○井上哲士君 日本共産党を代表し、児童福祉法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
法案は、切実な保育士不足に対応するためとして、これまで予算事業として実施されてきた保育士・保育所支援センターの法定化や、国家戦略特区に限って認められていた地域限定保育士を一般制度化するとしています。
保育士不足のそもそもの原因は、他産業と比べても著しく低い給与水準や、保育士一人でたくさんの子どもたちを見なければならない配置基準の不十分さ等、保育士として働きたくても働こうと思えない労働環境の劣悪さにあります。
そして、こうした状況は、公立保育園を削減し、規制緩和で保育の分野に営利企業の参入を拡大し、企業が人件費を削って利益を上げることを進めてきた保育政策の結果にほかなりません。
地域限定保育士の一般制度化は、これまでのこうした保育政策に、何の反省もなく、更なる規制緩和によって資格取得者を増やそうというものですが、保育現場の労働環境の抜本的な改善がされない下では保育士不足の解消には結び付かないことは明らかです。
また、地域限定保育士試験の判定事務を民間企業に委託可能としていることは、公的保育の非営利原則に照らしても容認できません。
小規模保育の対象年齢を三から五歳児のみでも可能とすることも問題です。
厚生労働省が国家戦略特区ワーキンググループヒアリングで、全国展開すべきでないと述べたように、そもそも必要性がないものです。
施設や職員配置基準は、保育所と同様の小規模保育所A型を想定しているとのことですが、満二歳以上の幼児を入所させる保育所の幼児一人につき一・九八平米以上とされている保育室、遊戯室の面積は、小規模保育所A型の場合、参酌基準であって、従うべき基準ではありません。大きな集団での保育になじめないなどの子どものニーズもあるとは言いますが、そのために規制緩和によって最低基準を引き下げてもよいなどということは許されません。
児童虐待への対応について、これまで児童虐待を行った保護者に対して可能とされている面会、通信制限を、児童虐待疑いでも可能とします。
これによって、一時保護施設への入所期間が長くなるなど、定員を上回る一時保護施設が一層増加することが予想されます。児童福祉司の増員が図られているとはいえ、ケアを必要とする子どもたちに十分手が届くような体制になっているとは言えません。
その下で、虐待疑いの場合の面会、通信制限の判断が子どもの最善の利益を考慮したものになるかについては懸念が残ると言わざるを得ません。
以上述べ、反対討論とします。
内閣委員会(児童福祉法改定案に対する反対討論)
2025年4月17日(木)