国会質問議事録

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内閣委員会(AI推進法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案は、基本理念に、AI技術は安全保障の観点からも重要な技術としております。今日は防衛政務官来ていただいておりますが、このAIによる殺傷兵器の開発、活用についてお聞きいたします。
 お手元に資料ありますように、今年の二月十八日に開かれたJGSDFフォーラムで森下陸上幕僚長が、陸上自衛隊の取組と今後の方向性と題して講演をしております。これ、二十二回目となるフォーラムでありますが、初めて防衛産業など産官学の参加が求められました。この講演の中で、お手元にあります、その理由を、将来戦には国家の総力による研究開発速度の向上が求められている危機感があるからだと強調をし、戦場の変化に適合するため、新技術を実戦投入するまでの時間短縮が不可欠だと、こう述べております。
 さらに、講演では、一枚目の右側でありますけれども、AI、無人化がもたらす戦い方は、従来の戦闘様式とは大きく異なる変化が予期されるため、新しい装備による各種能力や機能を駆使して、新たな戦い方を創造し、それを実現していくことが必要ですと、こういうふうに強調をしております。
 そして、これ別のページなんですけれども、今後、AIを搭載したドローンや自律型装備の活用が進み、監視、攻撃、防御の自動化や戦場のリアルタイム分析も向上するだろうと、こう述べております。
 そこで、防衛政務官、お聞きしますが、防衛大臣は本会議で、AIの有用性を最大化し、活用を進めていくと答弁いたしましたが、この講演で述べているように、このAIを搭載したドローンや自律型装備の活用という新技術を実戦投入するために防衛産業と一体で進めていくということなんでしょうか。
○大臣政務官(小林一大君) お答えをさせていただきたいと思います。
 委員御指摘いただきました、令和七年二月十八日の陸上自衛隊フォーラムにおける森下陸幕長によるAIを搭載したドローンや自律型装備の活用という発言は、我が国周辺の情勢等の変化を踏まえた戦闘様相の動向の説明における一例というふうに認識をさせていただいております。これは、諸外国を含め、今後、安全保障分野においてAIや無人アセットの活用が一層進んで、戦闘様相の在り方が変化していくことを説明させていただいたものだというふうに承知をしております。
 防衛省・自衛隊としては、AIや無人化技術を含む先端技術を活用し、防衛力の抜本的強化を進めていく考えであります。この際、防衛産業、特に優れた民生技術を有するスタートアップ企業等との連携を今後も強化をさせていただきたい方針であります。
○井上哲士君 防衛産業との連携を強めていくというお話でありますが、様相のあれこれの論評ではないんですよね。事実、これが進んでおります。
 お聞きしますけれども、これまで防衛省は、無人機を導入する際には、監視活動などに限っておりました。しかし、今年度初めて陸自に攻撃型の無人機の導入予算が計上されました。
 お聞きしますけれども、現在防衛省が保有する無人機の数、及び、そのうちミサイルなどの火器類を搭載する能力を保有している数はどうでしょうか。
○大臣政務官(小林一大君) お答えをさせていただきます。
 防衛省・自衛隊において、令和七年三月末現在で、偵察用を含む小型無人機等を約千六百機保有をさせていただいております。一方、いずれの機種も、ミサイルなどの火器類を搭載する能力は保有しておりません。
○井上哲士君 千六百あるけれども、火器類を保有する能力はこれまでゼロだったと。そこに今年度初めてこの攻撃型の、初めてですね、攻撃型の無人機の導入予算が計上されたと。これに講演で述べているような攻撃の自動化という能力が組み込むならば、これ重大な変化となると思うんですね。
 これ何を目指しているのかという問題でありますが、この資料の二枚目の左側を見ていただきますと、安保三文書に基づく将来の戦争の様相を示して、その上で、今後の陸自の強化に係る方向性として、アジリティー、それからリーサリティー、レジリエンシーの三つの方向性を高めると、こういうふうに明記をしているんですね。
 ちょっと、政務官、追加してお聞きいたしますけれども、リーサリティーというのは要するに殺傷性なんですよ。私は軍事分野では違う意味があるのかなと思ってAIで調べてみますと、一般に殺傷性を意味する言葉ですと、軍事においては兵器や軍事作戦がどれだけ高い殺傷力を持つかを示す際に使われますと、こうなっております。
 つまり、これが三つのこれからの方向性の一つに明記してあるということは、私本当に重大だと思うんですね。要するに、講演で述べているのは、陸自全体の殺傷性を高める、そのためにAIを活用した殺傷性の高い自律的兵器を導入することに国家の総力を結集をすると、こういう意味になるんじゃないですか。政務官、いかがですか。
○大臣政務官(小林一大君) どのような、お答えをさせていただきたいと思います。
 どのような形の防衛装備品を入れるかは、我が国周辺の情勢等の変化を踏まえた戦闘様相、先ほど申し上げましたけれども、戦闘様相や国際人道法を含む国際法及び国内法等の観点から適切に判断を確保するといったことを総合的に考慮し、今後検討しなければならないというふうに承知をしております。
○井上哲士君 いや、今後の検討じゃなくて、今後の方向性ともう言っているんですよ、陸上幕僚長は。
 このフォーラムには金子政務官が参加をしているわけですね。防衛省として当然承知をしていると思うんですが、こういう言わば殺傷性を高めるということが陸上自衛隊の方向性だということ、防衛省の方針でいいんですね。
○政府参考人(家護谷昌徳君) 防衛省としましては、そのAIや無人化技術を含む先端技術を活用して、防衛力の抜本的強化を進めていく考えでございます。
○井上哲士君 一般的な抜本的強化じゃないんです。殺傷性を高めると明確に言っているんですよ。
 これは単に、突然出てきたものではありません。今年三月末の日米防衛相会談の会談後の記者会見で、ヘグセス・アメリカ国防長官は、日本が必要な能力について正しい決断をすることを確信していると、緊密に協力しながら共に戦闘力、殺傷力、即応力を高めることを大きく期待していると会談後の記者会見で述べているんですね。
 アメリカから殺傷力を高めるということを求められたんじゃないですか。
○政府参考人(家護谷昌徳君) リーサリティーという単語につきまして、確かに殺傷力というように日本語に解されるというふうに思います。
 他方で、一般的に、防衛省なり米軍との協議の中で使われる意味としましては、お互いのその能力を高めていくことの一環としてのリーサリティーというような形で使われておるところでございます。
○井上哲士君 そういうことを言われるんじゃないかと思って、私はAIで調べたんですね。例えば、ある兵器のリーサリティーが高ければ、それだけ多くの敵兵を殺傷できる可能性を示唆します。まさに殺傷力を高めるということが明確なんですよ。それを目指すと、アメリカも要求をしていると。これは本当に重大だと思いますよ。その中にAIが位置付けられていると。
 殺傷力を高めるということは、防衛省としては考えてないということなんですか、政務官。
○政府参考人(家護谷昌徳君) 一般的に、殺傷力が高まりますと、我々のその人的な損害というのが減少するという意味で、殺傷力を高めるということも一つのアイデアだというふうに考えております。
○井上哲士君 一つの方向だということを認められました。殺傷力を高めると、そのためにAIの活用を言われているわけですよ。
 昨年七月の防衛省のAI活用推進基本方針では、重点的にAIを活用する七分野の第一に、目標の探知、識別が掲げられておりますが、一方、安保三文書によって敵基地攻撃を可能とし、その能力の保有が今進められております。
 お聞きしますが、この基本方針の第一の目標の探知、識別というのは、敵基地攻撃の際の相手の国の施設や人物なども含まれるということではありませんか。
○大臣政務官(小林一大君) お答えをさせていただきます。
 昨年の七月に発表させていただいた防衛省AI活用推進基本方針における七分野でございますけれども、AIの機能や特徴を踏まえつつ、防衛省では、既に進行しているAIを使った取組、また他国でのAI活用事例、並びに国家防衛戦略や防衛力整備計画で示されている具体例を踏まえさせていただいて、防衛省の所管、所掌事務や自衛隊の任務に照らして活用分野について整理を行い、七つの分野に大別をさせていただいたものであります。
 このうち、委員が今御指摘をいただいた目標の探知、識別については、レーダー情報や航空画像情報など多岐にわたるセンシング情報や、装備品等の高性能化に伴う目標情報の増大に対応し、目標の探知、識別能力の向上や迅速化を図るために、AI技術を活用する等の取組を念頭に記載をさせていただいたものであります。
 また、反撃能力にはスタンドオフ防衛能力等の自衛隊の能力を活用することとしていますが、スタンドオフミサイルの運用に係る具体的な要領等については、現在検討をさせていただいているところであります。
 いずれにしましても、防衛省・自衛隊としては、AI技術を適切に活用して、防衛力の抜本的強化を今後も進めていく所存であります。
○井上哲士君 かつて、敵基地攻撃能力に何が必要かと、当時の防衛、河野大臣に質問しましたら、幾つかの要素がありますけれども、相手の基地であるとか、そういう施設、そういう場所などをしっかり把握をするということが一つの要素だと、こういうふうに言われたわけですよ。
 ですから、私がお聞きしますのは、そういう相手の施設であるとか人物などもこの目標に含まれるんではありませんかということを聞いているんです。
○大臣政務官(小林一大君) 繰り返しになって誠に恐縮でありますけれども、防衛省AI活用推進基本方針におけるAIを重点的に活用する七分野のうち、目標の探知、識別は、レーダー情報や航空画像情報の、など多岐にわたるセンシング情報や、装備品等の高性能化に伴う目標情報の増大に対応し、目標の探知、識別能力の向上や迅速化を図るために、AI技術を活用する等の取組を念頭に置かせていただいたものであります。
 反撃能力にはスタンドオフ防衛能力等の自衛隊の能力を活用することとしておりますが、スタンドオフミサイルの運用に係る具体的要領等については、先ほども申し上げたとおり、現在検討中であります。
 その上で、防衛省・自衛隊として、専ら反撃能力のための独自の防衛力整備を行ってきているわけではないことについては、御理解をいただきたいと思います。
 いずれにせよ、防衛省・自衛隊としては、AI技術を適正に活用し、防衛力の抜本的強化、進めてまいります。
○井上哲士君 結局、ですから、アメリカなどからいろんな情報をもらわないと目標も定められないということだと思うんですが、いずれにしても、これに識別、探知、識別をする目標に相手の施設や人物などは含まれないということは、二度同じことを言われましたけれども、答弁はございませんでした。
 ですから、米国からこの殺傷力などを高めるという要求を受けて、相手国内も含めて攻撃目標の探知や識別を行うこともあり、そして殺傷能力を持つAI兵器の開発を進めるということが私はこの陸上幕僚長の講演の中身だと思うんですよ。
 これ、実際、防衛省とアメリカ国防省は、二三年十二月に、無人航空機に適用するAI技術に係る日米行動研究に関する事務取扱取決めに署名をしております。この点について衆議院では、パイロット等の指揮の下、自律的に行動するためのAI技術について、日米共同研究を実施していると答弁がありました。
 ここでお聞きしますが、この間、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性兵器の開発を行う意図は有していないと繰り返し答弁がありましたけれども、ここで、衆議院で答弁しているように、完全自律型ではないけれども、パイロット等の指揮下であれば自律型の致死性の兵器は開発をするんだということなんですか。
○大臣政務官(小林一大君) お答えをさせていただきたいと思います。
 自律型致死兵器システム、いわゆるLAWSでありますけれども、LAWSについては、その定義、特徴、国際人道法上の課題、規制の在り方等について、今まさに国際的な議論が行われているというふうに承知をさせていただいております。
 その上で、人間の関与の在り方にとって重要な点は、指揮官等が意図した形で兵器システムを運用できる状態を確保することだというふうに考えています。人間の関与は、兵器システムの使用に対する責任の明確化の前提となるものでありまして、また、兵器システムの意図しない動作を予防又は是正する手段を確保するためにも極めて重要であります。
 この観点から、人間による責任ある関与の下で指揮官等が使用する兵器システムに関する情報を十分に掌握して、国際人道法上を、国際人道法を含む国際法や国内法、安全保障の観点から適切な判断を確保することが必要であるというふうに考えています。
 防衛省としては、装備品の取得や研究開発を行っていくに当たり、この考え方には基づいてしっかりと適切に対応してまいりたいと思います。
○井上哲士君 かつて一つの戦闘機の周りに複数の自律型の戦闘機が編隊を組むような図も私見たことがありますが、今のお話でいっても、要するにパイロット等の指揮があるならば、そういう自律型の致死性の兵器の開発については否定をされなかったと思うんですね。
 AIを使った自律型兵器というのは、重大な問題が世界でも指摘をされてきました。民間人の殺害や病院、学校の破壊など、国際法に違反する行為があったときに一体誰が法的な責任を負うのかが不明確です。それから、この誤作動や判断ミスがあると。
 先ほど、この致死性の高い武器を持てば兵士の死傷者を減らせるという趣旨の主張がありましたけれども、それが逆に戦争の安易な開始を助長することになると、こういうことが指摘されて、国際的にも規制の議論がしてきたわけです。私は、この半自律型であってもこうした問題は同じことが起きると、こう思うんですね。
 そこで、城内大臣にお聞きいたしますが、この間、殺傷兵器に使われるAIの研究開発、活用についてはこの法案では想定をしていないという答弁が繰り返されてきましたが、一方、今のやり取りにありますように、防衛省は、この殺傷兵器に使われるAIの研究開発、活用をまさに国家の総力を挙げた研究開発速度の向上、これを陸上幕僚長も掲げて推進をしているわけですよ。ですから、この法案がそうした自律的な致死性兵器の研究開発、活用を促進するものになるのではないかと。
 私は、憲法九条を持つ国として、こうした殺傷兵器へのAI技術の使用は禁ずるべきだと思っておりますけれども、大臣の御見解をお聞きします。
○国務大臣(城内実君) 今回のこのAI法案は、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的としているものであります。AI技術はデュアルユースでありまして、その技術が経済社会のためになり、また安全保障のためにもなるという両方の可能性がありますが、専ら兵器に使われることを目的とするAIの研究開発及び活用の推進につきましては、私どものこの内閣府の法案では想定しておりません。
○井上哲士君 想定はしていないなんて言われますけどね、こういう推進をするということが、結局、専ら兵器に使われる、そういうAIのことの促進になるということを申し上げておりまして、明確に政府としてこういうような殺傷兵器へのAI技術の使用を禁ずるという姿勢を示すべきだということを繰り返し申し上げておきたいと思います。
 防衛省、ここまでですので、政務官、ここまでで結構でございます。
○委員長(和田政宗君) 小林防衛大臣政務官におかれましては、退席なさって結構です。
○井上哲士君 続いて、AIの推進と著作権の擁護について聞きます。今日、何人かからも御質問がありました。
 まず文科省、お聞きしますが、この著作権法の第一条は、文化的所産の公平な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すると規定をしておりますが、この著作者の権利をなぜ保護するのか、その理由、そしてその権利保障がなぜ文化の発展に寄与するということなのか、まずお述べください。
○政府参考人(中原裕彦君) お答え申し上げます。
 著作物は、人間の知的、精神的活動の所産でございまして、文化の形成とその発展の基盤を成すものでございますため、著作物の無許諾利用を防止できるよう、創作者の権利を保護する必要があるということでございます。その一方で、公益性の高い利用など、一定の場合には、広くその活用の道を開いて社会一般の利用に供することが必要でございます。
 このように、著作権法は、適切な権利保護によって創作の促進を図り、権利の制限によって公正な利用を確保することで文化の発展に寄与するということを目的としてございます。
○井上哲士君 公正な利用で文化の発展に寄与すると、こう言われましたけれども。
 二〇一八年の著作権法の改定で、著作物権利者の権利規定を柔軟化する規制緩和が行われました。AIの学習目的であれば、原則、著作物の収集を権利者の許諾なく行うことが認められることになりました。
 実際は、この規制緩和によって、この公正な利用を促進することと権利者の利益を保護することという当時の文化庁次長の答弁と違って、AIを利用する事業者によって、ネット上で公表されている新聞記事やイラストなどの著作物が権利者の許諾なく収集、利用されることが広がっているのが実態だと思いますけれども、城内大臣、現状への認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(城内実君) お答えします。
 著作権法につきましては私の所掌でないため、可能な範囲でお答えさせていただくことを御了解いただきたいと思います。
 御指摘の平成三十年、二〇一八年の著作権法改正におきましては、著作権者に不利益を及ぼさないものや及ぼし得る不利益が軽微なものについては権利者の許諾なく著作物の利用を可能とする一方で、権利者の利益を不当に害することとなる場合には権利者の許諾を必要とするなど、権利者の保護に配慮しつつ、著作物の利用の円滑化を図るため、柔軟な権利制限の規定が整備されたものと承知しております。
 その上で、御指摘のような権利者の懸念の声があることも踏まえまして、昨年三月に、文化庁におきまして、AIと著作権に関する考え方について、これが取りまとめられました。例えば、生成AIとの関係で、著作権者の利益を不当に害することとなる場合の解釈に当たって一定の考え方を示すなど、著作権の権利の実現を図っていく上で有益な内容となっております。
 現在、文化庁では、分かりやすい形での周知啓発に取り組んでいると承知しており、こうした考え方につきまして関係者の理解醸成を図るための取組は、権利者の懸念を払拭していく上でも重要であると考えております。
 いずれにいたしましても、著作権法では、著作者等の権利利益の保護と著作物等の公正、円滑な利用とのバランスを踏まえた制度設計がなされているものと承知しており、文化庁において引き続き同法の適切な運用が図られていくことが重要であると考えております。
○井上哲士君 バランスとかいろいろおっしゃるんですけど、やっぱり、結局この権利規定の柔軟化が、適用範囲が抽象的で判断が困難になると、その結果、司法の場に判断が委ねられることになって、もう泣き寝入りをせざるを得ないという方が増えているというのが実態だと思うんですよ。
 裁判を起こさないと著作物権利者の権利が守られないという環境ができちゃって、かえって不公正な著作物の無断利用が助長されたのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(城内実君) 今お答えしたとおり、私どもこの著作権法の所掌ではないんですが、いずれにしましても、権利者の保護に配慮しつつ、著作物の利用の円滑化を図るための重要な権利制限の規定が整備されたものと承知しておりますが、いずれにしても、個々の事案についてはそれぞれ司法の場において判断がなされるものというふうに理解しておりますが、こういった著作権法の問題については、また文化庁とも緊密に連携しながら、特に、特に個別具体的な事案につきましては、関係省庁会議等の場でも議論をするなり情報共有するなりして取り組んでまいる考えであります。
○井上哲士君 個々の技術者とかだけでないんですよね。日本新聞協会も声を上げております。二月に政府に対して行った意見書はこう述べております。
 文化審議会がAIと著作権に関する考え方で整理した法的ルール、新聞社のウェブサイト上の報道記事の収集、読み取りを拒否を表明する技術的な措置を講じていれば、生成AI事業者が無断で記事等を複製した場合は著作権侵害に当たる可能性があると、こうあるのを踏まえて、新聞協会は大手プラットフォーム事業者に対して開示を求めたものの対応されなかったと、もうデータの収集、利用状況が把握できず、契約の前段階でつまずいていると、こういうふうに新聞協会も述べているわけですよ。
 まさに、さっきの答弁と違って、ガイドラインでは対応できない事案が広がっているというのが実態ではありませんか。重ねてお願い。
○国務大臣(城内実君) 今、井上委員から御指摘ありましたように、日本新聞協会からそのような御意見をいただいているものと承知しております。
 報道機関がコストを掛けて取材し制作したコンテンツが無断でAIの学習に利用されたり、そのAIが報道機関に代わって情報提供を行うことにより、報道機関の経済的不利益につながる可能性が指摘される一方で、AIの活用により多量の情報を瞬時に処理することができるなど、従業者の業務負担の軽減につながるといったメリットが指摘されていることも承知しております。
 私自身は報道機関を所管する立場にないため、報道機関の業務にAIを活用した場合の影響についてこの場で見解を示すことは差し控えたいと思います。
 なお、万が一日本新聞協会が懸念するようにAIの活用に伴って国民の知る権利に対する侵害が生じた場合には、本法案に基づきAI戦略本部が調査や情報提供を行うなど必要な措置を講ずることで適切に対処する考えであります。
○井上哲士君 万が一と言われましたが、今もう既に広範に起きているというのが新聞協会の皆さんの指摘していることなんですね。
 ですから、現行の法体系がもう生成AI時代に沿ったものとは言い難いと新聞協会は指摘をされておりまして、もうAI事業者による自主的な取組やガイドラインなどのソフトローでは対処、対応し切れないとした上で、二つ言っています。
 一つは、無断学習を認める著作権法を改正し、事前に権利者からの許諾を得ること、自らの著作物が学習データに使われているかどうか開示請求できる権利を明記するなど、著作権法の改正を始めとしたこの生成AI時代に沿った法整備を政府全体で打ち出すべきだということでありますけれども、これについてはいかがでしょうか。
○国務大臣(城内実君) お答えします。
 AIと著作権の関係につきましては、クリエーターなど著作権の懸念の、済みません、クリエーターなど権利者の懸念の声を受けまして、昨年三月に文化審議会の小委員会におきまして、AIと著作権に関する考え方についてが取りまとめられております。
 その中では、権利者の懸念を払拭する観点から、AI学習のための著作物の利用であっても、例えば意図的に学習データに含まれる著作物の創作的表現を出力させることを目的としている場合など、事前に権利者から許諾を得ることが必要な場合があり得ることなどが示されております。
 また、昨年五月に内閣府が公表いたしましたAI時代の知的財産権検討会中間とりまとめ、これにおきましては、AIと知的財産権をめぐる課題への対応においては、法、技術、契約の各手段を適切に組み合わせて対応することが重要であることをお示しした上で、例えば画像に特殊な処理を施すことにより学習を妨げる技術など、自らの著作物が無断で学習データに使われることを防ぐための技術を紹介しております。
 いずれにしましても、著作権法につきましては、文化庁の所管であるため、その改正について私からこの場でコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、内閣府としては、文化庁とも連携しつつ、これまでにAIと知的財産権をめぐる課題に関して取りまとめた内容の周知を行うとともに、事例の集積やAIに関する技術の発展、諸外国における検討状況の進展などを踏まえながら、必要に応じて具体的な対応を検討してまいる考えです。
○井上哲士君 被害が拡大してからではなくて、まずは現状を把握して積極的な調査を行う必要があると思いますが。
 最後、様々な調査、実態把握が言われておりますけれども、このAI開発、利活用事業者の実態把握やガイドラインが遵守されているかの点検など、計画的、網羅的に調査を行うべきだと思いますが、そういう調査の人員体制や調査対象となる事業者はどこなのか、調査計画についてはどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(城内実君) お答えします。
 本法案第十六条に基づく調査研究等の詳細につきましては、その内容や方法、実施体制等について現在検討を進めているところでありまして、この場で詳細を説明することは現時点でちょっと難しいなというところでございますが、現時点で想定される調査としては、例えば、企業等におけるAIの活用に関する実態調査、技術発展や社会解決課題に貢献する先進的なAIの研究開発、活用などの動向調査、国民の権利利益の侵害に関わる悪質な事案に対する調査などが考えられます。
 いずれにしましても、本法案が成立した暁には、本調査の実施が、我が国における安全、安心で信頼のできるAIの研究開発及び活用の推進に向けて意義あるものとなるよう、有識者の皆様からの御意見も伺いつつ、関係省庁とも連携しながら適切に検討を進めてまいる考えであります。
○井上哲士君 時間です、終わりますが、必要な人員をしっかり取って、実効ある対策を取っていただきたいと思います。
 終わります。

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