国会質問議事録

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外交防衛委員会(ミャンマー軍事クーデターへの対応)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 在外公館名称給与法改正案は必要な内容であり、賛成であります。
 この参照条文に誤りがありました。これで政府全体で二十四法案、条約で条文や参考資料に誤りがあったということになるわけです。前代未聞の異常事態でして、やっぱり政府全体での立法府への軽視があるのではないかと厳しく指摘をしておきたいと思います。
 その上で、ミャンマー問題についてお聞きいたします。
 二月一日の国軍によるクーデター以来、国民の平和的な抗議行動への弾圧、二十四日までに二百八十六人が亡くなったと報じられておりますし、二十人を超える子供たち、ついに七歳の女の子が亡くなるということも起きました。
 二十四日には出勤や外出を控える沈黙のストということも行われているようでありますが、日本共産党は、二月十六日に、ミャンマー国軍に断固抗議をし、スー・チー氏らの解放とNLD政権の原状復帰を求める、こういう委員長の、志位委員長の声明も発表いたしました。
 この平和的な抗議行動を武力で踏みにじる残虐な行為を強く糾弾する、ミャンマー国軍は弾圧を直ちに中止し、拘束した全ての人々を直ちに解放し、総選挙を経て民主的に成立した国民民主連盟政権への原状復帰を行うよう、改めて強く要求すると。その上で、日本政府には、ミャンマー国民の意思に応えて、軍政の正統性を認めないという立場を明確にして、国際社会の取組のために積極的に役割を果たすべきであるとその中で述べております。
 そこで、外務大臣にお聞きいたしますが、前回の質疑で、ミャンマーについて、民主的体制が失われている状況であり、民主的体制の早期回復を求めるのが基本的立場という答弁でありました。
 そこで、これは確認でありますけれども、国軍は国軍司令官を議長とする国家制度評議会を設置しておりますけれども、この国軍はミャンマーの正統な政権ではないと、こういうことで確認してよろしいですね。

○外務大臣(茂木敏充君) ミャンマーについては、二月一日、クーデターが発生いたしまして、そして現在に至りますまでの状況、平和的なデモに対して銃口が向けられ、多数の死傷者が出ている、また拘束者が出ている、大変深刻な状況であると、大変懸念をいたしております。
 そして、ミャンマー国民や国際社会が求める民主的な政治体制への早期回復、これが必要だというのが我が国の基本的な立場であります。

○井上哲士君 民主的体制の早期回復ということでありますが、もう一回改めて聞きますが、そうであるならば、今の国軍はそれに当てはまらないと、失われているということであれば。そういうことでもう一回確認してよろしいですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 民主的な体制への早期回復ですから、その前にミャンマー国民や国際社会が求めるという形容詞まで付けさせていただいて、十分御理解いただけるのではないかなと思います。

○井上哲士君 民主的体制の早期回復と言うならば、総選挙を経て民主的に成立したNLD政権の原状回復となるはずだと思うんですね。
 NLDのメンバーが主体の連邦議会代表委員会、CRPHが九つのポストの大臣代行を任命して、臨時政府の準備とも報じられております。一方、国軍は二十二日にこのCRPHを非合法団体に指定したと報じられているわけでありますけれども、総選挙の結果ということを見るのであればこのCRPHが正統な政権を引き継いでいるという認識なのかどうか、そしてこのCRPHとはどういう対応を今しているのか、お願いします。

○国務大臣(茂木敏充君) ミャンマーについての基本的な考え方は申し上げました。
 その上で、今、事態の鎮静化を図らなきゃならない、そして民間人に対する暴力即時停止、そしてアウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含め拘束された関係者の解放と、これを実際に進めるとなると、影響力を持っているのは国軍でありますから、国軍に対してこれは働きかけを行っているところであります。
 ミャンマー側とは様々な主体でやり取りを行いまして、また働きかけしてきておりますが、その具体的な内容については、相手方との関係もありますし、今完全に考えている目的が達成されたわけではありませんから、今後の対応に影響を与えることもありまして、これ以上のことは差し控えたいと思います。

○井上哲士君 日本はミャンマーの最大の経済関係国であるわけですから、日本の対応というのは非常に影響が大きいわけですね。
 一方、日本は過去、ミャンマーの国軍が民主化運動を弾圧している最中に軍事政権を承認して、ODAの供与などで軍政に支援の手を差し伸べたという歴史もありまして、この誤りを繰り返してはならないと思います。
 NLD政権ができたそれ以降の政府の経済協力の基本方針を見ますと、基本方針でこう書いているんですね。ミャンマーの民主化、国民和解、持続的発展に向けて急速に進む同国の幅広い分野における改革勢力を後押しするために支援を実施すると、こういうふうに書いております。
 経済協力の基本は、民主化、国民和解、持続的発展だと。その一つ目であるこの民主化が失われて軍政が台頭し、深刻な弾圧、人権侵害が続くという中で、この経済支援だけが続けるということではないと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 今、これまで日本がミャンマーに対して様々な支援を行ってきたと、民主化を進める、さらには民族の和解を進める、こういった目的を中心にしながら行ってきたわけでありますけれど、現段階において、二月の一日のクーデター後、ミャンマー国軍が主導する体制との間で新たに決定したODA案件はございません。今後についても、現時点で早急に判断すべき案件はないと考えております。

○井上哲士君 次の質問のお答えをいただいたんですけどね。
 じゃ、基本的立場をちょっと確認したいんですけど、今の日本の経済協力の基本方針読み上げましたけど、改革勢力を後押しするために支援を実施するとしているわけですね。逆に言えば、そういう改革勢力を後押しするのでないような、そういう支援は行わないと、こういう基本的立場だということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 改革勢力云々に入ります前に、人道上の必要性が高い案件であったりとか国民生活の向上に資する案件については緊急性が高いと、このように考えておりまして、先般も、ユニセフを通じて、ミャンマーを含みます東南アジア諸国向けのワクチンのコールドチェーン整備支援、そしてWFP、ICRCを通じたラカイン州の国内難民支援をそれぞれ実施することを決定をしたところであります。
 今後、対ミャンマーの経済協力どうしていくかと。今後の対応につきましては、ミャンマーにおける事態の鎮静化であったり民主的な体制の回復に向けてどのような対応が効果的か、総合的に検討していきたいと思っております。

○井上哲士君 繰り返しになりますが、そうやって検討するときの基本的姿勢として、現在の経済協力の基本方針にあるような、改革勢力を後押しするために支援を実施すると、これに反するようなことは行わないということを確認をしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) ミャンマーの民主的体制、政治体制と、この回復に向けて必要な協力は行っていきたいと思っております。

○井上哲士君 先ほどODAについてお答えがありました。円借款で見ますと、二〇一四年以来二〇一九年までおおむね一千億円前後で推移して、二〇一九年度は千六百八十八億円だったのが、今年度はその半分以下の七百二十七億円に落ち込んでいるということであります。
 二月一日以降、国軍との間で新たに決定した案件はないということでありますけれども、これは、新規案件を凍結したと、こういうふうに受け止めてよろしいでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 新規案件はありませんし、今後早急に判断すべき案件もないと、このように考えております。

○井上哲士君 これも、政府の開発協力大綱の中には開発協力の適正確保のための原則というのがありまして、開発途上国の民主化の定着、法の支配及び基本的人権の尊重を促進する観点から、当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払うと、こういうふうになっているわけですね。
 こういう立場で今後の案件も考えるということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) これ、ミャンマーに限らずなんですけど、我が国の経済協力、これは経済協力大綱を踏まえて実施をしてきておりまして、今後の対応につきましても、大綱を踏まえて、ミャンマーにおきましては、事態の鎮静化、民主的な体制の回復に向けてどのような対応が効果的か、総合的に判断していきたいと思っております。

○井上哲士君 民主的体制の回復が必要だと言われました。
 冒頭、今の国軍がそれに当たるかということもお聞きしたんですけど、新規案件を決定する際には、政府間の交換公文に署名をすることが必要なわけですよね。そうすると、相手が国軍で署名をするということは、これはあり得ないというふうに、ことでよろしいですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 民主的な体制、この回復に向けて取組を進めると、そういう方向でどうやっていくかにつきましては、今後の状況を見定めて考えていきたいと思っております。

○井上哲士君 欧米諸国などが制裁という形で態度を示しているわけですけど、日本は最大の経済関係国で、その影響力が大きいにもかかわらず、その辺の姿勢が明確でないという声がいろいろ今寄せられているわけですよね。
 最初にも申し上げましたけど、過去、ミャンマーの軍事政権が民主化運動を弾圧している最中に日本が承認し、様々な経済支援をしたと、こういうやっぱり歴史を見たときに、今本当に私は日本が態度を鮮明にすることが必要だと思うんですね。
 そのことを強く求めたいと思うんですが、RCEPの扱いをどうするのかと。これ、ミャンマーも署名国に入っているわけでありますが、このまま軍事政権相手であっても発効させてよいと、こういうお考えでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) まず、RCEPの前に、このサンクションと、制裁ですね、これも様々なレベルが当然あるわけでありまして、国連安保理決議に基づいて北朝鮮に科しているような大幅な、ほとんどの経済活動を停止すると、こういうものから比較的個人に限定したもの、あるわけであります。
 同時に、もう一つ、メッセージとか違う厳しい対応というのはあるわけでありまして、仮に日本からのODAが止まるというのは、一個人に、何というか、資産の凍結が行われるのよりメッセージとしては非常に大きいと私は思う部分もあるわけでありまして、そういった意味で、制裁とメッセージなり、こういったものというの、制裁をすればいいんだと、それが全てなんだと、この考え方は私は違うと思います、まず。そこのところをよく考えて、ミャンマーの民主化のために何をしていくことが一番効果的なのかと、回復のために、こういった観点から考える必要があるなと思っております。
 その上で、RCEPにも絡みますが、我が国は、世界的に保護主義が台頭する中で、自由で公正な経済圏を広げるべく、ハイスタンダードでバランスの取れた共通ルールを定めたTPP11、そして日EU・EPA、さらには日米貿易協定、日英EPA等々を締結して国際的な取組をリードしてまいりました。
 こうした方針、取組の一環で、RCEP協定、これは、ASEAN、そして日中韓、豪州、ニュージーランドと、十五か国が署名したEPAでありまして、地域の望ましい経済秩序につなげるべく、その早期発効と着実な実施に取り組む考えであります。
 ミャンマー情勢について、我が国としても重大な懸念を持っておりまして、ASEAN諸国を始め、他のRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応、検討していきたいと思っておりますが、私もいろんな経済連携協定結んできました。そして、各国での国内の批准プロセスというか、そういうのも注意深く見てきましたけれど、では、これから一か月、二か月でミャンマーでこのRCEP協定が承認されるかというと、それについては極めて悲観的です。

○井上哲士君 日本とミャンマーは日本・ASEAN経済連携協定に参加していますから、ミャンマーは特恵関税の適用などの優遇も受けているわけですね。この点も現状でいいということでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 日・ASEANの包括的経済連携協定についても、ミャンマーの情勢の今後の展開も踏まえながら、必要に応じ他のASEAN諸国とも連携しながら対応を検討していきたいと思いますが、実態問題からいいますと、かなり、貿易的な取引、これは、コロナの影響もありますし、今回のクーデター以降の状況もありますので、かなり実態としてはブレーキが掛かっていると、このように理解いたしております。

○井上哲士君 重ねて、日本政府が、ミャンマーの国民の意思に応えて軍政の正統性は認めないという立場を明確にして、国際社会の、取り組むために積極的に役割を果たしていただきたいと、以上求めまして、終わります。

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