国会質問議事録

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内閣委員会(再エネ海域利用法改正案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 本法案は、国連海洋条約で規定されているEEZ、排他的経済水域を活用して洋上風力発電を建設をするものです。気候変動問題を踏まえれば、日本も宣言をした二〇五〇年までのカーボンニュートラルは必ず達成しなければなりません。これに向けて、洋上風力発電の普及促進は非常に重要な課題であります。ただ一方で、この気候変動対策で環境を守るためとしながら、この海洋環境や生物多様性が損なわれるということがあってはならないと思います。
 国連海洋条約の第百九十二条は、いずれの国も、海洋環境を保護し、及び保全する義務を有する、第百九十四条は、いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い、かつ、自国の能力に応じて必要な措置をとる、こう規定をしております。
 そこで、大臣にお聞きしますけれども、このEEZで開発を進めていく以上、海洋環境を保全をするということは国の重要な責務だと考えますけれども、まず、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 我が国における二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、広大な我が国の排他的経済水域も活用して案件形成を促進することが必要でありますが、その際、海洋環境を保全することも重要であると考えます。
 EEZへの洋上風力発電の導入に当たっては、景観や騒音等の環境影響は沿岸域と比較して一般的に小さくはなるものの、その事業の内容によっては鳥類、鳥等への影響等が懸念されており、浮体式洋上風力発電に関する技術開発や環境、漁業への影響など、様々な観点を考慮して進めていくことが重要と認識しております。政府の目標達成に向けて、様々な観点について関係省庁間で適切な役割分担と連携を図り、万全を期してまいりたいと思います。
○井上哲士君 この洋上風力発電の環境影響としては、今もありましたけれども、建設工事中の影響、操業開始時の水中音や濁りの発生、海底地形の改変や海流の流れの変化、海底ケーブルからの電磁波による鳥類や海洋生物の悪化や行動阻害、渡り鳥などによるバードストライク等が想定をされております。
 日本は大規模な洋上発電の風力発電の事例がないために、実際にどのような影響が現れるかはまだ未知数でありまして、このEEZの基礎的な環境情報も僅かだと、環境評価手法も確立をされているとは言えないということは環境の専門家たちから繰り返し指摘をされております。洋上風力の場合、一つ一つのこの風車の環境影響は大きくないかもしれませんが、大規模でかつ長期にわたることで環境に影響を及ぼす可能性があると思います。
 そうした特性を踏まえることが重要だと思うんですが、環境を守る国の責任を果たしながら具体的にどう進めていくのか、お聞きしていきますけれども、まず、今回の法案で導入されるいわゆるセントラル方式と言われる新たな仕組みであります。この方式は従来方式と比べてどのように海洋環境の保全や生物多様性を守る責任を果たすことができるんでしょうか。
○政府参考人(堀上勝君) お答えいたします。
 洋上風力発電事業の実施に当たりましては、鳥類、海生生物、景観等への影響が懸念されているところでありますが、これらの環境影響の程度は一般的には風車の立地場所あるいは配置によるところが大きいと認識をしています。
 現行制度では、国による促進区域の指定後に事業者による詳細な環境影響評価が実施される仕組みになっておりますが、洋上風力発電事業によるこういった環境影響の特徴を踏まえますと、区域指定に当たってより適切な環境配慮を確保する、それが重要だと考えております。
 このため、この法案では、あらかじめ環境大臣が海洋環境等の保全の観点から調査等を実施すると、それとともに、その結果を踏まえて区域指定を行っていくという、そういう仕組みを盛り込んだところでございます。
 環境省といたしましては、この法案によって、洋上風力発電事業の実施に当たって、生物多様性保全を含め、より適切な海洋環境の保全を図ることができると考えております。
○井上哲士君 衆議院での審議では、この環境調査の結果に基づいて区域指定を変更する可能性もある、それからモニタリング調査による情報収集の中で重大な影響が判明した場合は追加的な環境保全措置を検討する、こういうことも答弁をされております。
 こうした追加的な取組は、政府の閣議決定、生物多様性国家戦略で示されている予防的な取組、順応的な取組にのっとって措置されると考えますが、その際やはり、先ほども言いましたが、やっぱり知見が十分でない、このEEZの事業という特性を踏まえての対応が必要、重要と考えますけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) EEZにつきましては、既存情報が十分にありませんことから、科学的知見の充実に努めつつ予防的な対策を講じる予防的な取組と、新たに集積した科学的知見や環境影響に関するモニタリングを実施した結果に基づいて必要な措置を講じる順応的な取組の考え方に従って、環境影響を回避、低減していくことが重要であると考えております。
 このため、環境省による海洋環境調査を通じて科学的知見の充実に努めるとともに、事業者においては、自らが実施する環境影響評価やモニタリング等の結果に基づき、この予防的な取組や順応的な取組を行うことにより、EEZにおける洋上風力発電事業についても適正な環境配慮を確保してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 予防的な取組、そして順応的な取組が重要であるという御答弁をいただきました。
 それを進める上で、更にお聞きしますけれども、この事業者が行うモニタリング調査の実施期間の問題です。経産省と環境省の共管でモニタリング等に関する検討会が行われています。そこでは、委員から、このガイドラインに、案で示されている一年とか三年では短いと、最低三年として必要に応じて柔軟に延長できる仕組みにするべきだという指摘がされております。
 例えば事後モニタリングの期間について、供用直後から起きるものと数年たって起きる応答は間違いなくあると考えていますと。供用後三年後のデータが供用後二十年の代表値であるとは判断しにくいなどなど、様々な指摘があります。
 モニタリング期間は最低三年として、必要に応じて柔軟に延長できると、こういう仕組みにすることが必要ではないでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(堀上勝君) お答えいたします。
 事業者が実施するモニタリングの具体的な内容につきましては、委員おっしゃるとおり、検討会を設置をした中で、今年三月にガイドラインの案を取りまとめたところでございます。
 その検討会において、委員からおっしゃるとおり、必要に応じたモニタリングの実施期間を柔軟に設定するという御意見もいただいております。
 ガイドラインの案におきましては、モニタリングの対象となる項目ごとに適切なモニタリングの実施、実施の期間をお示ししておりますけれども、実際、事業者がガイドラインを参考としつつも、個別の事業ごとには事後調査の内容、違ってきますので、そこを決めるときに、そのモニタリングの実施期間についても柔軟な対応が可能であるというふうに考えてございますので、そういった形で今後対応していきたいと考えております。
 なお、このガイドラインにつきましては、今後、パブリックコメントを実施した上で、今年度中に公表していくということを目指しております。
○井上哲士君 柔軟に延長は可能だという御答弁でありました。
 ただ、これやっぱり事業者の判断になるんですよね。第二回検討会議で、配付資料を見ますと、例えば、イギリスではあらかじめ期間を決めないものが多いという、こういう事例が紹介されていますし、アメリカでは稼働中ずっとモニタリングを行うという例も紹介をされておりました。
 やはり、事業者任せにせずに国が適切な関与をすることが必要かと思いますけれども、ちょっと追加になりますが、いかがお考えですか。
○政府参考人(堀上勝君) 環境省としましては、先ほどお話ししたガイドラインをこれからお示しをしながら、具体的にその中身について丁寧に事業者に御説明をし、対応していきたいと考えておりますので、そういったことからまずは始めていきたいと考えております。
○井上哲士君 引き続き聞きますが、こういう調査で得られたモニタリングデータをどうするのかという問題です。
 洋上風力で実績の多いイギリスでは、約二十年にわたり官民連携で研究プロジェクトを実施して知見を蓄積しております。事業者によるモニタリング調査のデータや環境アセスのデータの提供がこの洋上風力の事業に参加するならの条件となっております。
 そこでお聞きしますけれども、事業者が行ったモニタリングデータを国が一元化、国に一元化して分析をする意義、その必要性についての認識、そしてこのモニタリングデータの事業者からの提供が法律上若しくは制度上で担保されているのか。この点どうでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 事業者が行うモニタリングデータを一元的に管理、分析していくことは、洋上風力発電に関する環境影響についての理解醸成が図られ、環境影響評価の予測精度の向上であったり、環境影響に関する予見性の向上等に資するものと思われます。
 事業者は、モニタリングの結果について環境影響評価法に基づき報告書を作成することとされており、今国会に提出している環境影響評価法の一部改正法案では、環境大臣があらかじめ事業者の同意を得た上で環境影響評価手続で作成した書類を継続的に公開するための仕組みを設けることとしております。
 今後、環境省においてこれらの書類を継続的に公開するためのルールを検討していくこととなるわけでありますが、このモニタリングデータの提供の在り方についてもこの中で検討をされるものと承知をいたしております。
○井上哲士君 この報告書は提出をされますが、これ、生データではないんですよね。諸外国の洋上、まあアメリカでも環境アセスで位置付けられたモニタリング調査のデータは提出が義務付けられていると承知をしておりますけれども、やはり生データの提出が必要ではないかと考えます。
 そしてさらに、こういう事業者が調査を行って、配慮書、方法書、準備書、評価書、そして事後報告書、こういう環境アセス図書というのがありますが、この継続的な公開の問題です。
 先ほどありました今国会に提出されている環境影響評価法改正案で、公開を制度化する内容になっておりますけれども、継続的に公開するかは、これは引き続き事業者の任意となっております。
 一般的な事業ではなくて、この洋上風力発電を再生可能エネルギーの主力電源化の切り札として位置付けて、知見が十分でないEEZにおいて、二〇四〇年までに三千万から四千五百万キロワット事業という、こういう目標を持つこの本事業で、それでいいのかと私は思うんですよね。長期的に掛かることもありますけれども、本事業ではやっぱり特に得られた知見を幅広く共有することが求められていると思います。
 環境アセス学会なども、そのことも求めているわけですね。アセス図書の継続的公開には、環境影響を予測評価する手法などの環境アセス技術の向上に役立つ、それから、生物多様性や気候変動などの長期的な課題との関係で環境アセスデータは時系列として重要な環境情報となる、そして、地域の開発史に関わる資料であって、歴史的評価の観点からも重要な意義があると環境アセス学会はしております。
 諸外国では提供義務を課していることも踏まえて、やはりこの本法の対象になる事業では、一般的ではなくて、環境アセス図書の継続的公開を行わせることが必要かと思いますけれども、環境省、いかがでしょうか。
○政府参考人(堀上勝君) 委員お尋ねのとおり、現在提出しております環境影響評価法の一部改正法案におきましては、効果的なアセスメントの実施や地域理解の醸成に資するために、事業者が作成したアセス図書について、あらかじめ事業者の同意を得た上で環境大臣が公開するということができる内容にしてあります。
 一般的に、事業者が作成するアセス図書は、著作権法上の著作物に該当する場合が多いということもありまして、事業者の同意を得ずに環境大臣がアセス図書を公開するということは著作権の侵害に当たるおそれがありますので、このような制度としておるところでございます。
 先ほどもお話ししましたけれども、今ガイドラインも作り、事業者に対してこれから、今年度公表ということでありますけれども、お示しをしていくということになりますので、そういったモニタリング等も含めて、意義については事業者の方々に是非御協力いただけるように丁寧にまずは御説明して、その御協力いただけるように努めていきたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 現行でも様々な情報は任意で出されておりますけれども、その継続的公開が事業者の任意になっているという下で、例えば二四年の十月現在でいいますと、環境影響評価法による法定アセスが行われた八百八十二事業のうち継続公開している事業は九十二事業、風力発電事業について見ますと、五百六十三事業のうち五十八事業にとどまっているわけですね。
 環境アセス学会の指摘やこのEEZの知見が十分でないということを踏まえ、そして諸外国でも提供義務を課していることを考えれば、例えばこの本事業について言えば、例えば入札の条件にするとか、そういうようなことも検討すべきではないかと思いますけれども、継続公開を、いかがでしょうか。
○政府参考人(堀上勝君) ちょっと繰り返しにはなりますけれども、先ほどもお話ししたとおりでありますが、このアセス図書の内容について、事業者が保有する知的財産ですとか、あるいはデータ提供による、データの提供による不利益とか、そういったことが生じる場合もある可能性がありますので、そういったところを整理して慎重に検討することが重要であると考えております。
 まずは、先ほどお話ししたとおり、ガイドラインをお示しをしつつ、今後のデータ提供の在り方については必要に応じて検討していきたいというふうに考えてございます。
○井上哲士君 環境アセス学会は、この著作権の問題でいいますと、市民の情報なども取り入れて関係者と知見を共有して作成される公的文書でもあるとも言えるという点で、それもクリアされるんではないかということも言われています。是非検討していただきたいと思うんですね。
 最後に、人材の育成と体制について聞きます。
 環境省のヨウリョウ風力発電に係る新たな環境アセスメント制度の在り方についての報告書はこう述べております。新たな制度では、国が環境アセスメント等の設計書を取りまとめ、事業者と適切な役割分担の上でモニタリングを実施し、モニタリング結果を蓄積、分析していくことなどの重要な役割を担うことになると、このような国の役割の重要性に鑑みれば、国が新たな制度を適切に施行できるよう十分な実施体制の整備及び強化に向けた検討を行うことが必要であると、大変重要な指摘だと思います。
 この広大なEEZ、いろんな今後調査や事業を進めていく上で、この環境省が担当する新たな仕事は、人材の育成、体制確保が不可欠だと考えますけれども、大臣、これどのように進めていくんでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 御指摘のとおり、調査のための実施体制を十分に確保することは重要であり、これ環境省のお話でありますが、本年度、新たに洋上風力環境調査室を設置をし、室長を含め四名の職員が業務に当たる予定と聞いております。また、調査の実施に当たっては、外部の専門的な人材、団体を活用していくことを始め、推進体制の強化については不断に検討していくということを承知しております。
○井上哲士君 まずは四名で環境省体制、室が始まるということでありますけれども、これでいいのかということがありますし、人材の育成は、第一回検討会でも議論をされているんですね。日本では、風力発電と自然環境の研究をしても、就職先がないから研究もされないし、人材も育たないと、こういう指摘もされております。
 まずは、国がモニタリングデータや環境アセス図書を一元化、公開を進めて、大学や研究者が自由に利用できる環境を提供して、こういう環境アセスの研究に取り組む人材を増やしていく、そしてさらに、国の体制も含めてしっかりとした体制確保、人材の育成進めていくことが不可欠だということを申し上げ、是非これ推進していただきたいということを最後申し上げて、質問終わります。

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