○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
石破新政権の下での初めてのこの拉致特の質疑ですので、これまでもただしてきました拉致問題解決のための政府の基本的な姿勢について質問をいたします。
首相の十月の所信表明演説では、日朝平壌宣言の原点に立ち返り、全ての拉致被害者の一日も早い帰国と北朝鮮との諸問題の解決へ全力を挙げて取り組むとされました。先日の両大臣の報告も、いずれも日朝平壌宣言に触れて、外務大臣は日朝平壌宣言に基づき日朝国交正常化を実現するというのが我が国の方針と報告をされました。
我が党も、この核、ミサイル、拉致、過去の清算などのこの両国間の諸懸案を包括的に解決をして国交正常化に進もうというこの日朝平壌宣言が唯一の理性的な解決の道だと考えておりますが、改めて、この日朝平壌宣言の今日的な意義についてどうお考えか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岩屋毅君) 日朝平壌宣言は、委員御指摘のとおり、日朝双方の首脳の議論の結果として、日朝関係の今後の在り方を記した、両首脳により署名された文書でございます。現在に至るまで、これについては北朝鮮側も否定はいたしておりません。
したがって、やはりこの原点というのを踏まえた上で、一刻も早く拉致問題を解決し、また核、ミサイルといった懸案を、も包括的に解決して、日朝国交正常化を実現すべく取り組んでいきたいと考えております。
○井上哲士君 そこで、先ほどから出ておりますが、岸田前首相は昨年五月の国民大集会で、この日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいりますと、こういうふうに述べられて以来、繰り返し述べられております。
その後、例えば当委員会で福井県の小浜市に視察に行きましたけれども、その場でも、初めて首相がこういうことを言明したということで、大変期待の声をお聞きをいたしました。一方で、政府からは何の情報もないと、果たして進んでいるのかと、こういう不安の声も上がってきたわけですね。
石破首相の二回の所信表明演説にも、それからこの間のお二人の大臣の報告にも、いずれもこの首相直轄のハイレベルでの協議を進めるという言葉がありませんでした。この首相直轄のハイレベル協議、首脳会談の実現に向けた、これもう中止したということなのか。それとも、そもそも進んでいなかったということなのかと。そうでないならどのように引き継いでいるのかということなんですね。
林大臣が米子に行かれた際の報道を見ておりますと、北朝鮮には様々なルートで働きかけをしてきていると、政府の責任で最も有効な手だてを講じたいと現場で強調されたと聞いておりますが、これはこの岸田政権以来のハイレベル協議というものを引き継いでいるというふうに受け取ったらいいんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 石破総理が所信や予算委員会で申し上げておるそのお話は、先ほどしたとおりでございます。私が鳥取でお答えしたのも、それを踏まえて、何が最も効果的であるかということをよくしっかりと考えながらこれをやっていくと、そういう趣旨で述べたものでございます。
先ほど外務大臣からも御答弁がありましたように、岸田政権と今の石破政権で基本スタンスは全く変わっておりません。表現の仕方ということもございますが、これ一字一句全て北朝鮮側が聞いていると、こういうこともございますので、最も有効な手だてと、こういう言い方をしておるところでございます。
○井上哲士君 一字一句北朝鮮側が聞いているというお話がありましたけれども、だからこそ、これまで繰り返してきたこのハイレベル協議を進めるというのが言葉としてなくなりますと、日本の姿勢が変わったんじゃないかというメッセージになるんではないかと私は思うんですね。
これ、産経の十月四日付けの報道では、この石破総理のこと、インタビューで、首脳会談も当然やらなければならないが、いきなり会っても仕方がないと語ったと、こう言われているんですね。もちろん、いきなり会うんじゃなくて、準備は必要でありますけど、こう言いますと、かなり先延ばしをする、こういうふうにも取れるわけで、これやっぱり被害者家族の皆さんの期待の声とは違うと思うんですよ。
そういうことでないんだということをきちっと示す上でも、私はやっぱり従来言ってきたような言葉はしっかり示すべきだと思うんですけれども、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 先ほども少し触れさせていただきましたが、この日朝間の諸懸案を解決するために、石破総理が、もう一度日朝平壌宣言の原点に立ち返り、この機会を逃すことのないよう金正恩委員長に対して呼びかけていく旨を述べておられまして、さらに、実際に会いもしないで相手を非難していても何も始まるものではないと、私、すなわち石破総理ですが、私は正面から向き合うことでこの思いを実現したいと、こういうふうに述べられておるわけでございまして、まさにそのことを体して、この先ほどお答えしたような対応をしておるということでございます。
○井上哲士君 そうであるならば、そういうことが伝わるような私はメッセージの出し方が必要だと思います。
この日朝平壌宣言の第四項で、この北東アジア地域の平和と安定のために互いに協力していくとしていることも大変重要だと思います。ASEANが首脳会談で採択をした、いわゆるASEANインド太平洋構想、AOIPの実現を目標として、軍事ではなくて対話を、排除ではなくて包摂をという立場で北東アジア地域の平和体制を構築をしていくと、これ私は非常に、こういう外交姿勢が求められていると思うんですね。こうしたビジョンを持って、日朝平壌宣言に基づいて、拉致問題を含めた日朝間の諸問題をこの平和的な交渉で、道理ある形で包括的に解決することを目指すと、この対話を粘り強く働きかける外交努力が重要だと考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) この我が国の北朝鮮に対する基本方針は、先ほど来、外務大臣からもお話がありましたように、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を実現するというものでございます。
拉致の被害者、御家族、御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であるとともに、その本質は国家主権の侵害であり、政権の最重要課題であるということでございます。
そうした中で、石破総理も日朝間の諸懸案を解決するため、もう一度日朝平壌宣言の原点に立ち返って、この機会を逃すことのないよう金正恩に対して呼びかけていくと、こういうふうに述べられておるところでございまして、そうした考え方の下で、この問題の解決のために、総力を挙げて、最も有効な手だてを講じていくということでございます。
○井上哲士君 先ほど申し上げましたけれども、この軍事ではなく対話を、排除ではなく包摂をと、こういう立場での粘り強い外交、働きかけが重要だと思います。
それに対して、石破首相が総裁選挙のときに提唱したアジア版NATO、これ、アジア地域の軍事的な緊張を高めてこの拉致問題の外交的解決というものを私は遅らせるということにつながると思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) このアジア版NATOを含む日本の安全保障の在り方につきましては、これまでも、石破総理御自身で、一朝一夕で実現するとは思っておらないと、まずは喫緊の外交・安全保障上の課題に取り組んでいく必要があると繰り返し述べられているところでございます。
その上で、石破総理は、アジアにおける安全保障の在り方について検討するように自民党に指示をしたことを受けまして、現在、自民党において議論がこのことについては行われているところでございます。
いずれにいたしましても、日米同盟の抑止力、対処力を強化し、その強靱性、持続性を高めていくという観点で、また、同盟国、同志国との連携を更に深め、抑止力を強化するという観点から検討し、対応していくということになると思っております。
この安全保障政策はあくまで憲法の範囲内で行うということでございまして、平和国家としての我が国の歩みをいささかも変えるものではなく、今の先生の御指摘は当たらないと考えておるところでございます。
○委員長(松下新平君) おまとめください。
○井上哲士君 NATOのように相互に防衛義務を負うようなものが憲法に......
○委員長(松下新平君) 井上先生、時間ですのでおまとめください。
○井上哲士君 はい。
憲法に沿うと私は到底思いません。こういうことではなく、徹底した九条に基づく外交を求めて、終わります。
拉致問題特別委員会(対話を粘り強く働きかける外交努力を)
2024年12月23日(月)