていると。そうであるならば、政府はこれを議長国として取りまとめたわけでありますから、その議長国として正面から私は今物を言うべきときだと思います。
 五月には、今月にはイタリア下でG7サミットが行われますが、前回サミットでこういう気候変動についての明確な共同声明をまとめた議長国として、私はこのイタリア・サミットでもしっかり物を言うべきだと考えますけれども、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国としては、気候変動はグローバルな課題であり、昨年、伊勢志摩サミットにおいて確認されたコミットメント、これを着実に実施していくこと、これ気候変動対策を実行していく上で極めて重要であると考えております。こうした認識は変わっておりません。
 五月二十六日から二十七日に開催されるタオルミーナ・サミットに向けて、気候変動問題について、G7各国と引き続き緊密に連携をしていきたい、このように考えております。
○井上哲士君 連携は必要でありますが、明確にサミットの場で日本政府として主張をする、発言をすると、そういうことで確認してよろしいですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日本としての考え方はしっかりと明らかにすべきだと思います。そして、G7各国、米国以外の国々ともしっかり議論した上で、この今回のサミットにおいてもしっかりとした方向性を確認していきたい、このように考えます。
○井上哲士君 国際社会が取り決めたその方向から明確に後退をする、国内的にはサボタージュ、国際的にはブレーキを掛けるということが現に目の前で行われているわけでありますから、私は日本政府としてしっかりこれを、物を言うし、日本政府の姿勢が問われていると思います。そのことを強く指摘しまして、質問を終わります。

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