国会質問議事録

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拉致問題等特別委員会(日朝平壌宣言」に基づく拉致問題、核、ミサイル問題などの解決に向けた政府の外交姿勢)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 北朝鮮は、先週八日、日本海に向けて弾道ミサイルを発射いたしました。累次の国連安保理決議に反するものであります。
 我が党は、今回の発射を強く非難するとともに、更なる決議違反を繰り返さないこと、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉のテーブルに戻ることを改めて厳重に北朝鮮に求めるものであります。
 同時に、我が党は、日本政府に対して、この北朝鮮による軍事的挑発のエスカレートを抑え、日朝平壌宣言に基づいて拉致問題を含む両国間の長年の懸案を解決するためには、この北朝鮮との外交ルートの確立に向けた努力こそ急務だということも申し上げてまいりました。
 林大臣は、昨年の十二月二十三日のこの当委員会で私の質問に対して、石破総理も、日朝間の諸懸案を解決するため、もう一度日朝平壌宣言の原点に立ち返り、この機会を逃がすことのないよう金正恩委員長に対して呼びかけていく旨を述べているということを強調されました。その後、この対話再開に向けた政府の働きかけがどのようになっているのか、まず林大臣に伺います。
○国務大臣(林芳正君) 我が国の北朝鮮に対する基本方針、これは、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現すると、こういうことでございます。
 今御紹介いただきましたように、石破総理は、このため、もう一度日朝平壌宣言の原点に立ち返り、この機会を逃すことのないよう金正恩委員長に対して呼びかけていくと、こう述べるとともに、トップ同士が会談をして解決へ導かなければならないという強い決意を述べております。
 こうした総理の思いの下で、北朝鮮側に対して様々なルートで様々な働きかけ行ってきております。日朝間のやり取りの詳細については、今後の対応に支障を来すおそれがあるため、お答えは差し控えさせていただきます。
 いずれにいたしましても、政府としては、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸課題解決するため、総理自身の強い決意の下で総力を挙げて最も有効な手だてを講じてまいります。
○井上哲士君 様々なルートで様々な働きかけが行われてきているという答弁でありました。
 日朝平壌宣言に基づいて北朝鮮との対話再開に向けた取組を強めるということが日本政府の役割であり、その立場で米韓両政府にも働きかけると、そういう外交努力を強く求めたいと思います。
 政府は、この日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルという諸懸案の包括的解決ということを繰り返してまいりました。その一つである核の問題で岩屋外務大臣に伺います。
 先ほどもありましたけれども、トランプ米大統領は今年三月十三日、ホワイトハウスで行われたNATOのルッテ事務総長との会談の冒頭、記者団の取材に応じて、北朝鮮については明らかに核保有国だと述べました。続く三十一日にもホワイトハウスで記者団に対して、北朝鮮を大きな核保有国だと発言をしております。
 歴代アメリカ政権は、北朝鮮を核保有国とは認めてこなかったわけですね。日本政府として、このトランプ大統領の発言の根拠について、アメリカ側にただしているんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 御指摘のトランプ大統領の発言については承知をしておりますが、その一つ一つにコメントすることは控えたいと思います。
 その上で、北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであって、断じて認められるものではありません。政府としては、そのような認識の下に、米国側、米国政府とも緊密に意思疎通をしてきておりまして、二月の日米首脳会談、あるいは私が出席した二月及び四月の日米韓外相会合におきましても、北朝鮮の完全な非核化に対する確固たるコミットメントを確認をしてきております。
 今後とも、米国、韓国を始めとする国際社会とも緊密に連携協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めてまいります。
○井上哲士君 ただしたのかという質問には答えていただいていないんですね。一つ一つについては言及しないと言われましたけど、これ、あれこれの一つ一つの発言ではないんですよ。これまでの米政府と明らかに違う大変重大な発言だと思うんですね。
 トランプ大統領は記者団に対して、金正恩委員長はたくさんの核兵器を保有している、たくさんだと述べ、核保有国であることは間違いないと明言をしているわけですね。今述べられた日本政府の立場と明確に異なる、こういう発言だから聞いているわけであります。
 そして、日米の首脳会談を言われましたけれども、それ二月ですから、その後の三月にトランプ大統領はこういう発言をされています。その後、四月に日米韓の三か国の外相会談があったということのわけですよね。
 北朝鮮の完全な非核化を追求するということを確認してきていると言っていますけれども、例えば、アメリカ国家安全保障会議のヒューズ報道官が一月の二十八日の声明で、トランプ大統領は北朝鮮の完全な非核化を追求すると述べたんです。でも、その後にトランプさんは繰り返し述べているんですよ。
 ですから、これは政府、日本政府としては看過できない問題なわけで、きちっとやはりただすということが必要だと思いますが、この四月の三か国の外相会談のときにも確認をしていないということなんですか。
○国務大臣(岩屋毅君) 御指摘のトランプ大統領の発言については、先ほども申し上げたとおり、それについて一つ一つコメントすることは控えたいと思いますけれども、四月の日米韓外相会合、言うまでもなく、米側はマルコ・ルビオ国務長官、韓国趙兌烈外相、そして私ですが、その会合におきましても北朝鮮の完全な非核化に対する確固たるコミットメントを確認をしてきておりますので、今後ともこの米国、韓国としっかりと連携をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 そういったことに反することを大統領が言っているということはただすべきことだと思いますし、この間の関税問題を見ていましても、このトランプ氏がああいう形でやるということがどういうことを起こすのかということだと思うんですよ。
 かつ、これはトランプ大統領だけではありません。北朝鮮を核保有化という発言は、例えばヘグセス国防長官も、一月二十五日のアメリカ上院軍事委員会の指名公聴会に先立つ書面質問への回答で、北朝鮮が核保有国であることはインド太平洋地域、世界全体の安定への脅威だと記しているんですね。つまり核保有国だと言っております。コルビー国防次官も、昨年の五月、韓国メディアのインタビューに対して、北朝鮮の非核化は現実ではない、見込みもないと、こう断言をしております。
 そして、コルビー氏は、この北朝鮮の非核化の目標は示しつつ、米本土に到達可能なICBMの射程制限に焦点を当てて軍備管理を寄せたものにすべきだと、こういうような発言もされております。
 これはまさに完全な非核化を横に置くものでありまして、日本政府としては断じて容認できないと思いますけれども、そのことをはっきりと明言すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 繰り返しになりますけれども、北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて認められるものではありません。全ての大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄について、累次の安保理決議で規定をされているところでございます。
 そのことを前提に、二月の日米首脳会談、あるいは四月の日米韓外相会合において北朝鮮の完全な非核化に対する確固たるコミットメントを確認をしてきておりますので、今後とも、米国を始めとする国際社会と緊密に連携協力しながら、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めてまいります。
○井上哲士君 そうした一連の確認と違う発言が続いているわけですから申し上げているわけで、北朝鮮の核・ミサイル能力の高度化を前にして北朝鮮を事実上の核保有国と認めて核軍縮交渉を行うことは、核兵器禁止条約にも逆行しますし、NPTを形骸化させて核不拡散体制の崩壊にもつながりかねないことだと思います。
 困難はあっても、朝鮮半島の非核化を関係国の対話と交渉の最大の目標として揺るがずに堅持するべきだということを強く指摘しまして、終わります。

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