国会質問議事録

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内閣委員会(日本学術会議会員の任命拒否問題ー安倍政権による会員選考決定への事前介入の全容を明らかにせよ)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 二〇二〇年十月の日本学術会議の会員任命拒否問題をめぐっては、この間、多くの法律家や任命拒否された六人が、任命拒否理由の開示を求めて、情報公開請求や情報開示請求訴訟に粘り強く取り組んでこられました。
 二〇二三年八月二十七日の情報公開・個人情報保護審査会答申書は、請求人の主張としてこう述べております。日本学術会議は、学問の自由を保障する観点から、会員は学術会議が優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に推薦し、この第十七条の規定による推薦に基づいて内閣総理大臣が任命すると定めており、内閣総理大臣の任命は形式的任命にすぎないことが国会で繰り返し確認をされてきたと。国会の審議を踏まえた非常に重要な指摘であります。
 この問題に関して政府は、任命に関する一連の手続は終了していると繰り返しておりますが、六名欠員という違法状態は残されたままでありますし、任命拒否理由も開示をされておりません。にもかかわらず、この任命拒否問題を学術会議の組織の在り方論にすり替えて、日本学術会議を全く別組織につくり変えようという法案を今国会に提出したことは到底許されません。
 まず、官房長官、お聞きいたしますけれども、この任命を拒否された、そしてその理由の説明を回避され続けている学者の気持ちを考えたことがあるのかという問題です。
 情報開示請求訴訟の第一回口頭弁論で加藤陽子東京大学教授は、菅首相が人事のことなので説明を差し控えると繰り返したことが、あたかも拒否された側に欠格事由あるいは忌避される理由があるかのように人々に想起させたと述べて、学者としての名誉を侵害されたことを痛切に訴えておられます。
 官房長官、この加藤教授の言葉をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今、井上委員から御指摘のあった趣旨の発言があったということは承知をしておりますが、係争中の訴訟に関することでございまして、コメントは差し控えたいと思います。
 その上で、二〇二〇年の日本学術会議の会員任命につきましては、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断を行ったものと、そういうふうに承知をしております。
○井上哲士君 特に女性の学者が様々な困難の中で苦労をしながら誇りを持って学問研究活動に取り組んでいることは、私、官房長官よく御存じだと思うんですよね。任命拒否をしながらその理由を明らかにしないことがどれだけ学者としての誇りと名誉を傷つけているのかと。まるでその責任を感じないような答弁に、残念に思う方がたくさんいらっしゃると私は思います。
 その上で、学術会議の事務局にお聞きしますが、この任命拒否の理由を開示しないだけではなくて、任命拒否がどのような経緯で行われたかも明らかにされておりません。
 日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令では、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する三十日前までに当該候補者の氏名を記載した書類を提出することにより行うものとするとあります。この候補者推薦名簿には候補者の氏名しか記さないとしている、その理由はどういうことでしょうか。
○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 お尋ねの日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令におきましては、任命に必要となるものとして、当該候補者の氏名と、補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類、これを任命を要する期日の三十日前までに提出するということとされているものでございます。
○井上哲士君 その理由を聞いているんですよ。
○政府参考人(相川哲也君) ただいま申し上げましたように、任命に必要となるものとして、氏名、それから補欠の会員候補者である場合には任期、これを三十日前までに提出する、これが内閣府令の規定でございます。
○井上哲士君 だから、何でそうなっているかという理由聞いているんですよ。昨日ちゃんと通告しているでしょう。答えられないんですか。
 冒頭で紹介した情報公開・個人情報保護審査会の答申書は、更にこう書いております。内閣総理大臣の任命は形式的任命にすぎないため、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令は、内閣総理大臣への推薦は当該候補者の氏名のみを記載した書類を提出するものとし、内閣総理大臣が質的な判断をする根拠や資料を与えないことが明確にされていると、こう述べているんですね。
 つまり、氏名のみを記載した書類を提出するというのは、学問の自由を保障した会員選考を保障するためのルールなんですよ。ところが、二〇二〇年十月の会員任命拒否はこのルールに反するやり方で行われてきたのではないかと。
 お手元の資料一は、上半分は二〇二〇年十二月十日の参議院予算委員会理事懇に提出された会議の会員選考の経過に関する資料です。R二・九・二四、日付でしょう。そして、「外すべき者(副長官から)」と手書きされた以外は全て黒塗りで提出されました。しかし、その後、情報公開請求により、黒塗り部分が公開をされました。その下であります。任命拒否された六名の氏名、専門分野、所属、職名が書かれていたということなんですね。
 次の資料二は、上半分はこの同じ日の予算理事懇に出された資料で、R二・六・一二との手書き以外は全て黒塗りでありました。
 これに対して、その六人の方々が個人情報の開示請求によって明らかにされたのが資料の三なんですね。一人一人こういうものが出てきました。
 非常に不自然な斜めの線があるということで、六人の出てきた名簿を重ね合わせたのが前のページの資料二の下なんですね。六人の氏名、専門分野、所属、職名が書かれて、大きなバツが書かれております。あの外すべき者と書かれた九月二十四日の名簿とほぼ同様のものになっています。
 この令和二年六月十二日とされた文書は、先日の予算委員会でも、令和二年任命に向けた会員候補者の推薦に係る意思決定過程において、任命権者から日本学術会議事務局に伝達された内容を記録したものと説明をされております。
 では、この任命権者とは誰で、誰に伝達され、誰が記録したんでしょうか。お答えください。
○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 当該文書でございますが、六月十二日の日付が付され、これまで情報公開に係る審査請求との過程におきまして、令和二年任命に向けた会員候補者の推薦に係る意思決定過程において、任命権者側から日本学術会議事務局に、令和二年任命に向けた会員候補者の推薦に係る事項として伝達された内容を記録したものである旨を説明しております文書です。
 お尋ねにつきましては、人事に関することでもあり、また他に記録もございませんので、お答えいたしかねるところでございます。
○井上哲士君 おかしいでしょう、そんな。伝達された内容を記録したものとして学術会議の事務局にある文書なんですね。受け取った側が行政文書にバツ印するなんて考えられないんですよ。そうなれば、これは任命者側がバツ印をして渡したんではないかと。
 官房長官、追加して聞きますけれども、このバツ印は官邸側の任命権者が付けたということでよろしいですか。
○国務大臣(林芳正君) 今事務方がお答えしたとおりでございますが、お尋ね、人事に関することでございます。他に記録もないため、お答えはいたしかねるところでございます。
○井上哲士君 人事に関することだから公正性が求められるんですよ。それをただしているんですよ。人事に関するものだからといって何も答えない、これではもう本当に、法令に従わないことがやられても何のチェックもできないことになるんですね。
 これまで政府答弁では、九月二十二日又は二十三日に当時の杉田官房長官から六人を外す相談があって、菅首相が了承したとしております。
 ところが、重大なことに、この二〇年六月十二日という日付は安倍政権のときなんですよ。そして、日本学術会議の幹事会が百五人の推薦候補者を決定する六月二十五日よりも前なんですね。
 つまり、安倍政権の官邸によって会員の選考過程への事前介入があったということではないですか。官房長官、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) この二〇二〇年の日本学術会議の会員任命につきましては、日本学術会議法に沿いまして、任命権者である当時の内閣総理大臣が判断を行ったものと承知をしております。
 その上で、当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しておりますとおり、日本学術会議から推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長と任命権者との間で意見交換が行われておりましたが、二〇二〇年の任命に当たっては、これまでと同様に、推薦名簿が提出される前に意見交換が日本学術会議の会長との間で行われたものの、その中で任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと、そういうふうに承知をしているところでございます。
○井上哲士君 意見のすり合わせどころか、六月十二日の文書にはバツ印が付けてあるわけですね。この名前にバツ印を付けるということ、そして任命拒否しながら理由も明らかにしない、どれだけそれが学者として、人間としての尊厳を傷つけることになっているのか、これお分かりじゃないんでしょうかね。
 法令に沿った公正な手続で行われなかったから、こうした事態になっていると思うんですね。一体誰が任命権者として伝達をして、バツ印を付けたのか、調査して明らかにしていただきたいと思いますが、官房長官、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 先ほど、この六月十二日付けの文書についてはお答えしたとおりでございまして、任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと承知をしておるところでございます。その後、任命権者である当時の内閣総理大臣が判断を行ったと御答弁したとおりでございます。
○井上哲士君 その前の安倍政権のときからずうっとこういうことが行われてきたということですが、その経過は全く明らかにされておりません。きちっと私は明らかにするべきだと強く申し上げたいと思います。
 官房長官の質問はここまでですので、結構でございます。
○委員長(和田政宗君) 林官房長官におかれては、退席なさって構いません。
○井上哲士君 この介入がどういう経過で行われたのか、更に聞きますが、資料四は日本学術会議事務局名の二〇二〇年四月二日付けの最近の学術会議の動きという文書でありますが、この文書はどういう性格で、誰に宛てたものですか。
○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 当該文書ですが、これまで、情報公開に係る審査請求等の過程におきまして、令和二年任命に向けた会員候補者の推薦に係る意思決定過程におきまして日本学術会議事務局が作成をした、政府内での説明に用いられた資料である旨を説明しておる文書でございます。
 当該文書ですが、最近の学術会議の動き、会員の改選に向けたスケジュールその他について説明する資料となっております。説明の詳細につきましては、人事に関することでありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 誰に宛てたものですか。
○政府参考人(相川哲也君) 説明の詳細につきましては、人事に関することであり、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 この四月二日の文書の次のページ、資料五には、三として、今後の会員選考の流れ、この流れが記されております。日本学術会議の選考委員会が会員候補者百十一名を選定し、六月末の幹事会で百五人を選定すると。
 その前に、御相談に参りますと記されているんですね、この文書には。何月何日に、誰が誰に対して、何を相談したんですか。
○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 御指摘の文書には、令和二年十月の日本学術会議会員改選に向けてと題する項目におきまして、御相談に参りますとの記載がなされておるところでございますが、お尋ねにつきましては、人事に関することでありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 何が何でも隠したいようですけど、実際には御相談が行われたのではないかと。
 次のページの資料で、資料六でありますけれども、六月一日付けの学術会議事務局長名による、日本学術会議二十五期改選の方向性についてという文書なんですね。これはもう、任命権者に提出したものであることは、内閣総理大臣に任命いただくとか、こういう文書からも明らかであります。
 日本学術会議の幹事会が百五名の会員候補者を選定したのは、二〇二〇年六月二十五日で、七月九日の臨時総会で承認をされています。この文書は六月一日でありますから、その前なんですね。
 そして、この文書には、次のページにあります資料七以下でありますけれども、五月中旬に選考委員会が百十一人の推薦候補者を内定、括弧非公表と書いてあります。ところが、この非公表扱いのはずのその文書がこの六月一日付けの文書に添付をされているんですよ。
 日本学術会議の内部の、しかも推薦候補の選考中の段階で、日本学術会議の事務局長が非公表扱いの名簿資料を外部に持ち出せるという法的根拠は一体何なのか、これは当時の日本学術会議の会長の了解の下に行われたのか、坂井大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(相川哲也君) 事務局の文書に関するお尋ねですので、私の方からお答えさせていただきます。
 日本学術会議の第二十五期改選の結果につきましては、令和二年十月一日の内閣総理大臣による任命をもって公表されたものでございまして、当該説明時点におきましては非公表のものでございますので、その旨の説明が記載されているものと承知をしております。
 いずれにいたしましても、この当該文書は、政府外での説明に用いられた資料ではないと承知しております。政府内での説明に関する詳細につきましては、人事に関することですので答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 いや、非公表という名簿がこの六月一日の事務局長が出した文書に添付されているんですよ。学術会議より外じゃないですか。それを政府内とはいえ、非公表のものを学術会議の外に持ち出す法的根拠は何なのかということを大臣に聞いているんです。お答えください。
○国務大臣(坂井学君) 令和二年十月のこの会員任命につきましては、私は所管外ではございますが、現行の学術会議法に沿って任命権者である当時の内閣総理大臣が判断を行ったものであり、一連の手続は終了していると承知をいたしております。
○井上哲士君 終了していないんですよ。いまだに六人が欠員だし、この手続そのものに重大な問題があるんですね。
 この六月十二日の文書は、日本学術会議の選考委員会が正式に推薦した案を決定する前のこの六月一日の文書に添付された候補者名簿を基に作成されたとしか考えられないんですね。
 学術会議が承認出す推薦名簿は、あいうえお順なんです。ところが、先ほど来見てもらっていますこの六月、資料一の下、資料二の下、いずれもあいうえお順じゃなくて、学術分野の並びになっているんですね。これは、先ほどお見せした五月に、の作った六月一日の文書に添付されている名簿の順番と同じなんです。つまり、この段階で政府、官邸の方に名簿が出されて、これに基づいてやられたということじゃないんですか。お答えください。
○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 六月一日の日付が付された文書におけます学術分野順になっておりまして、日本学術会議の会則の別表第三に掲げられました分野別委員会の並び順に沿ったものとなっておりまして、特別なものではないと存じます。
 なお、六月十二日の日付が付された文書ですが、日付以外につきましては、人事管理に係る事務に関するものとして不開示としておるところでございます。
○井上哲士君 人事に関することだと言って何もかも答えを拒否する、人事に関することと言ったら法令に反することやってもいいのかということなんですよ。明らかに、学術会議内部の会員の選考過程で使われていた五月の段階の名簿が六月の段階で既に官邸側に渡されてバツ印が付けられて、九月二十四日に外すべき者の指示していた。安倍政権におけるあからさまな法令違反の政治介入にほかならないと言わなければなりません。
 現行の法令すら遵守できない、ルールを破ってきた政府に、日本学術会議を法人化し、その人事、運営、財務への政府による介入を幾重にも制限するような、そういう法案は、事実上、学術会議を解体する、こういうものを出す資格はありません。まずやるべきことは、この任命拒否問題の経緯とそして理由を明らかにすること、法案は撤回するべきだと申し上げまして、質問終わります。

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