国会質問

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外交防衛委員会(自衛官募集問題と安倍総理の改憲発言)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 自衛隊員の募集と総理の改憲発言に関して、防衛大臣にお聞きいたします。
 大臣の所信で、自衛隊員の人材確保として、地方公共団体との連携を含む募集施策の推進が盛り込まれました。所信としてお聞きしたのは私初めてなんですが、なぜ今回こういうことを盛り込んだのか、また、その土台となる今の自衛隊員募集の現状についてまずお述べください。

○国務大臣(岩屋毅君) 三月七日の本委員会におきまして、今先生御指摘いただいたような中身の所信を申し上げたところでございます。
 隊員募集の現状について申し上げますと、自衛官の採用対象者人口の減少、高学歴化及び労働市場が今売手市場であることなども手伝って、採用環境は厳しさを増してきております。したがって、地域の実情に応じた効果的な募集活動を行う必要があると、それが喫緊の課題であると認識をしているところでございます。
 また、少子高齢化等に伴う厳しい採用環境の中でも優秀な人材を将来にわたって安定的に確保するために、採用層の拡大、また採用広報の充実といった取組に加えまして、隊員募集はやはり地域社会と深いつながりを有する地方自治体と協力しつつ行うことが重要であると思っておりますので、これまで以上に積極的に働きかける必要があるということから、地方公共団体との連携を含む募集施策の推進という所信にさせていただいたところでございます。

○井上哲士君 自衛隊員の採用は二〇一四年から四年連続で計画割れとお聞きしておりますが、今言われたような人口減少とか少子化などは、これ全産業に共通をするわけですね。
 やはり自衛隊にとって大きな問題は、安保法制の成立だと思います。海外の戦場に送られることがあるという現実に、若者や父母の中にも、勧誘する側にもいろんなちゅうちょが生まれている。
 いろいろマスコミも報道しました。例えば毎日新聞では、自衛官募集相談員の栃木県の足利市議の話が出ておりました。勧誘の際、保護者から本当に安全なのかと聞かれることは間違いなく増えた、以前なら、自衛隊に入っても戦争することはない、憲法九条があるからと勧誘できたが、それが通用しなくなったと思う、こう語っております。
 こういうことが応募減の一つの原因になっているのに、総理は逆に、この自衛官募集の問題を改憲の理由にしようとしている。衆議院の本会議で総理は、防衛大臣からの要請にもかかわらず、全体の六割以上の自治体から自衛隊員募集に必要な所要の協力が得られていませんと述べて、この状況に終止符を打つため、自衛隊を憲法に明記することが必要だと述べられました。
 総理が専ら自治体の非協力としているのは、紙媒体での自衛隊員適齢者名簿の提供を求めたことに対して六割の市町村が閲覧にとどめているということを指しておられますが、そこで聞きますけれども、憲法問題を理由に紙媒体での名簿提出を行っていないと、こういう自治体があるんでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) お答えする前に、先ほど、平安法の影響もあるのではないかという先生の御指摘でしたけれども、一方で、さきの日本経済新聞の調査などによりましても、いわゆる国家組織の中で最も信頼されているのは自衛隊というような結果も出ておりますので、そういう自衛隊に対する見方が厳しくなっているということではないのではないかというふうに考えております。
 今お尋ねの自衛官の募集についてですけれども、自衛隊法第九十七条及び自衛隊法施行令第百二十条の規定に基づきまして、防衛大臣は、全ての都道府県知事及び市町村長に対して公文書によって自衛官等の募集に必要な資料の提出を求めさせていただいております。これに対して、全体の六割の自治体は、法令に基づく防衛大臣からの具体的な求めに、つまり資料を提出していただくという求めに応じていただいていないことは事実でございます。
 なお、この求めに応じていただいていないことについて理由は示されておらず、私どももそれを掌握しているわけではございません。

○井上哲士君 ですから、憲法問題を理由として閲覧にとどめている自治体というのは挙げられないんですね。
 ところが、総理は、衆議院の予算委員会で、自衛隊は違憲でないと言い切る学者が二割に満たない中で、ある種の空気が醸成されてきた、地方自治体でトラブルを避けるために対応を取っていることも十分に推測されると、こういうふうに述べられました。
 地方自治体が紙媒体での名簿を提出していないことが、その理由は、憲法が理由だというのがなぜ十分に推測されるんですか、その根拠は何なんですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 総理の御発言は、あくまでもその問いに答える形で、党を代表する自民党総裁というお立場もございますので、憲法について御意見を述べられたんだと思いますけれども、防衛大臣の立場で、憲法改正について、あるいは関連する事柄についてコメントをするのは適切ではないと思いますので、そこは控えさせていただきたいというふうに思います。

○井上哲士君 自衛隊の最高指揮官は総理なんですよ。防衛大臣が憲法に対して言うのが適切でないというのなら、総理があんな発言することはもっと問題じゃないですか。そして、そういう総理が、推測であるとか空気を変えるとか、そういうことで改憲を口にするということは許されないことだと思います。
 市町村が紙媒体での提出ではなくて閲覧を認めるにとどめていることの理由は、個人情報保護が理由だというのが事実ですよね。二月十七日の東京新聞が主な自治体の声を報道しておりますが、例えば札幌市、個人情報保護は憲法改正とは別の議論だ、仮に改正されても直ちに名簿を提出することは難しい、大津市、名簿の提出に条例で定める相当の理由があるかどうかが問題だ、自衛隊が明記されても対応は変わらないなどと述べております。
 今、私、地元の京都市では、今年から自衛隊適齢者名簿をラベルに印刷して京都市が提供するということを決めて大きな問題になっておりますけど、多くの市民は、私たちの個人情報を勝手に知らせないでくれと、そして、安保法制の下で海外の戦場に行く自衛隊への提供は不安だと、こういう声を上げているわけですよ。ですから、私は、総理答弁は、まるで憲法問題が閲覧にとどめている理由であるかのように事実をねじ曲げて、改憲の口実にするものだというふうに思います。
 それで、さらに自治体の協力の状況について聞きますが、地方自治体は、法定受託事務として自衛隊員の募集の一部を行います。先ほど大臣述べられた依頼文書、その中に、別紙として、各市町村における募集事務に係る計画の策定及び実施ということが付けられております。【配付資料190312.pdf】今お手元にそれぞれ配付をしておりますが、この中に、例えば募集案内資料箱の設置とかポスターの掲示、採用試験会場の提供など、十七項目が並べられております。この十七項目については、ほとんどの自治体が何らかの協力をしているんじゃないですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 自治体との協力は極めて隊員募集に際しては重要でございまして、私ども、これまで以上に積極的に働きかけていきたいと思っておりますが、確かに先生御指摘のように、様々な項目の中で御協力をいただいていることも事実でございまして、それについては感謝を申し上げたいというふうに思っております。
 しかしながら、先ほども申し上げましたように、六割の自治体が資料を提出していただくという形の協力をいただいていないことは事実でございまして、したがいまして、私ども、閲覧をさせていただくという形で数十万人分の名簿を自衛隊員が書き写しているという状況でございますので、是非、しかも四情報に限った情報を今提供をお願いしております。お名前、住所、そして性別、年齢でございますけれども、是非御協力をいただけるようにこれからも丁寧にお願いし、努力をしてまいりたいというふうに思っております。

○井上哲士君 都道府県知事だけじゃなくて、市町村長にも文書を出すようになったのは去年五月からなんですね。それまでは、本文にこの名簿の紙媒体等での提出という言葉はありませんでした。別紙に、先ほど付けたものの十七個の項目の、そのうちの十二番目の一つにあるだけなんですよね。
 にもかかわらず、この十七項目のうちの一つだけを取り出して、それで六割が非協力というのは、これやっぱり事実と違うんじゃないですか。

○国務大臣(岩屋毅君) その総理の御発言の真意まで私が全部承知しているわけではありませんけれども、六割とおっしゃったのは、最も肝腎なと申しますか、私どもにしますと、対象者宛てにそのDMを発送させていただいて自衛隊の活動をお知らせするというのが非常に重要な自衛官募集のための活動だと思っておりますので、その部分についてまだ御協力がいただけていないということをおっしゃったんだろうというふうに思っております。

○井上哲士君 いや、総理の本会議答弁はそんな限定していないんですよ。六割がとにかく協力をされていないということを言っているわけですね。
 しかも、個人情報保護の観点から紙媒体で提供していない自治体も住民基本台帳の閲覧を認めているわけですね。防衛省は、これはもう個人でも可能だと言いますけれども、これは公益性とか訴訟の提起など特別な事情が必要だし、これ営利目的では閲覧できないんですね。
 総務省に聞きましたけれども、警察とか消防を始め、自衛隊以外に募集を目的に閲覧を行っている機関はないんですよ。やっぱり、それは特別な協力をやっぱり私はやっていると思うんですね。それを全部ひっくるめてこう言っているということは、誠に事実をねじ曲げていると思います。
 しかも、紙媒体での資料提供を求めるのは、先ほど述べられた自衛隊法施行令百二十条に基づくものでありますが、これについてこれまで歴代大臣がどう答弁してきたかと。石破元防衛庁長官は、二〇〇三年四月二十三日、この情報を提供するかしないか、あくまで私どもは依頼をいたしておるわけでございますし、市町村は法定受託事務としてこれを行っておるわけでございます。私どもが依頼をしても、こたえる義務というのは必ずしもございません。私どもは依頼をしているわけで、そのことについて答えられないということであれば仕方がないと、こういうふうに言われました。
 中谷元防衛大臣、二〇一五年三月二十六日、実施し得る可能な範囲での協力をお願いしている。これは実は私への答弁でありました。
 いずれも、あくまで依頼であって、市町村に答える義務はない、可能な範囲での協力のお願いだとはっきり述べておりますが、この答弁は変わりないですね。

○国務大臣(岩屋毅君) 繰り返しになりますが、自衛隊法の第九十七条において、都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官等の募集に関する事務の一部を行うと規定をされております。また、自衛隊法施行令第百二十条によって、防衛大臣は、自衛官の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができると定められておりますので、これらの法令上、自衛官等の募集は法定受託事務として自治体の行う事務であることは間違いがないというふうに思っております。
 当時の石破大臣、中谷大臣と、石破大臣は平成十五年、中谷大臣は平成二十七年の答弁だと思いますけれども、そのときの状況を私ども調べてみましたが、石破大臣のときは、個人情報保護法との関係で本件が議論されまして、防衛省として取得する情報を四情報にそのとき限定する旨の指示を文書で出したという状況であったこと、また、中谷大臣のときは、高等工科学校の募集について、本来実施すべきでない中学生本人に対して直接募集を行ったというような事案が発生をしていた頃でございまして、募集関係部局への教育の徹底などといった取組を行ったところですけれども、このような状況の中において、石破大臣、中谷大臣も努めて丁寧な答弁をされたのではないかというふうに認識をしているところでございます。

○井上哲士君 衆議院の予算委員会ではお二人について、ああいう人柄もあってというふうに言われましたけど、これ人柄の問題じゃないんですよ。そんなことを言ったら、強く求めている総理の人柄に問題があるかのように聞こえますよ。
 確認しますけれども、いろんなことを今言われました。しかし、当時、まさに丁寧に答える中で、明確に応える義務はないと市町村に石破大臣は言われているんです。これは変わりありませんね。

○国務大臣(岩屋毅君) 先ほども申し上げましたように、これは法令上自衛官等の募集は法定受託事務として自治体の行う事務でございますというふうに申し上げましたけれども、ぎりぎり義務かどうかと言われれば、当然に遂行していただけるものだというふうに私どもは考えた上で、その上で丁寧にお願いをさせていただいているということでございます。

○井上哲士君 石破大臣もこれは法定受託事務だと、そう言った上で、私どもが依頼しても応える義務というのは必ずしもございませんと言われているわけで、いろいろ言われましたけれども、この答弁を否定をすることはできませんでした。
 防衛大臣は、二月十九日の記者会見で、防衛省が望む形で名簿を提出してもらうための法改正の必要性を問われて、当面その考えを持っていないというふうに言われました。ところが、総理は憲法改正が必要だと言っているんですよ。防衛大臣は法改正も必要でないと言っているのに、総理大臣は憲法改正が必要だと言っていると、これどうなっているんですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 先ほども申し上げましたが、閣僚の立場で、とりわけこの場合は憲法改正の中でも九条の改正ということになろうかと思いますが、防衛大臣の立場でそれに関してコメントすることは適切でないというふうに考えておりますので、控えさせていただきたいと思います。

○井上哲士君 だったら、先ほど言いましたけれども、自衛隊の最高指揮監督権を持つ内閣総理大臣が九条改正を本会議で云々したと、これ大問題じゃないですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 総理もたしか答弁のたびに、内閣総理大臣としてコメントをするのは本来は適切ではないけれども、問いに答える形で自民党総裁としての立場でお答えになっているものというふうに承知をしております。

○井上哲士君 これ、自民党の幹事長に対する答弁なんですね。与党と政府、総理で明らかに示し合わせてやっているわけじゃないですか。それを私、そんな何か本会議で総理がやったことを、そんなことを言い訳することは許されないと思いますよ。
 個人情報保護法が制定されたときよりも、更に今国民のこの問題での要望は高まっておりまして、地方自治体も配慮をしております。
 例えば、災害対策基本法でお年寄りなどの避難行動要支援者名簿の作成が市町村長に義務付けられました。この個人情報を消防や民生委員などに平常時から提供するためには、本人から一々同意書を取ることが必要なんですね。それぐらい今やっているんですよ。そういう中で、地方自治体が個人情報保護を求める住民の声を尊重して、地方自治の立場から閲覧にとどめていると。
 これをけしからぬと言って憲法改正まで口にする、私は、こうなりますと、もう戦前の日本が国民の人権とか地方自治の上に軍隊が君臨したように、とにかく個人情報を理由に言うのはけしからぬ、名簿を出せ、地方自治や人権よりも防衛大臣の要請が上だ、こんな社会にしてしまおうと、そういうことになるんじゃないですか。いかがですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 私ども、その資料を提供いただく場合にも、当然のことではありますけれども、個人情報保護には万全の留意をさせていただいておりまして、特に、いただいた資料については、いわゆるダイレクトメールをお届けした後は廃棄をさせていただいているところでございます。

○井上哲士君 そんなのは当然のことでありまして、そもそも自分の情報を勝手に出してほしくないと、こういう声が大きく上がっているわけでありまして、自治体への強要をやめること、そして総理の改憲発言は撤回をしていただきたいと、そのことを求めまして、質問を終わります。

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