国会質問議事録

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ODA特別委員会(JICA環境社会配慮指針見直し/ODAによる海外での石炭火力発電推進問題)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ODA事業を進めるJICAの環境社会配慮ガイドラインについての改定について質問いたします。
 現行のガイドラインは、社会経済の開発を支援するための事業であっても、大気や水、土壌、生態系など自然への望ましくない影響や、非自発的な住民移転や先住民族に対する権利侵害といった社会への影響を及ぼす可能性があるという認識の下に、環境社会配慮に必要なJICAの責務と手続、相手国等に対する要件を示した指針として、二〇一〇年四月に、それ以前のガイドラインに代えて施行されております。現在、施行十年以内に行うとしたレビューを経て、一月に最終報告書が出されて、ガイドライン改定に向けて、レビュー結果に基づく包括的な検討作業が行われていると承知をしております。
 この改定は、やはりこれまでのJICAの事業で起きた問題の経験や、そして地球環境、人権に関する今日の世界の認識の大きな発展、これを生かすべきだと考えますけれども、その点どう考えるか、この包括的な検討の論点と併せて御答弁いただきたいと思います。

○独立行政法人 国際協力機構(JICA)理事(本清耕造君) お答えいたします。
 日本政府は、昨年六月、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略を閣議決定されました。また、ビジネスと人権に関する国連指導原則について、国別行動計画を策定中と承知しております。
 JICAといたしましては、そうした国際潮流の重要性を認識し、日本政府の方針を踏まえながら、環境社会配慮ガイドラインの見直しを行っていく所存でございます。
 また、二〇一八年二月から、現行ガイドラインの運用状況やJICAを取り巻く外部環境変化などのレビュー調査を実施しまして、パブリックコメントを募集しまして、理念、気候変動、対象事業、情報公開、人権、ステークホルダー協議など、八つの論点に整理いたしました。
 現在、先生御指摘の点も含めまして、環境社会配慮助言委員会から助言を得ながら改定の論点について包括的な検討を行っており、引き続き丁寧に検討プロセスを進めていく考えでございます。

○井上哲士君 NGOの皆さんからは、これまでの事業の中で生じた事柄を踏まえて様々な見直し意見が出されております。その一つが、現地住民などのステークホルダーから指摘があった場合の対応です。
 現行のガイドラインは、住民などからの指摘があった場合は回答すると定めております。ところが、例えばミャンマーのティラワ経済特別区開発事業では、影響を受ける住民グループからJICAに対して環境社会配慮に関わる懸念や要請に関する書簡が何度も出されて、二〇一〇年四月には面談が要請されました。にもかかわらず、JICAからの返答がないままにその年の四月二十三日に一部の出資が決定をされたということであります。
 私、この委員会でも外交防衛委員会でも、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業も質問してきましたけども、ここでも同様なことが起きております。
 住民から事業の問題点の指摘や反対の意思、融資の拒否を求める書簡が度々出されたにもかかわらず、その都度の対応がない。四回目の書簡を提出後にようやくJICA現地事務所が面談に応じましたけども、その後、住民から提出された書簡には返答していないと聞いております。
 ステークホルダーとの対話はこのJICAも重視をしているはずで、異議申立て手続においては事前の対話が異議申立ての要件とされております。しかし、今述べたように、そもそもJICAが住民の指摘に適時に返答しなければ、これは対話にならないんですね。対話がないということになりますと、異議申立て制度を使えるかどうか。使えないわけですよ、対話がなければ。そうなりますと、この制度を使えるかどうかはもうJICAの対応次第ということになりかねないわけです。
 ですから、私は、改定に当たって、JICA側からの迅速な回答、対応と、これをきちっと要件として盛り込むべきだと思いますけれども、この問題は包括的な検討で議論をされるんでしょうか。

○参考人(本清耕造君) お答えいたします。
 JICAの環境社会配慮ガイドラインにつきましては、環境社会配慮の基本方針として、JICAは、ステークホルダーの意味ある参加を確保し、ステークホルダーからの指摘があった場合は回答するというふうに定めているのは先生御承知のとおりでございます。JICAとしては、この趣旨にのっとりまして、ステークホルダーの指摘に迅速に回答すべく努めているところでございます。
 一方、異議申立て手続要綱におきましては、異議申立てが行われた場合、異議申立て審査役は原則として五営業日以内に受理の通知を行うことと定めており、それに基づいた対応が行われております。また、同要綱では、申立人に対し異議申立てを行う前にJICAの事業担当部署との対話を行うことを求めておりまして、これに関連して、「JICAの広報部署は、事業担当部署との対話が迅速かつ適切に行われるよう外部から問合せがあった場合には、迅速に当該事業担当部署を紹介しなければならない。」というふうに定めております。
 引き続き迅速かつ適切な対応に求めてまいりたいと思いますが、これまでの異議申立ての手続上については、これまできちんとした対応をしてきたというふうに我々としては考えておりますが、御指摘のようなことがあるということでありましたら、今後、関連する質問の扱いにつきましては対応策について検討させていただきたいと思いますし、ガイドラインの見直しにおいては、御指摘の点はまさにNGOから指摘されている点でございますので、丁寧に検討してまいりたいと、このように思っております。

○井上哲士君 しっかり是非盛り込んでいただきたいと思います。
 それから、やはり、改定で、事業の対象となる現地の人権状況のJICAによる把握の在り方も見直しが求められております。
 現行ガイドラインは、協力事業の情報公開を行い人権の状況を把握するとしておりますけども、実際には、NGOからは、様々な表現の自由など基本的人権が脅かされている場合でも、JICAが実施機関からの報告を重視をすると。そうなりますと、この基本的人権等の権利が制限されていると認識していないというケースが散見されるという指摘がされております。
 先ほど挙げたインドラマユの石炭火力発電事業についても、一昨年当委員会で質問しましたけれども、この反対派住民、営業が続けられなくなると、こういうリーダーに対して、軍や警察等の様々な干渉が行われた、逮捕、勾留も行われた、大量の警察、軍を動員して反対住民を押さえ付けて建設作業が進められた、いろんなことが起きました。
 こういう公権力による弾圧、人権侵害が起きる場合に、相手国の警察とかに照会をしても、人権侵害を認めるとは非常に考えにくいんですね。やっぱり、こういう回答をもって把握できたとは言えないわけで、こういう人権侵害の把握の方法については、相手国の当局や実施機関だけじゃなくて、影響を受ける住民や専門家、人権NGOなどからしっかりヒアリングをすると、こういうことも盛り込んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○参考人(本清耕造君) 現行のJICA環境社会配慮ガイドラインにおきましては、事業の影響を受ける個人や団体及び現地で活動しているNGO、協力事業に知見若しくは意見を有する個人や団体をステークホルダーと位置付けております。意味ある参加を確保し、ステークホルダーの意見を意思決定に十分反映するとしているところでございます。
 現行ガイドラインの助言委員会が行っている包括的検討において、この部分の重要性が指摘されておるところでございます。いただいた助言等を踏まえまして、丁寧に検討していきたいと思っております。

○井上哲士君 現に起きている事態をしっかり見て対応していただきたいと思うんですが。
 もう一点、今指摘したインドラマユの事業に関する反対派現地住民への不当逮捕を始めとする公権力による弾圧、人権侵害は、JICAの調査、設計などのエンジニアリング・サービス、ES借款による貸付けに係る事業の中で発生をしております。
 JICAは、この借款に係るインドネシア政府からの正式要請が依然なされていないということを理由に、正式要請後の環境レビューにおいて詳細を確認するとして、ES借款は引き続き続けているわけですね。
 私は、以前の質疑においても、こういうもう貸付けは停止するとともに、このES借款の段階であっても、JICAが現地の人権状況をしっかり把握をして、ガイドラインの要件を確認するということを見直すべきだと申し上げましたけれども、この点はどのような対応になるでしょうか。

○参考人(本清耕造君) この点については、先般も先生から御質問をいただきまして、その際もお答えいたしましたけれども、現行ガイドライン上は、本体借款の環境レビューにおいて、環境社会配慮上の要件を満たすことを確認することを可としておりますので、これは、ES借款の供与時には本体借款の供与は約束されていないということになる前提で、本体借款の環境レビューと併せて行う方が効率的と考えられているためでございます。
 また、ES借款供与時には必要な環境社会配慮関連文書が十分ではなく、ES借款の中で、又は並行して必要な環境社会配慮調査を実施した上で、本体借款供与前に環境レビューを行わざるを得ないという場合が多いというのが実態でございます。
 現行ガイドラインの助言委員会が行っている包括的検討におきまして、まさにこの点に関する検討もなされていることでございますので、いただいた助言を踏まえて丁寧に検討していく考えでございます。

○井上哲士君 現行ガイドラインでやっぱり想定していないことが起きているわけですね、インドラマユで。是非その点を対応できるように盛り込んでいただきたいと思います。
 次に、海外での石炭火力発電事業の推進そのものについてお聞きをいたします。
 この間、パリ協定批准後も世界で石炭火力廃止求める声が高まっております。その中で、昨年六月にJICAがバングラデシュの発電所事業への新規融資を決定したことなど、日本のこの石炭火力推進に対して世界の厳しい批判が浴びせられております。
 小泉環境大臣は、二月の二十五日に、この石炭火力発電輸出を支援する要件の見直しについて、議論を始めると関係省庁と合意したと発表しておりますけれども、どういう観点からどういう見直しをするのか、その日程はどういうふうになるでしょうか。

○環境省 大臣官房審議官(瀬川恵子君) お答え申し上げます。
 石炭火力輸出支援の四要件につきましては、関係省庁間で議論を行い、結果、パリ協定の目標達成に向け、六月に予定される次期インフラシステム輸出戦略骨子策定において、この四要件の見直しについて関係省庁間で議論し、結論を得ることとしております。
 この関係省庁間での議論を前向きなものとするため、環境省といたしましても、パリ協定の目標を踏まえ、世界全体のカーボンニュートラルの達成に向け、環境省内に検討会を設置する予定でございます。検討会におきましては、ファクトを積み上げるとともに、有識者などからの提言を踏まえ、環境省としての四要件の考え方、これをまとめていく予定としております。

○井上哲士君 輸出前提の見直しで本当に今パリ協定などで言われたことが達成できるのかと。私は、やめるべきときが来ていると思うんですね。
 外務省は、二〇一八年に気候変動に関する有識者会合を設定し、その二月の提言では、二酸化炭素排出の多い石炭火力を進める政府方針を、国際社会の批判を受け、日本外交の隘路となり始めていると、こういう指摘をし、新しいエネルギー外交を提言をしております。
 国際的な民間研究機関であるクライメート・アナリティクスは、最近、パリ協定の気温上昇を一・五度に抑えるコミットメントを達成するためには、OECD諸国は石炭利用を二〇三〇年までに完全にやめなければならないと、全ての石炭火発はどんなに遅くとも二〇四〇年までに閉鎖しなければならないという提言をしております。
 インドラマユは二〇二六年に完成と言われているんですね。そうしましたら、もう二〇四〇年、十四年しか動かないと、こういうことになるんです。今からこういうものを造るのかと。途上国であっても排出削減が迫られる中で、日本の推進政策が足を引っ張ることになると思うんですね。
 私は、これはもう根本的な見直しをし、推進をやめるべきだと考えますけれども、外務大臣、最後、いかがでしょうか。

○外務大臣(茂木敏充君) 今後の支援の在り方については、先ほど環境省の方からもありましたように、エネ基の中の四条件、これから見直しの検討を行うと、その結果を踏まえて決めていくということになるわけでありますけれども、我が国は、パリ協定を踏まえて世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素などを含めてCO2削減に、排出削減に資する様々な選択肢を相手国に提案して、相手国の選択に応じてODA等の公的な支援を行っていく考えであります。

○委員長(山本順三君) 井上君、時間が来ておりますから、簡潔に。

○井上哲士君 時間ですので終わりますが、COP25で......

○委員長(山本順三君) 簡潔にお願いいたします。

○井上哲士君 グテーレス国連事務総長は、石炭中毒をやめなければ、気候変動対策の努力が全て水泡に化すと、こう言いました。重く受け止めるべきだと思います。
 終わります。

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