国会質問議事録

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内閣委員会(学童保育の待機児童問題や大規模施設の解消について)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 先ほど、保育の質の向上のためには実際に配置をされている保育士の数が大事であって、その調査とともに、基準は抜本的に引き上げるべきだという質問がございました。
 この保育所に通っている子どもたちが学校に上がりますと、その大半が学童保育に行くわけですね。今日はその問題についてお聞きしたいと思います。
 政府は、学童保育の待機児童の解消のために、この間、放課後子ども総合プラン、新・放課後子ども総合プラン、放課後児童対策パッケージなど、累次の対策を行ってきました。しかし、昨年の五月一日時点で約一・八万人の待機児童が生まれて、しかも前年よりも増加するなど、解消には至っておりません。
 昨年十二月には、この待機児童解消に向けた対策を一層強化するとして、放課後児童対策パッケージ二〇二五が公表をされております。この中では、待機児童の発生状況に偏りが見られること、そして自治体に補助事業が十分活用されていないこと、自治体での関係部局間、関係者間の連携、この三つの課題を指摘をしておりますが、今日は待機児童の発生状況の問題についてお聞きをいたします。
 このパッケージでは、発生状況には時期、学年、地域の偏りがあるとしています。こども家庭庁は二〇二三年以降、毎年五月一日時点と十月一日時点の待機児童数を公表しておりますが、二〇二四年の調査で、五月一日時点では待機児童が一万七千六百八十六人でしたけれども、十月一日までに八千八百九十二人が減って八千七百九十四人と半減以下となっておりますが、半年間で待機児童数がこれだけ減少する理由をどのように考えているでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 放課後児童クラブの待機児童数の調査では、御指摘のとおり、夏休みを越えて年度後半になりますと待機児童数が減少する傾向が見られます。こども家庭庁では、待機児童の多い自治体へのヒアリングなどを行っておりまして、年度の後半に待機児童が減少することについて理由を尋ねたところ、まず一つ目としては、年度後半に至るまでの間に児童が退所をして、その空いた枠に待機していた児童が入所をできたということですとか、二つ目としては、夏休みを越えたタイミングで保護者に確認をしましたところ、必要性が低下をしたということで申請を取り下げたというふうな理由があるというふうに伺っております。
 また、実は少し前の調査なんですが、令和四年度に実施をした待機児童対策に関する調査におきましても、減少理由としてはただいま申し上げましたような二つの回答が多くを占めております。このほか、登録児童の利用日数が減ったことによって利用児童の調整を行った結果、待機児童が入所をできたといった回答も一部ありまして、適切な利用調整を行った結果というふうな効果もあるのかなというふうに認識をしております。
 ただ、減少傾向にあるとはいっても、年度後半においても待機児童が解消されているわけではありませんので、待機児童の解消は喫緊の課題であり、昨年末、文部科学省とともに取りまとめた放課後児童対策パッケージ二〇二五に基づいて、引き続き予算、運用の両面から必要な対策を実施してまいります。
○井上哲士君 夏休み以降、待機児童が減るのは必要性が減るからだというような今お話がありました。
 本当にそうかということなんですね。待機児童数が多い上位二十自治体のうちのある自治体の担当者の方からお話を聞きました。この自治体でも待機児童が半年で六割以上減少するんですね。その理由は、親の転居等もありますけれども、夏休みにはどうしても入所できないと困るので、それまでは待機児童の状態で登録していたけれども、夏休みが終わったら、終わってもまだ入れなければ、もう諦めて待機から外れる家庭が多いという話だったんですね。
 待機児童が、つまり夏休み以降に大きく減少するのは、本当は利用したいけれども、幾ら待機しても利用できる見通しが立たないと、夏休みが終わってもまだそれができないということで諦めているということであって、私は、必要性が減少したわけでも待機児童が解消されたわけでもないということだと思うんですよ。年度前半のニーズが多いのではなくて、年度当初のニーズに受皿が追い付いていないということが途中で諦めるという事態をつくっているという、その認識を是非持っていただきたいと思うんです。
 とはいえ、ニーズが満たすだけの施設を新設するとなりますと時間も費用も掛かります。この間、緊急的な対応として放課後居場所緊急対策事業が取り組まれてきましたけれども、この事業と同じような放課後児童クラブ待機児童への預かり支援実証モデル事業というのが二四年度の補正予算で措置をされておりますが、この実証モデルはどういう趣旨なんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘をいただきました緊急対策事業の方は、待機児童が解消するまでの緊急的な措置ということで、児童館などの既存の社会資源を活用することで放課後に安心できる居場所を提供するという趣旨でございました。
 今般、令和六年度の補正予算において計上しました放課後児童クラブ待機児童への預かり支援実証モデル事業も、放課後児童クラブの待機児童などを対象に、緊急的に安全、安心な居場所を提供するという趣旨、趣旨は同じでございますが、本事業は、待機児童が五十人以上生じている又は生じる可能性があるという市町村に限って国が十分の十の補助を実施をするものでございまして、地域の実情に応じた預かり事業のモデルを構築、検証いただくような事業となっております。
 こうした性格から、このモデル事業では、待機児童の生活実態ですとか自治体における受皿整備の課題を的確に把握をして、どのような預かり事業が適しているのか、関係者による協議の場を設けていただいた上で預かり事業を実施し、その実施した結果、事業の結果の評価も行っていただくこととしております。検証結果を令和七年度以降の待機児童解消計画にも反映していただくなど、そういったことを目的として実施をすることにしてございます。
 放課後児童クラブの受皿整備には時間が掛かりますので、それまでの間の緊急的かつ時限的な対応ということでこれらの事業を活用いただき、待機児童となっているお子さんにも何らかの居場所を提供していきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 放課後児童クラブと同程度の預かり支援事業を行うわけですが、やっぱり児童館や公民館にはそれぞれ独自の法的位置付けや役割があって、学童保育を代替するものではありません。学童保育は、児童福祉法に位置付けられた事業であって、専門の放課後児童支援員が配置をされ、学童保育専用の施設を整備することで待機児童を解消するということが本筋だと思うんですね。
 大臣、お聞きしますけれども、この放課後居場所緊急対策事業や預かり支援実証モデル事業はあくまでも臨時的な対応であって、これらの事業である程度子どもを受け入れたからといって、待機児童が減少したということで扱うべきではないと私は考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 放課後居場所緊急対策事業や預かり支援実証モデル事業は、放課後児童クラブにおける待機児童が一定数発生している市町村において、放課後の居場所がなくお困りの方への緊急的な支援として位置付けているものでございます。
 他方、放課後児童クラブの待機児童は、クラブの利用を希望しているが入所できていない児童を計上しているものであり、これらの事業を活用した場合でも、クラブへの入所を希望する限り、引き続き待機児童として扱うこととしております。
 なお、この取扱いについて自治体ごとに差異などが生じないように、しっかりと周知してまいりたいと思います。
○井上哲士君 表面的に数が減ったからといっても実際は違うんだということをしっかり見てほしいんですが、やっぱり臨時的な対応で子どもたちを受け入れるのでは解決にならないことは、この登録児童数の減少の理由を見ても明らかだと思うんですね。
 登録児童数、すなわち実際に学童保育を利用している子どもたちの数は、昨年五月一日時点の百五十一万九千九百五十二人から、十月一日時点で百四十七万千三百十五人。四万八千六百三十七人も減少しておりますが、この理由をどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 放課後児童クラブの利用ニーズが高まる中で、毎年の五月一日時点の登録児童数でございますけれども、最多を更新し続けて、直近の令和六年五月一日現在では約百五十二万人に至っているところでございます。
 待機児童の状況をより詳細につかむために、令和五年度から十月一日時点の登録児童総数についても調査を開始をしてございますが、その結果、令和五年度、六年度共に十月には登録児童数が、令和五年度の場合は約六万人程度、令和六年度は約五万人程度減少しているということが確認できております。
 この点、登録児童の利用実態について実施をいたしました調査によりますと、高学年になるにつれて学校が終わる時間が遅くなって、放課後に習い事に行くケースも増えることですとか、年度末にかけて高学年児童の卒所や親の就業状況の変化、影響を受けて年度末を待たずに登録を外れる児童数が増えること、また低学年児童は年度途中で習い事を新たに始める方も多いということなどが指摘をされていて、個別の自治体へのヒアリングなどからも同様の傾向を把握しているところでございます。
○井上哲士君 習い事とか、友達は学童に来ていないのに自分だけとか、こんな御説明もあるわけですけど、よくやっぱり実態を見る必要があると思うんですね。
 資料に、二〇一〇年三月に国民生活センターが学童保育サービスの環境整備に関する調査研究を発表しています。この調査では、中途退所児童の理由から見た課題を分析しております。
 左側のこの一の③を見ていただきますと、中途退所の理由、引っ越し、転居とかリストラなどがあるわけですけれども、こういう親の都合もありますが、重大なことは、子どもが学童保育に行きたがらない、それから指導員の対応、保育内容に不満という理由が合わせて三五・一%もあります。
 さらに、この調査では、この二つの理由に関する保護者、指導員からの聞き取りを行っておりますけれども、右の方にありますが、それを見ますと、子どもの人数が多く一人一人への援助を丁寧にできない、これは指導員の方、それから、学童保育の中が混み合っていてうるさくて落ち着かないので子どもが行きたがらない、保護者、こういう理由が多かったというんですよね。
 こういう、中途退所の子どもたちがこういう理由を持っているということは、大臣、認識をされているでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 御指摘の調査は、平成二十二年、十五年前に実施された調査であると承知をしております。
 他方、先ほど局長から答弁いたしましたように、登録児童の利用実態について実施した調査での自治体ヒアリングにおきましては、高学年になるにつれて学校の終わる時間が遅くなったりとか放課後習い事に行くケースが増えること、低学年の児童は年度途中で習い事を新たに始めることなどが多いということも確認されております。
 このため、放課後児童クラブを退所される諸事情は様々かと考えますが、委員御指摘のように、子供の人数が多くて一人一人への援助を丁寧にできていないとか、混み合っていて落ち着かないといった理由で子供が放課後児童クラブに行きたがらないのだとすれば、それは改善すべきものと考えております。
 こうした点につきまして、こども家庭庁では、放課後児童支援員などに援助スキルを高めるための研修への支援や、待機児童が発生する自治体への整備費のかさ上げなどの支援、放課後児童クラブ運営指針に子供の権利や意見の尊重などの内容を盛り込むなどの充実に取り組んでいるところでございます。
 放課後児童クラブは、留守家庭の児童等に遊びと生活の場を提供する大切な事業であります。子供が安心、安全に過ごせる環境の整備、質の向上に引き続き取り組んでまいりたいと思っております。
○井上哲士君 確かにちょっと前の資料なんですけど、僕はしかし、むしろこういう理由で退所する子どもたちは増えているんじゃないかと思うんです。
 それはなぜかといいますと、資料三を見ていただきますと、このいわゆる学童保育の支援の単位、この数を比較をしてみますと、児童数が四十一人から七十人という単位は一万二千五百二から一万三千三百三十六と八百三十四増加をしております、二〇二三年から二四年の一年間で。それから、七十一人から百五十人以上という単位は百九十三増加するなど、子ども集団の規模が非常に大規模化、この一年間だけでもしているわけですね。こういうことの中で、なかなか指導員が十分に行き届かない、居心地のいい放課後を暮らせなくなっているという状況がむしろ拡大しているんじゃないか。
 そもそも、一支援単位の人数が四十人という規模が大き過ぎると。学童保育連絡協議会は一支援単位三十人にすべきだと提案しておりますし、児童一人当たりの面積の最低基準が一・六五平方メートル、これは保育士の乳児室の面積基準と同じなんですよ。幾ら何でも狭過ぎます。しかも、今、小学校では三十五人学級どんどん進んでいますよ。ところが、学童保育は四十人と。
 これ、やっぱりこういう支援の単位とか規模というものを見直さないと、実態に合わないから、騒がしくてやっぱり辞めたくなるというのが起きているんじゃないかと思うんですけれども、大臣、この単位などを見直すべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 国が定める基準におきましては、放課後児童クラブの一つの支援単位はおおむね四十人以下と定めています。これは、平成二十七年の子ども・子育て支援新制度の開始に際し、有識者による専門委員会において、子供が相互に関係を構築する人数、一つの集団としてまとまりを持って生活する人数、職員と子供が信頼関係を構築できる人数としておおむね四十人以下が適当であるとされたことを踏まえたものでございます。
 その上で、一支援単位当たりの人数が多い放課後児童クラブにつきましては運営費の補助基準額を減額することとしておりまして、適正規模への誘導というものを図らせていただいております。また、支援単位の人数が増える場合には、施設設備の改修費を補助することで一人当たりの面積の確保を図っております。
 引き続き、放課後児童クラブが適正な人数の下で運営されますよう、自治体の取組しっかり支援してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 やっぱり根本的には、学童保育の専用施設増やす必要があると思うんですね。今いろんな補助事業のお話もありましたけれども、なかなか活用ができない。その根本にはこの学童保育が、法的な位置付けの問題があると思います。
 児童福祉法の第七条の児童福祉施設として明確に位置付けて、第二十四条の一項で市町村に実施義務を課すなどの公的責任を明確にして、これまでのとにかく中身ともかく受皿を増やすというようなやり方ではなくて、しっかりこの専門的施設も増やして子どもたちを受け入れていく、それがなければやっぱり待機児童の解消にならないんじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 学童保育への法的な位置付けについてのお尋ねがございました。
 放課後児童クラブは、保護者等による地域での自主運営等による事業として広がった後、平成九年度から児童福祉法で法定化をされました。市区町村には実施の努力義務が課され、現在、ほぼ全ての市区町村で事業を実施いただいております。その設備及び運営は、実施場所や運営主体が多様である中、地域の実情を踏まえて創意工夫を生かした運営が行えるように、国が基準を定めた上で、市区町村が国の基準を参酌をして条例で基準を定めるという仕組みになってございます。
 これは、委員御承知のとおり、令和二年度ですけれども、地方分権の流れの中で、地方三団体からの要望もあり、参酌化が行われたという経緯がございます。この上で、国としては、放課後児童クラブの待機児童対策が喫緊の課題である一方、質も担保をする必要があると考えております。
 先ほど申し上げました、放課後児童対策パッケージの二〇二五、この中では、しっかりとその待機児童を解消し、必要な整備を確保するために、自治体の、待機児童のある自治体に個別にヒアリングを行ったり、メニューの、補助メニューの活用というものもしっかり進めながら、放課後児童クラブの質、量両面での充実を図っていきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 昨年の十二月にも、学童保育の指導員の処遇改善についても申し上げました。これ、本当に喫緊の課題だと思うんですね。昨日も愛知で指導員の方とお話しする機会ありましたけど、本当に楽しい、やりがいがあると、だけれども、処遇何とかしてほしいと本当に言われるんですよ。
 抜本的な処遇改善は待ったなしだと思うんですけれども、せめて既存の処遇改善事業のこの補助額の引上げを検討できないかと求めたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 放課後児童クラブの職員の処遇改善、これまでも、勤続年数や研修実績などに応じた賃上げを支援する、また職員の給与を月額九千円程度引き上げる場合に補助を行うなど、様々な支援、継続的に行っています。
 加えて、毎年の予算編成過程におきまして、人事院勧告を踏まえた運営費単価の見直しを図るとともに、令和六年度からは、常勤職員を二名以上配置した場合の運営費の補助基準額の引上げなども行っております。
 処遇改善に係る事業の補助基準額の見直しなどは適時行ってきたところであり、これらの事業を実施する自治体が更に増え、放課後児童クラブ職員の処遇改善が図られるよう、改めて自治体にこれらの事業周知して、積極的なこの事業活用というものを呼びかけてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 一層の強い支援を強く求めまして、終わります。
 ありがとうございました。

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