国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2018年・196通常国会 の中の 外交防衛委員会(TPP11協定と日米通商関係について①)

外交防衛委員会(TPP11協定と日米通商関係について①)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 TPP11は、オバマ政権が二〇〇九年に参加の意思を表明して以来、アメリカが主導して進められてきました。当時、カーク米通商代表は、我々は大志を持って、全面的にあらゆる領域で、高い水準を持った二十一世紀の貿易協定という米国のゴールを達成するために非常に積極的に進んでいると、こういうふうに表明をしていたわけですね。ところが、トランプ政権が発足後、イの一番に大統領令を出して、TPPからの脱退を表明をいたしました。本会議でも指摘しましたけれども、今や現職の閣僚が公然とこのTPPを欠陥協定というふうに呼ぶに至っております。
 このようなアメリカの変化、その大本には何があると外務大臣、お考えでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 米国を含め他国の通商交渉における態度の変化について我が国として説明する立場にはございません。
 その上で申し上げれば、日本としてTPPが日米両国にとって最善であり、米国の経済や雇用にとってもプラスになるものと考えておりまして、引き続き米国としっかり粘り強く交渉してまいりたいと思います。


○井上哲士君 先ほども保護主義的傾向が広がっていることの問題などが言われました。ただ、これは単にトランプ政権の誕生による政策の変更と私は捉えられないと思うんですね。なぜなら、あの一六年のアメリカ大統領選挙では、独りトランプ氏だけではなくて、民主党の候補者もTPP反対を掲げました。
 これはなぜかと。衆議院の関連法質疑の際に鈴木参考人がこう述べられております。アメリカ国民の八〇%が、TPPをやってもグローバル企業の経営陣がもうかるだけで、賃金は下がる、失業が増える、国家主権の侵害だ、食の安全性が脅かされるということで、大統領候補の全てがTPP反対と言わざるを得なくなった、保護主義との闘いではございませんと、こういうふうな自由貿易への反省からこれを否定せざるを得なくなったという国民の声があるわけですと、もう一方でもグローバル企業はもちろん違うと、こういうふうに指摘をされました。
 つまり、保護主義どうこうではなくて、国民の間でこうした貿易協定への不信の広がりがあると、こういう事実があの大統領選挙にも現れ、トランプ政権の政策にも現れていると思いますけれども、大臣、こうしたアメリカ国民の中での世論、声、どのようにお考えでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 戦後、この自由貿易で最も利益を得てきたというのが日本であり、アメリカであり、ヨーロッパなんだろうというふうに思っております。
 様々な御意見があるかと思いますが、我が国は、やはり国際経済を繁栄させるためにもこの自由貿易を堅持していくということが非常に大切だというふうに考えております。WTOをベースとした自由貿易体制をしっかりと堅持してまいりたいと考えております。


○井上哲士君 私、重要なのは、今挙げたようなアメリカ国内における様々なこのTPPへの反対の声、これが日本国内における様々な反対の声と共通をするものだということなわけですね。
 こういう国民世論を背景にして、これまでグローバル資本主義を推進をしてきた盟主とでもいうべきアメリカがTPPを離脱した。では、ほかの参加国はどうしたかと。凍結要求が各国から八十項目も出されて、結果的には二十二項目ということになりましたけれども、これ、各国はどのような理由でこういう凍結を要求したんでしょうか。


○政府参考人(澁谷和久君) お答え申し上げます。
 私、ずっと現場におりまして、各国の凍結要望は、どちらかといいますと少人数といいますか、バイの形でいろいろとサウンディングがなされて、日本がどっちかというとみんなの話をよく聞くコーディネーターのような役割を果たしたわけでございますが、各国の主張として私が特に印象に残っておりますのは、国内で既に制度がある、あるいはこれから制度をつくらなきゃいけないときに、その制度の内容がTPP協定の規定に合致するのかどうかということについてまだ十分確認が取れていない、あるいは自信がないというので凍結をしたいと、こういったような要望がかなり多かったような印象を持っております。
 いずれにいたしましても、TPP11における凍結項目は、TPP12のハイスタンダードな水準を維持しつつ、十一か国全て合意に参加できるバランスの取れた協定を実現するために、各国の様々な調整を経て合意なされたというふうに考えておるところでございます。


○井上哲士君 私は、やっぱりこれ経過を見れば、それぞれの国がアメリカから迫られて嫌々自由化や規制撤廃を約束したけれども、それは本当はやっぱり外したいということがこういう項目に現れてきたんだと思うんですね。
 じゃ、日本はどうなのかということでありますが、日本は凍結をした項目というのはあるんでしょうか。


○政府参考人(澁谷和久君) 我が国としては、凍結の要望、主張はしておりません。


○井上哲士君 先ほど申し上げましたように、日本の国内でも、TPP12の審議の際にも、そして今も様々な声が上がっております。農産物の関税のみならず、食の安全、ISDSなど、国民の暮らしに関わる様々な懸念が国会審議でも国民の間からでも議論をされておりました。にもかかわらず何も日本が凍結を主張しなかったのは、外務大臣、なぜでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 第二次世界大戦後、冷戦が続く中で、日本は、アメリカ、ヨーロッパを中心とした西側諸国は、ブレトンウッズ体制、IMF、世銀、WTOといったリベラルな国際秩序を中心とした国際経済体制をつくり上げました。その中で、共産主義体制が崩壊をし、冷戦が終わったわけでございます。戦後の国際経済の繁栄の礎となり、共産主義体制の言わば欠点を浮き彫りにした、その一つがこの自由貿易体制にあったんだろうというふうに考えるわけでございます。
 そういう中で、世界で保護主義への懸念が高まる中、このアジア太平洋地域に自由で公正なルールに基づく経済圏をつくり上げるという意思を世界に示すことは、自由貿易を推進する観点から、また市場主義経済を発展させるという観点からも画期的な意味がございます。
 TPP11協定におきましては、元々のTPP12協定の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、米国不在であっても協定の内容自体は維持した上で、ごく一部のルール分野の凍結のみを行うことで合意をいたしました。
 我が国といたしましては、今回凍結されることとなった二十二の項目全てを含め、TPP12協定全体について、幅広い分野において二十一世紀型の自由で公正なルールを作り出すものであり、今後の経済連携協定のスタンダードになるものというふうに考えております。このような我が国の考え方に基づきまして、また、TPP11協定発効後必要となった場合の見直し規定が設けられたことから、我が国から凍結提案を行わなかったということでございます。


○井上哲士君 自由で高い水準の協定をずっと目指してきた、繰り返し様々答弁がされてきました。
 ただ、それは、先ほどもカーク米通商代表の話で触れたように、元々アメリカがよく使っていたスローガンなわけですね。そのアメリカの国内が世論が変化をして、TPPから離脱をして、他のTPP参加国が凍結を要求したことによって二十二項目が凍結をされた。ですから、経過から見れば、日本政府だけが国民の様々な懸念を顧みないという対応をしているということと言われても仕方がない経過に私はなっていると思います。
 例えば、多くの懸念がある牛肉等の農産物でありますけれども、そもそもTPP12では食料安全保障を顧みないような約束をした分野と言わざるを得ません。関連法の質疑でも行われると思うんですが、日本がアメリカの参加が前提で譲許した輸入農産物の税率や特恵枠の約束内容については、TPP11でも変えていないんですね。そうしますと、オーストラリアとかニュージーランドなど他の農産物の輸出大国が、アメリカが占めたであろうこの輸入部分、この枠を取ることになると、そういう可能性が高いと。そうしますと、アメリカは日本市場に対して競争上の不利を挽回するためにそれ以上のものを日本に求めてくると、こういうことになるのは必至だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 我が国は、アジア太平洋におけるハイスタンダードな貿易投資の枠組みの早期確立を図る観点から、米国離脱宣言後のTPP11の議論を主導してまいりました。
 TPP11協定におきましては、元々のTPP12協定の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、譲許表を変更しないことを含めて、米国不在であっても協定の内容自体は維持した上で、ごく一部のルール分野の適用の停止のみを行うことで合意をしたわけでございます。
 米国との関係では、日本といたしまして、TPPが日米両国にとり最善と考えておりまして、農業分野につきましても、米国に対して、TPP協定での農業分野における譲歩が我が国としての最大限のものであるということを伝えてきております。
 今後とも、このような我が国の立場を様々な機会を通じて改めて伝えてまいりたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。


○井上哲士君 私は、食料安全保障をないがしろにするような中身、様々ありながら、ハイスタンダードといって胸を張られる、いかがなものかと思うんですね。
 アメリカからこのTPP11以上のことを二国間で要求される、日本の農林水産業や食料が打撃を受けることになるんじゃないかと、こういう様々な不安の声があるのは、現実にこれまで二国間協議で様々譲歩してきたそういう歴史があるわけであります。
 トランプ政権は今、国内世論を背景に、雇用にフォーカスをしてTPP離脱を実行し、一方で、アメリカ第一主義を掲げて、世界での米国グローバル企業の利益追求は全く変えておりません。貿易赤字をてこにして外国への一方的制裁措置によって譲歩を引き出すとともに、二国間ベースでよりアメリカに有利な協定を追求することでアメリカの国民、労働者、中間選挙を前にしてアピールすると、こういうことですよね。
 鉄鋼、アルミ、自動車について、安全保障を理由にしたアメリカの一方的な措置の対象に日本がされていることについて、先日の本会議でも質問いたしました。現時点で除外される確約は得られたのかということについて明確な答弁はありませんでしたけれども、そういう確約は現時点で得られているんでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 今般の米国政府による安全保障を理由とした鉄鋼、アルミニウムに関する広範な貿易制限措置は世界市場を混乱させ、WTOルールに基づく多角的貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾と考えております。日本からの鉄鋼やアルミの輸入が米国の安全保障に悪影響を与えることはなく、むしろ高品質の日本製品は米国の産業や雇用にも多大に貢献しています。
 いずれにいたしましても、我が国としては除外を獲得すべく、引き続き米国に粘り強く働きかけてまいりたいと考えております。


○井上哲士君 引き続き働きかける、めどはいまだにないということだろうと思います。その間にもEUやカナダなどはWTOへの提訴を相次いでおるわけですね。
 防衛大臣にも来ていただきましたけれども、そもそも安倍政権は日米同盟の強化といって日米ガイドラインを改定し、閣議決定一つで憲法解釈も変えて、安保法制、集団的自衛権を可能といたしました。日米の軍事一体化も進めて、相互運用性の向上を図るなどとして米国製装備品を爆買いをしているわけですね。駐留経費の負担、再編経費の負担はもちろん、沖縄の基地負担軽減を口実に、米領グアムの基地整備にも日本の血税から巨額の資金支援までやっております。
 それが突如、安全保障を理由にした一方的な措置の対象とされたと。事実は重いですし、国民も驚いているわけですね。総理も、施政方針演説で繰り返し、個人的信頼関係の下、日米関係はかつてないほど強固だと述べてきたにもかかわらず、この安全保障を理由にした一方的措置の対象にされているということに対して、防衛大臣としてはいかに国民に説明されるんでしょうか。


○国務大臣(小野寺五典君) 我が国からの鉄鋼及びアルミが米国の安全保障に悪影響を与えることはなく、このような決定は遺憾だと思っております。一方で、我が国及び地域の平和と安全を確保するためには日米同盟が不可欠であり、より一層強化することが必要であることには変わりはありません。
 また、先般、これは米国時間五月二十九日でありますが、日米の防衛大臣会談においても北朝鮮問題への対応方針が日米で一致していることを改めて確認をし、地域情勢を踏まえ、地域の平和と安定のため、日米が連携して同盟の抑止力、対処力の強化に取り組むことで一致をしたところであります。
 引き続き、マティス長官との間で日米同盟の強化に取り組んでまいりたいと思います。


○井上哲士君 私たちは、米国ファーストを掲げる政権に日米同盟第一だと対応すれば、際限のない従属の道を歩むことになると警告をしてまいりました。まさに米国ファーストにかなうことを日本やったら歓迎をするけれども、より米国ファーストを貫徹するためには容赦なく制裁まで掛けてくると、こういう日米の在り方がいいのかということが今問われていると思うんですね。
 これまでも、様々、日米間の経済では譲歩の歴史でありました。日米経済対話において日米交渉が進展しないことにアメリカが不満を漏らすと、今度はFFRが立ち上がったわけですね。向こうの代表はライトハイザー米通商代表でありますが、この米通商代表、USTRが二〇一八年外国貿易障壁報告を出しております。(※井上質問18年5月6日外防委(TPP、日米通商関係)配付資料.pdf)お手元に、それをまとめたみずほ総合研究所の資料を配付をしておりますが、実に、この表では三十五項目にまとめているわけで、その中でも評価されているのは安倍政権による米国製兵器の調達増でありますが、他に障壁とされている事柄は、まさに国民の命や食の安全に関わることが並んでおります。
 先日の本会議では、議論の対象は米国と調整するということでありましたが、こういう項目が協議対象になるということも排除されないということでよろしいでしょうか。


○政府参考人(澁谷和久君) 先日、茂木大臣が御答弁したとおりでございまして、具体的なFFRの議論の対象は今後日米で調整していくということでございますので、先生の御質問にお答えするとすると、先生御指摘のあったような項目を議論の対象にするという合意もしておりませんし、対象にしないという合意もしていないということでございます。


○井上哲士君 対象にしない合意もしていないというお話でありました。これはまさにライトハイザー氏が代表を務めるUSTRが出しているものなんですね。既に日米経済対話ではこの報告書にある自動車の分野について議論をされておりますし、これポテトチップス用のバレイショの項目もありますけど、昨年の秋には、アイダホ産のポテトチップス用バレイショに対する輸入停止措置は解除をされた。それでもまだ足りないということですね。これ求めているわけですね。
 さらに、牛肉の輸入月齢の制限の撤廃など、食品の安全基準に関する項目がずらりと並べております。既に、TPP交渉の入場料として、事前交渉において二十か月齢から三十か月齢まで輸入、牛肉の輸入制限が緩められたわけでありますけれども、アメリカの農業団体も強く求めている。一方で、自動車への様々な制裁。
 こういう食品の安全基準とか農業というのがディールの対象にされるんじゃないか、多くの国民が懸念と不安を持っておりますけれども、改めて、いかがでしょうか。こういうことは議論されないということを明確にしていただきたいと思いますが。


○政府参考人(澁谷和久君) 茂木大臣が答弁したとおりでございまして、議論の対象は今後日米で調整していくということでございます。


○井上哲士君 このUSTRの報告書はずっと出されてきました。それが結局、次々と譲歩をされてきた歴史があるわけですね。アメリカの自動車の安全基準、米国産米の様々な流通の緩和、農薬の使用の緩和、最近では、アフラックのがん保険が一気に郵便局で使われるということにもなりました。
 こういうことがまた行われるんじゃないか、そして、TPP11が防波堤、防波堤と言いますけれども、アメリカが日本に一層の譲歩を求めてくる、その出発点になるんじゃないかという多くの懸念があるわけですね。そういう国民の懸念についてどうお考えでしょうか。


○委員長(三宅伸吾君) 時間が参りましたので、答弁は簡潔にお願いします。


○政府参考人(山野内勘二君) 御指摘の外国貿易障壁報告書は、一九七四年の通商法に基づいて、USTRが毎年議会及び大統領に対して提出することになっているものでございます。
 これについては、適時適切な場を通じて米側の主張に対しては常に反論をしてきているということを御指摘させていただきたいと思います。


○委員長(三宅伸吾君) 井上君、質疑をおまとめください。


○井上哲士君 実際には譲歩が続けられてきたというのが歴史であります。そのことを強く指摘しまして、質問を終わります。

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