国会質問議事録

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内閣委員会(AI推進法案に対する反対討論)

○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、AI推進法案に対し、反対の討論を行います。
 急速に発展するAIは、多分野で深刻な問題を引き起こしています。大量の個人情報の収集、分析、漏えいによるプライバシー権の侵害、学習データによっては、間違いや偏った判断を下すAIが、人間にもたらす差別や不利益、著作権などの知的財産権の侵害、偽情報、誤情報の流通、選挙や世論誘導、軍事利用、大量の電力消費による地球温暖化への悪影響などです。
 今必要なのは、AIの発展に遅れることなく、予防的な観点も含めて、権利保護の強化やリスクに応じた規制を行うことです。AIに関する意識調査を見ても、現状はAIを安心して利用できる環境にない、規制が必要だというのが多数の声です。それにもかかわらず、本案はAI推進一辺倒です。
 法案は、AIの機械学習用のデータセットを整備することを国の責務とし、情報の対象は、国、研究開発法人、大学に及び、個人情報も含まれます。自治体の責務規定、国民の責務規定まで盛り込み、行政、学術、国民の広範な情報をAIの研究開発、活用のために整備、提供することを促進するものです。プライバシー権侵害の危険性を高めるものだと言わざるを得ません。
 また、国の責務として、行政事務の効率化のためAI技術の積極的な活用を進めると明記しています。AIにはリスクがあり、判断を委ねる利活用には慎重な対応が必要です。
 さらに、法案がAI技術を安全保障の観点からも重要と位置付けていることは重大です。審議では、自衛隊の陸幕長が講演で、陸自の強化方向として殺傷性の強化を挙げ、AIを搭載した自律型兵器の活用の必要性を述べていることが明らかとなりました。法案は、殺傷兵器の研究開発、活用も含めてAIを推進するものであり、認められません。AIの軍事利用は禁止することを求めます。
 法案の基本理念で、AI技術の研究開発、活用を、産業の国際競争力を向上させることを旨に行うと掲げているとおり、AI技術を、国民の権利を守り、生活や福祉を向上させるためではなく、産業界の利益のために使うことを推進するものです。だからこの法案には、実効性のある新たな法規制がないのです。
 AI推進一辺倒では、国民の権利を侵害し、社会への悪影響を拡大させる危険を高めるものだと言わざるを得ないことを申し述べ、反対討論とします。

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