国会質問議事録

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内閣委員会(能動的サイバー防御二法案 総理質疑)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 総理は四月十八日の本会議で、政府による通信情報の取得、利用について、通信の秘密への十分な配慮が担保されていると答弁をされました。しかし、国民の広範な通信情報を政府が取得可能にするというこれまで許されなかった仕組みが一旦でき上がれば、通信情報の範囲や利用が今は一定制限されていても、今後どんどん緩和されていくことは目に見えていると思うんですね。実際、審議の中では、例えば対象外とされている内内通信も、今後、取得、分析するという可能性が否定されませんでした。
 こういう下で、NHKの世論調査でも、法案に反対と答えた人の四一%が、通信の秘密の権利が侵害されると思うからということを理由に挙げております。こうした国民の不安や危機感について、どう受け止めていらっしゃるでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 御指摘は恐らく、日本放送協会、NHKの世論調査、五月十日と、ものを御指摘になっておられるかと存じます。
 この法案に賛成の方が四三%、反対の方が二六%でございまして、で、その中でどうなんでしょうねということをお尋ねしたところが今御指摘のような数字になるわけかと思っております。法案に賛成の方四〇%、反対の方二六%ということでございまして、法案について賛成いただく方は相当程度上回っているというふうに承知をいたしておりますが、反対とお答えになった方の四一%の方が通信の秘密の権利が侵害されると思うからということを理由に挙げられておるということが委員御指摘の内容かというふうに考えておるところでございます。
 このような御懸念をお持ちの方々おられるということを我々真摯に受け止めていかねばならないのでございまして、本法案に基づきます通信情報の利用は、通信当事者の同意によらない場合でありましても、国、基幹インフラ事業者などの重要な機能がサイバー攻撃により損なわれることを防ぐという高い攻撃性があること、何人も閲覧などができない自動的な方法によって重大なサイバー攻撃に関係があると認めるに足りる機械的な情報だけを選別した上で分析をするなど厳格な手続、条件を定めておること、そして、独立性の高いサイバー通信情報監理委員会が審査や検査を行うこと、これらのことから、通信の秘密に対する制約が公共の福祉の観点から必要やむを得ない限度にとどまる制度と、このようになっておるものでございます。
 政府といたしましては、通信の秘密を尊重し、これを不当に侵害することがないよう、法律の規定を確実に遵守するということは当然のことでございます、そのように考えております。こうした法律の内容や制度趣旨につきましても、あらゆる機会を捉えて丁寧に説明をし、国民の皆様方の御懸念の払拭に努めてまいりたいと、このように考えておるところであります。
○井上哲士君 一旦仕組みができ上がれば、拡張していくという不安は払拭されません。
 政府は、目的外利用はあくまでも法目的の範囲内かつ協定当事者の同意の範囲内にとどまると答弁をしてきました。しかし、利用や範囲、利用の範囲や目的に関する同意について、協定当事者がこれらの事項を適切に理解した上で同意がなされるよう丁寧に協議すると答弁をしております。つまり、協定当事者の意向に政府が同意するのではなくて、政府の意向に同意をさせるということなわけですね。
 法目的の範囲内と言えば、結局、政府のさじ加減で様々に利用ができるということになるんじゃないでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) そのようなことはございません。つまり、この法案では、当事者協定を締結した事業者から同意がある場合には、いただいた通信情報から得られた選別後通信情報を特定被害防止目的以外の目的で利用、提供ができるということにしております。この目的外利用、提供は、法目的に照らして適当と認められる範囲において行われるものでございまして、さじ加減で好きなようにできると、このようなものでは全くございません。
 典型的には、サイバーセキュリティー対策に資する分析を行うため、協定当事者の同意を得て、関係行政機関のほか、サイバー攻撃の動向について知見を有する民間のセキュリティー会社などに通信情報を適用し、提供し、利用することなどを想定しているものでございます。
 その上で、同意に際しましては、選別後通信情報が具体的にどのような目的で利用、提供されることとなるのか、協定当事者が十分に理解しておることが必要でございまして、協定当事者とは、同意するか否かの確認に先立ちまして、事前に丁寧な協議を行っていくものでございます。
 この協議は、協定当事者の適切な御理解を確保するために行うものでございまして、これは同意を強制するものでは全くございません。同意しないことによって、協定の当事者に対して何らかの不利益が生ずることもございません。このような点につきまして御理解をいただいた上で適切に協議を行ってまいりたいと思っておりまして、そのような御懸念は御無用でございますが、このような機会に説明させていただけるのは有り難いことだと思っております。
○井上哲士君 コンピューターセキュリティーのための例えば威力業務妨害などへの対応も該当するということでありますから、やはりこれは広がっていく可能性を否定できないと思います。
 本会議で総理は、国外に所在するサーバー等に対してのアクセス・無害化措置を行うに当たっての違法性阻却事由として緊急事態を援用する場合も含めて、外務大臣との協議を通じて、国際法上許容される範囲で行うと答弁されておりますが、このサイバー行動に対する国際法の適用について、国際社会の現状がどのようになっているのか認識をされているのか。
 あわせて、日本は、このサイバー行動に適用される国際法に関する日本政府の基本的な立場として、サイバー行動が関わるいかなる国際紛争も、国連憲章第二条三に沿って、従って平和的手段によって解決されなくてはならないとしております。一方、在日米軍へのサイバー攻撃について、平時、有事にかかわらずアクセス・無害化措置を日本が行うという答弁もされております。この相手国から参戦したとみなされる危険がある、危険がですよ、高まっているにもかかわらず、戦争状態にある米軍のために日本がアクセス・無害化措置を行うということは、平和的手段による解決という日本の立場自体に反することじゃないかと思うんですね。
 このアクセス・無害化措置によって意図しない武力行使やエスカレーションといった重大な結果をもたらす可能性を拡大することにつながるのではないかと。これらの点についてはいかがでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 御指摘をいただきましたサイバー行動に関する国際法についてでございます。
 御指摘いただきましたように、これまでの国連における議論の結果、国連憲章全体を含む既存の国際法がサイバー行動にも適用されるということが確認をされておりまして、我が国も積極的に議論に参加をしてきたものでございます。
 現在、国連全部の加盟国が参加可能なサイバーセキュリティーに関する議論の場として、国連総会決議に基づき国連オープンエンド作業部会が設置をされておりまして、ここにおきまして、これまでの議論の成果を基礎としつつ、サイバー行動に関する国際法を含めまして、国家の責任あるサイバー行動に関する議論が行われております。
 その上で、例えて申し上げますれば、国際違法行為に対して一定の条件の下で対抗措置をとること、あるいは緊急状態を援用することは、サイバー空間における国際法の適用につきましても認められると。この点につきましては、地域を超えました複数国によって対外的に明らかにされておるところでございます。
 そういうことになっておりまして、このような国際社会における議論も含めまして、サイバー行動に適用される国際法に関する日本政府の基本的な立場といたしまして、国連憲章全体を含む既存の国際法はサイバー行動にも適用されると、このような認識を示しております。
 その上で、紛争の平和的解決に関しましては、サイバー行動が関わるいかなる国際紛争も国連憲章第二条三及び第三十三条に従いまして平和的手段によって解決されなければならないと、このように考えておりまして、このような基本的立場は変わりません。
 その上で、そもそも今般のアクセス・無害化措置は重大なサイバー攻撃による被害の未然防止、拡大防止を目的とするものでございまして、危害を防ぐために必要最小限度にとどまると、こういうような措置として行うものでございます。よって、紛争の平和的解決の義務はこのような措置までも一概に妨げる趣旨でもございませんし、日本政府の立場に反するものでもございません。我が国がアクセス・無害化措置を行うに当たりましては国際法上許容される範囲内で措置を行うと、当然のことでございます。
 我が国が国外に存在する、所在するサーバー等に対してアクセス・無害化措置を行うに当たりましては国際法許容する範囲内、許容される範囲内で措置を行うということでございまして、このような実施主体が警察庁長官又は防衛大臣を通じてあらかじめ外務大臣の協議を行うと、このような仕組みとなっておるものでございます。御懸念には当たりません。
○井上哲士君 時間ですので、終わります。

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