国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2018年・196通常国会 の中の 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(福島県議会議員選挙に係る選挙区特例措置)

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(福島県議会議員選挙に係る選挙区特例措置)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 福島県は、福島第一原発事故による避難指示区域等において多数の住民が住民票を残したまま長期間避難することを余儀なくされているという、公選法はもちろん、ほとんど誰も予測しなかったような異例の状態になっております。改めて、原発が一たび大事故を起こせば空間的にも時間的にも社会的にも異質の被害をもたらすものであるということを痛感をしております。
 このような国の避難指示による住民避難が続いている状況に鑑み、福島県議会議員の選挙区について特例措置を講じてほしいという福島県議会の要望を我が党も重く受け止めておりまして、国勢調査人口と選挙人名簿の基礎となる住民基本台帳人口との間の乖離に対処するための特例法を立法する必要があると、この認識は法案提出者と共有をしております。
 一方、立法に当たっては、憲法と公選法の基本理念、原則と一貫性を持った内容での特例とする必要があります。その点、改正案の内容に懸念があって、我が党は衆議院で修正案を提出をいたしました。結果として定数は一緒ではありますけれども、一貫性を持たせる中身であります。
 まず、選挙部長にお聞きしますが、憲法は選挙制度について普通選挙、平等選挙を宣言し、公職選挙法では人口比例に基づく選挙区設定、定数配分を原則としております。一方、法案では、県議会議員選挙という全県同一の選挙でありながら、定数配分の基礎となる人口について、特定の地域にのみ国勢調査の人口と違う人口を用いております。その結果、県内被害者についてダブルカウントという問題が発生します。例えば浪江町から福島市に避難をしておられる住民の場合、住民票を残して住基台帳に記載されている浪江町でカウントされ、一方、国勢調査では現に居住されている福島市でもカウントをされます。その結果、両方で定数配分の基礎の人口としてカウントをされるという事態が起きております。
 お聞きしますけれども、これまで我が国の選挙で同一の住民が複数の選挙区で定数配分の基礎としてカウントをされると、こういう事態はあったんでしょうか。


○政府参考人・総務省自治行政局選挙部長(大泉淳一君) お答え申し上げます。
 今回の法案につきましては、平成二十七年国勢調査の結果による人口が平成二十二年の国勢調査の結果による人口を著しく下回る市町村の人口について、その二十七年の国勢調査人口に代えて、二十二年の国勢調査人口を基本として、それを住基台帳の人口で増減率を加味して数値を用いることができるというような法案と承知しております。そういう意味では、本来の人口と、それを補正するための住基を使ったというような位置付けではないかと考えられます。
 今委員御指摘のような、過去にダブルカウントということが、委員御指摘のとおりのことがダブルカウントと申しますれば、このような同様の立法例は承知しておりません。
 ただ、本法案の背景である避難指示による国勢調査と住民基本台帳人口の間の大きな乖離というものも、これも過去に生じたこともまた承知しておりません。


○井上哲士君 答弁にありましたように、福島のようなこういう異例の事故は、事態は過去そもそもなかったわけですね。その下で、この法案によってダブルカウントになるわけでありますが、これも過去なかったということであります。
 そこで、もう一点お聞きしますけれども、同一の住民が複数の選挙区で定数配分の基礎としてカウントされるということによって、選挙の平等の原則に抵触するというおそれはないんでしょうか。


○政府参考人(大泉淳一君) この点につきましては、この法律、今の委員の御指摘がこの法案の本体に関わる問題でございまして、議員立法で提出されたものでございますので、総務省としてはお答えは差し控えたいと思います。
 ただ、福島県の状況、憲法、公選法などの関係法規を、関係の規定を総合的に勘案しまして、各党各会派で人口の推計方法も含めて様々御検討をいただいてこのような方法で人口の特例を設けるということに至ったと、取りまとめられたと承知しております。


○井上哲士君 では、そこで提案者にお聞きいたしますけれども、今回の特例を設けるに当たって、平成二十七年の住民基本台帳人口そのものを用いるのではなくて、平成二十二年の国勢調査人口を基本として、住民基本台帳の増減率を加味した人口を用いるということにしておられます。この理由について、衆議院の答弁では、特例を設けるに当たって、国勢調査人口を用いるという基本的な考えとできるだけ一貫性を維持しなければならないと考えたと、こうされております。
 そこでお聞きしますけれども、法案でこういう形を取ったことによってこの一貫性は維持をされたと、こういう認識でしょうか。


○衆議院議員(金子恵美君) お答えいたします。
 公職選挙法においては、地方公共団体の議会の選挙区及びその議員定数を定めるに当たって、従来から一貫して最新の国勢調査人口を用いることとしています。その趣旨は、国勢調査人口が人口の把握そのものを目的として、統計法に基づき全国一斉に行われる実地調査による確度の高い人口であるからでございます。
 したがって、その特例を設けるに当たっては、必要な範囲に限って補正をしつつも、国勢調査人口を用いるという基本的な考え方はできるだけ維持するべきであると考えます。このため、本法案では特例人口の適用範囲を必要最小限に絞り込むこととしたものでございます。
 このようにして、本法案では公職選挙法の基本的考え方との一貫性を維持しているところでございます。


○井上哲士君 私聞いているのは、適用範囲ではなくて、国調人口をそのまま使わずに住民基本台帳の増減率を加味した人口を用いることによって一貫性は維持されているんですねと、こういうことをお聞きしております。


○衆議院議員(金子恵美君) 再度お答えいたしますけれども、国勢調査を用いるというその基本的な考え方をできるだけ維持するという考え方で、今回、双葉地方という原発事故の被害があったその地域に必要であるということから、最小限に絞り込むという形でこの法案の中では基本的な考え方としてこのような形を取っているということでございまして、公職選挙法の基本的な考え方との一貫性を維持しているというふうに考えます。


○井上哲士君 衆議院でもちゃんと答弁されているから、ちゃんと答弁してほしいんですけど。
 今のは適用範囲の話なんですよ。私聞いているのは、そうではなくて、国勢調査人口を直接使わずに住民基本台帳の増減率を加味した人口を用いることによって一貫性が維持をされていると。これ、衆議院で岡田さんに答弁されています。それを確認しているだけなんです。


○衆議院議員(金子恵美君) お答えいたします。
 選挙制度の分野において、従来から一貫して国勢調査人口を用いてきたところであります。その特例を設けるに当たっては、必要な部分を補正しつつも、国勢調査人口を用いるという基本的な考え方とできるだけ一貫性を維持しなければならないと考えたところでございます。
 そこで、本法案では、住民基本台帳人口そのものを用いる形を取らず、国勢調査人口を基本としつつ、住民基本台帳人口の増減率を加味した人口を特例としていることとしたものでございます。


○井上哲士君 今のことを確認したかったんですね、最初から。
 法案は、特例であるけれども、国調人口を用いるという基本的考えと一貫性を維持したと、この計算式によってと、こうなっているわけです。ところが、一方、法案は特例人口の対象を特定の地域に限ったために、先ほど申し上げましたダブルカウントという事態を生じさせております。
 衆議院での我が党議員によるこの問題の指摘に関して、それも考慮したけれども、特例人口の適用範囲をできるだけ絞り込んで国調人口を用いるという公選法の原則に忠実にして既存の法整備との整合性を取ったと、先ほどの答弁の話ですね、ありました。しかし、この特例人口が国調人口を用いるという基本的考えと一貫性が維持をされていると。そうであれば、それを部分的に適用しても全体に適用しても、一貫性が維持をされているのは変わらないと思うんですよ。そうであれば、私は、これを全部の県に適用しても既存の法制度との整合性を崩すことにはならないと思うんですね。一方、複数の人口を使うことによって、先ほど言いましたダブルカウントということになりまして、特例に特例を重ねて、平等原則を崩し、公選法の一貫性に背くことになりかねないと思います。
 そこでお聞きしますけれども、選挙の一貫性を貫いて、県民の意思を正確に反映をさせるというためには、私どもが衆議院に提出した修正案のように、特例人口を、避難住民に係る事務処理特例法の指定都道府県、この福島県全域で適用するとしたことの方が私は理にかなっていると思うんですけれども、提案者、いかがでしょうか。


○委員長(徳永エリ君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願い申し上げます。


○衆議院議員(佐藤茂樹君) ただ、大事なところですので、委員長の御指示でございますが、しっかりと答弁させていただきたいと思います。
 井上委員の御質問にお答えをいたします。
 本法案では、先ほど提案者の答弁のとおり、国勢調査人口を用いるという公職選挙法の基本的な考え方との一貫性をできるだけ維持をしようとする考え方を取っております。他方、特例人口を委員がおっしゃるように県全域で適用し、次の県議会選挙という特定の選挙の中での整合性を取っていくという考え方も一つのお考えではないかと私どもも思っておりますけれども、本法案の検討段階において、公職選挙法などの既存の法体系との整合性という観点から、それを重視するという判断で避難指示区域等に限定して特例人口を用いることができるようにしたものでございます。
 仮に、県内全域で特例人口を用いることとした場合に、本法案が原発事故による避難指示によって国勢調査人口と住民基本台帳人口の間に大きな乖離が生じている地域があることを契機として特例を定めるものであり、こうした地域以外にも特例人口を適用するのは本法案の趣旨を超えるのではないかというそういった点であるとか、あるいは選挙制度の分野においては従来から一貫して国勢調査人口を用いてきたところであり、その特例を設けるに当たっては、必要な部分を補正しつつも、基本的な考え方はできるだけ一貫させ、例外は必要最小限とすべきではないかといった、そういう点が課題となるということも考えたところでございます。このような理由から、特例人口の適用範囲は必要最小限に限り、それ以外の地域では国勢調査人口を用いることとしているわけでございますが、これによって、国勢調査人口を用いるという公職選挙法の原則を維持しつつも、全体として福島県民の意思を議会に反映することができるような適切な定数配分が確保できるものと考えているところでございます。
 なお、本年一月の福島県議会の最新の要望書におきましても、避難指示があった区域で平成二十七年国勢調査の人口が平成二十二年国勢調査の人口を著しく下回る結果となった区域において、特例の数値を当該区域の人口とみなすことを可能とするよう要望書をいただいているところでございます。


○井上哲士君 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

ページ最上部へ戻る