○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
政府のジェンダー平等社会に向けた取組についてお聞きいたします。
まず、先月二十五日に日本共産党の吉田紋華三重県議が発信したXの投稿に対し、女性蔑視に基づいた殺害予告を含む誹謗中傷の攻撃が行われていることについての政府の認識と対応についてです。
このXの投稿は、今日はいきなり生理になって困った、用があって寄った津市役所のトイレにはナプキンが残念ながら配置されていなかった、家に帰るまでにちゃんと対処できなかった、二十七歳でもこんなこと起こります、トイレットペーパーみたいに生理用ナプキンをどこにでも置いてほしいというものであります。
この発信に対して多くの共感の寄せられる一方で、誹謗中傷も多数書き込まれました。そして県議会事務局に、いい年して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田紋華議員を殺害しますという文言のメールが、同じアドレスで一分置きに八千件を超えて送信をされました。日本共産党三重県委員会にも大量の脅迫メールが成り済ましメールの形で送られております。
そこでお聞きしますけど、公共施設のトイレにナプキンの設置を求めるのが災害予告の対象になるようなことなのかということなんですね。必要な人に生理用品を提供することは日本共産党としても求めてきましたけれども、生理の貧困対策として国や地方自治体でも取り組んできているのではないかと、これ示していただきたいんです。同時に、その際に、内閣府の資料でも、自治体が取組を開始した理由として、生理による女性のストレスや不安の軽減を図るためということが挙げられております。つまり、経済的理由で生理用品を購入できない方への支援にとどまらず、女性の健康や尊厳に関わることとして取り組まれているのではないかと、まずこの点をお聞きいたします。
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、経済的な理由等で生理用品を購入できない女性がいるという生理の貧困につきましては、女性の健康や尊厳に関わる重要な課題と認識しております。
内閣府におきまして、地方公共団体が不安や困難を抱える女性に寄り添った相談支援の一環として行う生理用品の提供を地域女性活躍推進交付金により支援してございます。
令和六年十月時点で生理の貧困に係る取組を実施している地方公共団体は、独自の取組を含め九百二十六団体と承知してございます。生理用品をトイレ個室内に設置することですとか、意思表示カードなどを使用して声を出さずに利用できるよう配慮、工夫されている例もございまして、困ったときにはどなたでも利用できる環境を整えている地方公共団体もございます。
内閣府におきましては、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を凝らした取組を進めていただけますように、地域女性活躍交付金の活用を促しますとともに、地方公共団体における取組に関する情報提供を引き続き行ってまいります。
○井上哲士君 女性の健康や尊厳に関わる重要な課題だということでありました。
例えば杉並区も二〇二二年から全区立小中学校で生理用品の無料配布をトイレで行っておりますけど、岸本区長はXでこう述べているんですね。トイレットペーパーと同じように必要な人が入手できるようにという気持ちです、全ての人が尊厳を持って生理期間を過ごせるように取り組んでまいりますと、こうなっております。
かつては、急に催したときのために男女問わずにティッシュ持ち歩くのが当たり前でありましたけど、今ではどこでもトイレットペーパーが設置されているんですね。女性にだけ生理用品は身だしなみなどと称して負担が掛かることが当たり前でいいのかと思います。
今、初潮年齢が早まって、出産回数も減っているので、生涯月経回数が昔よりも格段に増えていると。専門家は、子供を五人、十人と産む時代では生涯で五十回ぐらいだったけれども、今は四百五十から五百回と推計されると、こう言われています。つまり、実に九倍から十倍なんですよ。経済的負担とともに、急に生理用品が必要になるという精神的負担が非常に長く多くなっているわけです。そういう点から、この生理の尊厳、女性の人権を守るという立場で取り組むことが必要だと考えます。
そこで、大臣にお聞きしますが、この点、吉田県議は、自分の体験を通じて性と生殖に関わる困り事、女性の尊厳に関わることを社会全体で福祉的に解決すべきことを問題提起したXだったと思うんですね。この性と生殖に関する困り事をタブーとせずに社会全体の問題として議論をしていくことは、リプロダクティブヘルス・ライツ、性と生殖に関する健康と権利として、国際社会では女性の基本的人権とされております。それに基づく発信を誹謗中傷して、殺害予告のメールまで送って攻撃すると、これは私は女性への人権侵害だと考えますけれども、男女共同参画大臣としての御見解、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 男女が互いの身体的性差を十分に理解し合い、人権を尊重しつつ、相手に対する思いやりを持って生きていくことが男女共同参画社会の形成に当たっての大前提であると認識しています。このため、リプロダクティブヘルス・ライツ、すなわち性と生殖に関する健康と権利に関する認識が社会全体で深まること、これが必要だと考えております。
委員御指摘の三重県における事案につきましては、警察において捜査が進められていると承知をしておりますのでコメントは差し控えさせていただきますが、一般論として、誹謗中傷や殺害予告といった社会通念を逸脱した脅迫などの言動は、人権を侵害するものと考えられ、許されるものではないと考えています。
○井上哲士君 この問題は、一般的脅迫にとどまらない、まさに女性の人権に関わる問題だということを是非強調しておきたいと思うんですが、さらに、一般的な人権侵害にとどまらないんですね。このいわゆる女性嫌悪とか女性蔑視と訳されるミソジニーが基づくものだと私は思います。これに基づいて、歴史的な家父長制の影響を受けた社会慣習に異議を唱えたり声を上げて行動する女性を嫌悪し、男尊女卑の規範を壊そうとする者を攻撃して黙らそうとすると、こういうものだと思います。
私、このミソジニーというのは、この男女共同参画社会とは全く相入れないことだと思うんですよね。大臣の認識、そしてミソジニーをなくしていくことの必要性や取組について、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 委員御指摘のミソジニーに関しては、政府として定まった定義はないものの、女性蔑視、女性差別などと和訳されることがございます。この女性蔑視、女性差別は、政府が第五次男女共同参画基本計画において掲げる、男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会の実現に沿うものではないと考えております。
女性蔑視、女性差別をなくしていくためには、性差に関する偏見を解消し、固定観念を打破するための取組や男女双方の意識を変えていく取組が極めて重要であり、あわせて、これは社会全体で男女共同参画社会の実現に向けた機運を醸成していくことも不可欠であります。このため、政府におきましては、男女の地位の平等感を始めとする項目について世論調査を行い、その調査結果を参考に、性差に関する偏見の解消ですとか固定観念の打破を図っているほか、性別による無意識の思い込みに関する調査研究結果の公表ですとか、職業生活、家庭生活での男女のフリーイラストの作成、提供により、男女双方の意識改革と理解の促進に努めているところであります。
引き続き、女性蔑視、女性差別の解消に向けて、あらゆる取組を粘り強く推進してまいります。
○井上哲士君 政府文書に今のところミソジニーという言葉は登場しないんですが、女性蔑視、こういうことは男女共同参画社会とは沿うものではないと、こういう御答弁がありました。是非その立場で更に進めていただきたいと思うんですが、その上で国家公安委員長にお聞きいたします。
警察庁は、この間の答弁で、この吉田議員への殺害予告メールについて、既に被害届を受理して捜査を進めており、三重県警察において法と証拠に基づいて厳正に対処されていると御答弁をされております。厳正な対処を私からも重ねて求めるものであります。
同時に、今述べましたミソジニーに基づく攻撃が行われているということが私大事だと思うんですね。吉田議員の投稿に多くの女性たちから共感の声が寄せられている。つまり、ミソジニーを受けても声上げることができなかったという女性がたくさんいらっしゃることと裏返しだと私は思うんです。ミソジニーによる多くの人権侵害がまだまだ放置されていると。
この間で、例えばヘイトスピーチなどが社会問題になる中で、警察もそれへの対応を強めてきました。このミソジニーに基づく脅迫行為などの人権侵害の実態、その動機、背景、こういうものを把握をして対応を強めていただきたいと思いますけれども、委員長、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 警察といたしましては、議員御指摘のミソジニーを含めて、この動機のいかんにかかわらず、脅迫等の違法行為に対しては法と証拠に基づいて適切に対応をすることとしております。
また、警察では、都道府県警察本部及び各警察署において相談を受け付けているほか、都道府県警察の総合窓口に設置している警察相談専用電話、シャープ九一一〇番や、都道府県警察のウェブサイトでも相談を受け付けるなど、女性が被害申告や相談をしやすい環境の整備に努めております。
いずれにせよ、警察としては、先ほども申し上げましたが、その動機のいかんにかかわらず、脅迫行為等については適切に対処するとともに、今後とも女性が声を上げやすい環境の整備に努めるよう警察を指導してまいります。
○井上哲士君 ある種、新たな社会問題だと思うので、是非、この動機や背景などの把握も含めて一層取組を強く求めたいと思います。
公安委員長、ここまでですので、結構です。
○委員長(和田政宗君) 坂井国家公安委員長におかれましては、退席なさって構いません。
○井上哲士君 続いて、同様に女性にだけ重い負担を掛けている女性トイレでの長蛇の列についてお聞きいたします。
私、二年前にもこの委員会で取り上げて大変多くの反応をいただきました。多くの公共施設で、男女のトイレのスペース全体は一緒なんですけれども、面積は。その結果、個室だけの女性と比べますと、男性の方の便器の数が多くなります。全国の駅などで七百か所以上を、公衆トイレの外には配置図がありますので、これで調べてこられた百瀬まなみさんによりますと、男性便器が女性の一・七六倍と。一方、女性は一回ごとの使用にどうしても時間掛かりますから、結果として女性にだけ長蛇の列ができます。これは不平等でもあるし、外出をちゅうちょしたり、職場での不便を強いられたり、女性の社会参加への妨げになっていると思うんですね。
トイレのスペースの面積が同じであればよいのではなくて、男女の待ち時間が平等になると、これこそが基準とされるべきだと考えますけれども、大臣の認識をお伺いします。
○国務大臣(三原じゅん子君) トイレは、男女を問わず全ての人にとって欠かせないものであり、使用したいときに使用できるということが当然重要であると考えます。
一般論として、各施設における男性用と女性用の便器の数については、通常、女性の方が長い利用時間を必要とされる事実や、男女別の利用者数などを考慮して、利用実態を適切に反映するなどにより、できる限り待ち時間の男女の平等化が図られるよう努められることが望ましいものと考えています。
○井上哲士君 二年前も当時大臣から同じ答弁をいただいたんですけど、なかなかまだまだ進んでおりません。
ただ、前回の質問の後に非常に重要な動きがありました。
昨年一月の能登半島地震の教訓を踏まえて、十二月に地方自治体向けの避難所の取組指針が改定をされました。その中で、避難所の国際基準であるスフィア基準について、これまでは参考にとどまっていましたけれども、満たすべき基準とされました。その理由と概要、いかがでしょうか。
○政府参考人(河合宏一君) 御質問にお答えいたします。
避難所において発災直後から尊厳ある生活を営める環境を整備することは大切でございます。委員御指摘のスフィア基準は、災害や紛争の影響を受けた人々への人道支援の国際基準を示しているものでありまして、確保すべきトイレの個数や一人当たりの居住スペースについて記載されております。その考え方は非常に重要だと考えております。
そのため、昨年十二月に、能登半島地震等も踏まえまして、自治体向けの避難所の指針等について、発災直後は五十人に一基のトイレ、女性用と男性用のトイレの割合が三対一、一人当たりの三・五平米の居住スペースの確保などのスフィア基準に沿った改定をしたところでございます。
引き続き、被災者が尊厳ある生活を営めるよう、良好な避難所環境の整備に向けた取組を進めてまいります。
○井上哲士君 被災者が尊厳ある生活を営めるようにする、大変大事だと思うんですね。私も能登も何度も行きましたけど、やはりトイレの数が足りなかったり、女性が使いにくいと。我慢をしたり、水を飲むのも控えたりということがこれまた健康悪化につながっているということだったわけですよね。ですから、まさにこれ、健康にとっても大問題だということであります。
前回が、私が取り上げたときには参考にとどまっていたのが満たすべき基準になったことは非常に重要だと考えているんですが、今ありましたように、この基準に沿って女性用と男性用の割合を三対一とするということでありますけども、これは、つまり男女のトイレ待ち時間を平等にするためには女性用が三倍必要だと、こういう認識だということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(河合宏一君) スフィア基準の方には、トイレを安心で安全にいつでもすぐに使用することができるように十分な数を設置するということが書かれておりまして、その結果、今、三対一、女性対男性となっておるところでございます。
これを踏まえまして、内閣府においても策定しております避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン、こちらにおいても、各避難所では、トイレの待ち時間に留意し、男女ごとの避難者数に見合ったトイレの個数と処理、貯留能力を確保することが重要であると記載しているところでございます。
また、平時の、一般の我が国の事業所の衛生基準というのもございまして、こちらでも、男性用大便所の便器数は六十人に一器、女性用の便所の便器数は二十人に一器と示されておりまして、やはり男女比は一対三となっておりますので、この基準は適切な指標だと考えております。
以上です。
○井上哲士君 今、様々なことがありました。
前回質問でも紹介しましたけども、厚労省の事務所衛生基準のあり方に関する検討会でも、女性便器の占用時間は男性小便器の三倍なので便器数も三倍が必要などと述べられております。
地方自治体や公共交通施設などで新築や改築などの機会でこの男女比の改善を進めることとか、大きなイベントなんかのときにやっぱり女性だけが並ぶということがあるわけで、これを改善することが、促進をすることが必要だと思うんですよね。前回の質問のときに、厳格な最低基準のようなものでなくても、この目安になるような男女比の考え方を示すべきだと求めたんですが、なかなか消極的な答弁でありました。しかし、災害時は、三対一を、これを満たすべき基準と今度格上げされたわけですから、日常的にも当然これが満たすことが必要だと思うんですよね。
そういう点で、是非、男女共同参画の立場から、明確なこういう考え方を目安として大いに広げていただきたいと思いますけども、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 令和二年五月に内閣府男女共同参画局が取りまとめた災害対応力を強化する女性の視点、男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドラインにおいては、避難生活において市町村等が取り組むべき事項として、女性用トイレの数は男性用トイレの数に比べ多くすることを挙げています。また、この防災・復興ガイドラインには、スフィアハンドブック二〇一八において、男性トイレと女性トイレの割合を一対三とすることが推奨されていることについても記載をしているところです。
公共の施設には様々なものがあり、平常時において一概に定量的な基準が当てはまるとは考えておりませんが、能登地震においても、平常時から男女別データを活用した災害対策の具体的な方法を確立することの重要性が指摘されております。
現在取りまとめを行っている調査報告書の公表などの機会を捉えて、男性用と女性用の便器の数に関し、通常、女性の方が長い利用時間を必要とされる事実や男女別の利用者数などを考慮して利用実態を適切に反映するなどにより、できる限り待ち時間の男女の均等化が図られるよう努められることが望ましいことを自治体に周知してまいります。
○井上哲士君 社会は変化し、認識も進んでいます。是非進めていただきたいんですね。
これまで男女共用だけだった東海道新幹線に、三月のダイヤ改正で女性トイレが設置をされました。今までは奇数号車に男女共用の個室が二つと男性用のトイレ一つだけだったんですけど、そのうち個室の一つを女性専用としたわけです。これ、女性の利用者の増加と女性が声を上げたことによって変化がしました。こういう社会参加と女性の声を上げることによって前に進んでいることをよりもっともっと前に進めるという点で、是非、男女共同参画大臣として、全ての女性が尊厳を持って暮らせるような後押しをしていただきたいと思います。
以上、終わります。
内閣委員会(生理用品設置普及求めた三重県議への脅迫問題、トイレ待ち時間の男女格差解消)
2025年4月15日(火)