国会質問議事録

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政治改革特別委員会(政見放送への手話と字幕の全面付与を)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案は、現行の公職選挙法の百五十条の二にある政見放送における品位の保持に関する規定を選挙ポスターにも広げるものと認識しております。
 これに対して、民主主義の根幹を成す表現の自由や政治活動の自由を制限するものにならないかという懸念の声もあります。
 提案者にお聞きしますが、この表現の自由や政治活動の自由を制限するようなことにはならないか、また、現行法のこの政見放送における品位の保持に関する規定を根拠にして選挙管理委員会など行政機関によって政見放送の内容が変更されたと、こういう事例はあるでしょうか。
○衆議院議員(落合貴之君) 委員御指摘のとおり、本改正案で規定するポスターの記載に関する品位保持規定は、民主主義の根幹を成す表現の自由や政治活動の自由に関わるものでございます。その点を重く踏まえまして、本改正案では、公権力による恣意的な規制が行われることがないように、品位保持規定に違反するポスターがあった場合に、行政機関である選挙管理委員会がその内容に立ち入ってその適否を判断する制度とはしません。表現の自由や政治活動の自由とのバランスに十分に留意して規定を設けております。そのため、御指摘のような憲法上の懸念はないように、そのように考えております。
 行政機関である選挙管理委員会が表現が世に出る前に表現内容をチェックして不適切と判断したものについて公表させないようにするということは、やはり憲法第二十一条第二項が禁止する検閲あるいはそれに準じた事前抑制に当たりかねないものでございますから、これまで政見放送においてもそのような事案はないものというふうに承知をしております。
○井上哲士君 これまで政見放送でも行政機関が表現に立ち入ったことはないし、この法案でもそういうことではないんだという答弁でありました。
 さらに、昨年四月の東京十五区の補選で、他の候補者の街頭演説を拡声機を使って妨害したり、選挙カーを追いかけて妨害活動をする政治団体が問題となりました。法案にはこれ直接このことについて触れていないわけですが、この街頭演説や選挙運動への妨害、虚偽事項の公表に対しては現行法で厳格に対応していくことが必要だというふうに考えますが、法案提出者はいかがでしょうか。
○衆議院議員(落合貴之君) 現行法で厳格にということで、委員御指摘の昨年四月の衆議院東京十五区の補欠選挙における選挙の自由妨害事案については、つばさの党の代表ら三名が他人の陣営の演説を妨害したとして逮捕、起訴されており、現在公判係属中であるものと承知をしております。
 その上で、委員御指摘のとおり、街頭演説や選挙運動への妨害、虚偽事項の公表については、衆議院の政治改革特別委員会におきましても、附帯で、「街頭演説は民主主義の根幹をなす「言論の場」であり、他の候補者の発言を聞き取りにくくするなど街頭演説を妨害する行為は、選挙における「言論の場」を壊し、表現の自由の範囲を超えた選挙妨害となりかねない。これら街頭演説や遊説などの選挙運動への悪質な自由妨害やSNS等の媒体をはじめとした虚偽事項の公表並びに公職の候補者が他の候補者の選挙運動を行う行為に対しては、選挙期間中においても関係機関は、法に基づき、迅速かつ適切な対応を行うべく最大限の努力を傾けること。」、このような附帯決議を衆議院でも付けました。
 我々、法案の提案者としましても、「検察官、都道府県公安委員会の委員及び警察官は、選挙の取締に関する規定を公正に執行しなければならない。」とする公選法第七条の趣旨も踏まえて、個々の具体的な事案に対し、法に基づき迅速かつ適切な対応を行うべく最大限の努力を傾けることを期待をしております。
○井上哲士君 二〇二一年の衆議院東京十五区補選や東京知事選の政見放送では、立候補者が手話通訳者に対して威嚇、妨害するなどの行為に及ぶ者が見られました。手話通訳を必要とする方々や関係団体からも批判と不安の声が上がっております。各政党や政府にも関係団体からの要望が届けられていると思いますが、この政見放送でこの手話通訳者が安心して通訳できる環境の確保についても検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(落合貴之君) 私自身も関係団体からの要望等を拝見しました。あと、この映像も確認をさせていただきました。
 聴覚障害者の知る権利ですとか参政権の保障、これにおいては手話通訳者の存在は欠かせないのが現状でございます。そういった手話通訳者が安心して通訳できる環境の確保、これはごもっともであると思います。また、手話通訳者だけでなく、やはり選挙に関わる多くの方々の安全、安心の確保、これも大きな意味で、選挙に関わることは民主主義の根幹ですので重要なことです。
 最近は、各党各会派が集まって、この選挙運動の協議会、在り方を考える協議会も開かれていますので、私自身もこういった場で問題提起をして対応策を考えていくということをやっていきたいというふうに思います。
○井上哲士君 例えば、関係団体からは、候補者と手話通訳を別室で撮影して画面上でワイプ表示する方式の検討など、いろいろな声が上がっております。是非積極的な検討を各党で進めていきたいと思いますが。
 今、この手話通訳が聴覚障害者の参政権にとって欠かすことができないというお話がありました。では、その手話通訳の付与が政見放送でどうやって行われているか、現状について資料を配付をしております。これ、総務省の告示によって、衆議院小選挙区選挙のスタジオ録画方式では手話通訳不可となっているんですね。この政見放送の手話通訳は、行政や政治用語の習得を始め、高度な技能と経験が必要となるために、手話通訳者を確保できないということがこの不可の理由に挙げられてまいりました。
 一方、政見放送の手話通訳を担当することができる政見放送手話通訳者、その登録者数が、二〇二二年は七百七十七人でしたが、二〇二四年は六百八十三人に減っているんですね。
 政見放送を担当できる手話通訳者の確保のためにも、この手話通訳者そのものの裾野を広げることも必要だと考えますが、聴覚障害者の皆さんがしっかり政見を知ることができるように、手話通訳者の養成、育成支援事業の強化や予算増も必要になると考えますけれども、総務省、いかがお考えでしょうか。
○衆議院議員(落合貴之君) この全体の数が減っていて不足をしているということは事実であります。私も調べました。そして、この地域の偏在を調べてみますと、大都市圏にはある程度いるんですが、地方はもう著しく不足をしているというような状況です。これ、先ほど申し上げた聴覚障害者の参政権を確保するためにも、こういった技術を持った手話通訳者の絶対数の確保は必須であります。
 したがって、これも各党協議会で検討を進めるべき事項であると思います。それにプラスして、今いろいろな声を見てみますと、公費で各演説会場とかに手話通訳者を付けられるようにするべきだという声も多く上がっていまして、これも検討するべき事項だと思いますので、前向きに話をしていければというふうに考えております。
○井上哲士君 失礼しました。
 配付資料では、手話に加えて、この政見放送の字幕付与の現状も明らかにしております。これも総務省の告示に、公示によって、衆議院では、小選挙区は持込みビデオ方式では付与できるけれども、スタジオ録画の場合は不可でありますし、比例代表ではそもそもスタジオ録画のみなので字幕が不可となっていると。参議院では、選挙区は、持込みビデオ方式では付与できるけれども、スタジオ録画の場合は不可、比例代表は、スタジオ録画方式のみだけれども字幕が可能と、こういうふうになっております。
 参議院の選挙区の場合は、政党の公認も推薦もない無所属候補者の場合に持込みビデオ方式を選べないとなっていますので、字幕なしのスタジオ録画方式のみであって、この公平性の観点からも問題があります。
 これ議論になったときに、総務省は、二〇一八年十二月五日の参議院の倫選特で、この字幕付与の限定について、NHKでも人材や機材確保の面で限られた期間に全ての選挙区で対応することが困難な状態にあると、こう言いました。同時に、他方で、NHKにおいては可能なところから着手したいというふうなことも、サービスを充実させていただきたいと考えていると承知しているとも答弁をされております。
 それ以降六年余りがたっているんですけれども、例えば参議院は昨年の八月からインターネット審議中継でも音声自動認識で生中継でも字幕付くようになっているんですね。もちろん政見放送は正確性期さなくちゃいけません。しかし一方で、録画収録するものでありますから、私は、昨今の技術の進歩を考えれば、全ての場合でのこの政見放送への字幕付与は可能じゃないかと思うんですね。
 NHKからこうしたサービス充実についてどのような、六年以上たっていますけれども、ことを把握しているのか、総務省としてはどう考えているのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(笠置隆範君) 政見放送における手話通訳や字幕の付与につきましては、聴覚に障害のある方などに配慮をいたしまして、環境が整った選挙から順次導入をされており、政見放送ができる選挙においては、手話通訳か字幕の少なくともどちらか一方は付与することができると、現状なってございます。
 その上で、委員お話しのスタジオ録画方式での字幕付与につきましてでございますが、参議院の比例代表選挙以外では認められてございません。これは、NHKによりますと、全国のほとんどの放送局では字幕付与に対応できる専門的なノウハウと技術を持った人材や会社が地域にないのが実態で、加えて、字幕を付与するための機材の整備などの課題もあるとのことであり、現状としては限られた期間に全ての選挙区で対応することは困難な状況であるとのことで、事情は変わっていないというふうに聞いてございます。
○井上哲士君 いやあ、これだけ、先ほど参議院のことも言いましたけど、大きく変わっていて、いろんな個人でもやっているわけですよ。もちろん正確性必須でありますよ。六年余りたって同じことを繰り返しているということでいいのかと、やっぱり総務省としてもっともっと積極的に働きかけるべきだと思います。
 聴覚障害者で手話ができない方もいらっしゃるんですよ、たくさん。そういう方にとっては本当に、正確に伝える点でも字幕は私本当に必要だと思います。どちらかが付いていればいいというものじゃないと思うんですね。
 そこで提案者にお聞きしますけれども、この政見放送で手話通訳と字幕付与、やっぱり両方付けるということが必要だと思いますが、その点についての見解、また、現行では字幕付与ができない政見放送について字幕を付与できるようにするべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○衆議院議員(落合貴之君) 手話通訳に加えて字幕付与の意義、これは憲法で認められている参政権を実質的に保障するという観点から非常に大切なことであるというふうに考えております。
 これ、義務化をしてこなかった理由として、先ほども答弁にありましたが、専門性を持つ人材がいないですとか、技術的にも機材の確保も難しいというような問題があるということでございます。
 ただ、先ほど委員もおっしゃいましたが、技術的にかなり進歩をしています。より多くの人たちが簡単に字幕を付けたりとかができるような状況にもなりつつありますので、これも、行政は慎重に物事を進めていかなきゃいけないので、我々政治家が協議の場で積極的に議論をしていくということが大切だというふうに思います。
○委員長(豊田俊郎君) 時間が参りました。
○井上哲士君 是非実現をしたいと思います。
 以上で終わります。

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