○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、法案審議の前提である任命拒否問題について大臣にお聞きいたします。
政府は、一九八三年の法改正当時の、内閣総理大臣の任命が形式的であるという国会答弁で確定した解釈を、二〇一八年に政府内部の検討で、国会にも示さずに、推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと一方的に勝手に覆して、六人を任命拒否をいたしました。
こんな一方的な解釈変更が許されるならば、政府がこの委員会でどんな答弁をしようとも後で覆ってしまうと、全く信用できないということになるわけですね。これでは国会審議の意味がなくなると思いますが、大臣、いかがですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(坂井学君) これまでも国会で御答弁申し上げているとおり、公務員の選定、罷免権が国民固有の権利であるという考え方に照らせば、国家公務員である日本学術会議の会員任命に当たって、任命権者たる内閣総理大臣が学術会議の推薦どおりに任命しなければならないというわけではないと承知をしております。
このことは政府としての一貫した考え方であり、解釈変更がなされたわけではないということはこれまでも国会審議等の場で内閣法制局からも繰り返し答弁がなされているものと承知をいたしております。
○井上哲士君 同じ答弁繰り返されるんですが、日本学術会議事務局と内閣法制局の間で、二〇一八年九月から十一月にかけた、行われた解釈変更の検討過程を示す文書、検討文書と呼びますが、一部黒塗りでしか開示されておりませんけど、開示された部分を見ますと、明らかな解釈変更が明らかになるんですよ。
九月二十七日の検討文書では、こう書いてあります。内閣はこの推薦に拘束され、単に国家公務員たる会員の身分を確定させるために形式的に任命しており、内閣総理大臣に拒否の権能はないものと解するのが相当であると明記されているんですね。つまり、これが国会答弁に基づく当時の解釈であり運用だったということではありませんか。一九八三年の法改正時から一貫した解釈ではなくて、この検討を経て解釈が変えられたということじゃありませんか。
○政府参考人(相川哲也君) 事務局で作成した文書に関する御質問でございます。
一般的に、行政庁間における協議過程で作成された文書は、担当者が作成した試論段階の記載やその他参考となる情報が記載されることがあり、そういった意味において、本件文書には、平成三十年十一月十三日付け資料最終版には記載されなかった未成熟な記載が含まれております。
このような未成熟な記載の部分が最終版を作成する過程において変更されたり削除されたりしたものでございます。
○井上哲士君 そういういいかげんな答弁やめてほしいんですよ。
いいですか、先ほど九月二十七日の文書のことを言いましたけれども、それが検討を通じてどんどんどんどん変わっていくんですよ。
十月十九日付けの文書では、内閣総理大臣は、日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があるのであって、実質的な任命権は日本学術会議にあり、内閣総理大臣の任命権は形式的なものとなることが期待されていると。形式的と期待されていると、こういうことになりました。ところが、今言われた十一月十三日の文書では、この形式的という総理が国会で答弁した言葉もなくなるんですよ。そして、任命拒否ができないとは言えないという言葉になったんですよ。
何でこの形式的という言葉、総理が国会の法案審議でやった言葉を何で削ったんですか。
○政府参考人(相川哲也君) お答え申し上げます。
形式的な任命のという部分について、最終的な段階の文書のところでは入っていないということにつきましては、御指摘のとおり、そこの点については先ほども申し上げました未成熟な記載の部分であって、協議の過程において変遷をしたものと、修正されたものというふうに認識しております。
○井上哲士君 じゃ当時、当時総理が未成熟な答弁したというんですか。めちゃくちゃですよ、そんなのは。こんな勝手な解釈変更許したら、国会審議が意味ないことになるんですよ。与党の皆さん、こんなことでいいんですか。答弁したって変わっちゃうんで、知らないうちに。私はこんなこと許せないと思いますよ。
さらに、大臣は、二〇二〇年の任命に当たって、学術会議が推薦名簿を提出する前に、事務局を介して、これまでと同様に学術会議の会長と任命権者との間で意見交換が行われたが、任命の考え方のすり合わせまでには至らなかったと答弁をされております。
これも追加して聞きますが、しかし当時の山極会長は、杉田官房副長官と直接会うことも電話で話をすることも事務局長を通じて断られた、話し合いたいとの官邸からの誘いもなかったと述べたことが報道をされております。この学術会議の会長が会いたいと言うのを断って、全く耳を貸さずに、官邸側が一方的に外すべき者と任命拒否した六人のリストを示したわけですよ、あのバツ印の文書をね。一体これが、どこが会長との意見交換だと、大臣答弁で言われましたが、何がこれが会長の意見交換なんですか。
○国務大臣(坂井学君) これまでも御答弁申し上げているとおり、日本学術会議から推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長と任命権者との間で意見交換が行われていたが、令和二年十月の任命に当たっても、これまでと同様に、推薦名簿が提出される前に事務局を介して意見交換が学術会議の会長との間で行われたものの、その中で任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと承知をいたしております。
○井上哲士君 だからその答弁について聞いているんですよ。現に会長が、事務局長を通じて当時の杉田官房副長官と会うこと、電話で話すること、求めたけれども断られたと言っているんですよ。これでは会長とのこの意見交換にならないじゃないですか。どこが意見交換なんですか。
○国務大臣(坂井学君) 具体的にどなたと会ったか、そしてそこでどんなやり取りがあったかについては、これは人事のプロセスに関することであり、お答えを差し控えたいというのがこれまでの政府のスタンスであり、ここは御理解をいただきたいと思います。
○井上哲士君 理解できません。人事だからこそ公正なプロセスが必要なんですよ。そして、会長との意見交換と言っているんですよ。それが誰とやったか分からないと。そんなことあり得ないですよ。
ですから、もう政府が一方的に法律の解釈を変更し、それを根拠に任命拒否をして、学術会議会長の面談要請も拒否して、そして一方的に拒否リストを出したわけですね。しかも、この任命拒否の理由も経緯も示されておりません。こんな下では私は、そしてその下でこの会員が欠員になっているという違法状態が続いているんですよ。これ放置したまま審議をする前提を欠くということを強く言いたいと思うんですね。
しかも、この法解釈は一方的に変更されましたけれども、それでも任命拒否できるとは最終文書には書いてありません。書けなかったと思うんですよ。こう書いているんですね。推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと。限定的な表現をしております。
ところが政府は、あの六人の任命拒否に当たりまして、総合的、俯瞰的な見地から判断という全く無限定な理由を示したんですよ。しかも、なぜ六人を任命したら総合的、俯瞰的に反するのかと、この理由の説明も何もされておりません。これが許されるなら誰だって、あなた俯瞰的、総合的に外れると言いさえすれば誰だって排除できることになるんですよ。
先ほど来、途中経過を開示すると混乱が起きるという答弁がありましたけれども、逆なんですよ。不開示にされているから不信が広がっているんですよ。
東京地裁も、先日の判決で、この不開示部分が内閣総理大臣による会員の任命ないし任命拒否権の限界を考えるに当たり有用な資料だと、こうして開示を命令をしたわけですね。
この不開示部分には、任命拒否できる場合の判断基準や要件などが記載されているんじゃないか、それに反することを現にやっているから開示ができないと、そういうことじゃありませんか、大臣。
○国務大臣(坂井学君) 今御指摘の当該部分につきましては、情報公開法の不開示事由に該当すると判断したことから不開示とさせていただいているところでございます。
○井上哲士君 だから、東京地裁はこう言っているんですよ。国民主権の原理から、現時点で整理した法解釈及び運用だけでなく、当該法解釈及び運用が整理される過程や理由についても国民に十分に明らかにされ、吟味される必要があるというべきだ、これが国民主権の原理だと言っているんですよ。
それを何で隠すんですか。逆じゃないですか。もう一回お願いします。
○政府参考人(相川哲也君) 本件、係争中の事案でございますので、国の主張の詳細を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 そんな答弁するなら立たないでくださいよ。
本当に国民の前に事実を明らかにしていくということが今必要でありますし、それなしに本来審議に入れないんですね。
じゃですよ、実際の今後の解任はどのようになっていくのか。法案にどう規定されているかということでありますが、大臣は衆議院で、特定なイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、今度の法案の中で解任できると答弁をいたしました。昨日の本会議では、これは、解任規定を新設したものではなく、法文上の解任の要件は、会の業務に関し、会議の業務に関し著しく不適切な行為となっているという答弁がありました。
これは、現行法のある解任の要件、会員として不適当な行為があるときということと類似をしているわけでありますが、しかし、これまで、この現行法の解任要件というのは犯罪行為などだということは言われてきましたし、この先ほどの内閣法制局と事務局との検討文書の中にも、これは犯罪行為等だと明記しているんですよ。
ところがですよ、大臣は、犯罪行為ではなくてですよ、特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員、これ犯罪者ですか。何でこの法案によって特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返すという方がこの規定で解任をできるということになるんですか。
○国務大臣(坂井学君) この法案では、会員の解任は、会員が学術会議の業務に関し著しく不適当な行為をしたと認められる場合に、会員候補者選定委員会の求めを受けて、総会の決議により行うこととされております。すなわち、国が会員の解任に関与する仕組みにはなっておりません。
学術会議の会員が、個人として政治的、社会的又は宗教的な意見を持つことはもとより自由であり、アカデミーにおける学術的な議論の結果としての助言等が、結果的に特定の政治的、社会的又は宗教的な立場からの主張に沿っているように見えるものであったとしても、学術的な議論を経て示されたものである限り、アカデミーとしての使命、目的にかなうものであると考えております。
しかしながら、アカデミーの活動は、政治的、社会的又は宗教的な諸勢力からの影響を受けずに学術的な見地のみによって行われるべきものと承知しており、特定の思想の人たちを排除するような選考を行ったり、政治的な主張や活動を行うようなことがあれば、アカデミー本来の在り方に沿ったものであるかどうか懸念が生じることになると考えられると思っております。
そこで、最終的には、どのような場合が解任に該当する事由となるかについて、学術会議において適切に判断されるべきであろうということを申し上げたものでございます。
○井上哲士君 確認するのは、判断する、その要件を判断するのは学術会議だとおっしゃるわけですよ。
ところが、先ほども言いましたように、これまでは、現行法でもですよ、会員として不適当な行為があるときという解任理由について、もう犯罪行為などしか挙げていなかったんですね。ところが、大臣は、特定なイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は解任できると、特定して述べたんですよ、具体的に。なぜこれだけを、これまでのずうっと経過があって、やったのか。
じゃ、事務方聞きますけど、そういうことを排除するような、これまで立法事実に関するようなことがあるんですか。特定イデオロギーで解任した、問題になったことあるんですか。
○政府参考人(笹川武君) 学術会議がその内部の規律を見てどういった方が会員にふさわしいかというのを判断されるということなのだろうと思います。
現在は、例えば犯罪行為を犯したときに退職させることができるという主体は総理になっているはずですが、今度はあくまでもこれは総会ということですので、そこは学術会議において適切に判断されればよろしいのではないかというふうに思っております。
○井上哲士君 それは犯罪行為の問題なんですよね。
この、こういう一般的な文言について、その具体的な例として唯一、特定なイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は解任できると、この法案を提出している大臣がこういうことを答弁するということは、その答弁自身が明らかな政治介入に私はなると思いますよ。大臣、そう思いませんか。
○国務大臣(坂井学君) 私が五月九日の衆議院内閣委員会で申し上げたのは、会員が特定の政治勢力や外国勢力から資金提供を受ける、また緊密に連携して活動するなどの事実が判明した場合にどのような対応を取ることができるのかとの趣旨の御質問に対して、政治的、社会的勢力や特定の外国勢力から独立して学術的な活動をしていただくというのが望ましいということは言うまでもないと、特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は学術会議が解任できると、どのような場合が解任に該当する事由となるかについては学術会議において適切に判断されるべきであろうということを、この御質問の流れに即して申し上げたということでございます。
○井上哲士君 繰り返しになりますけど、これまでそんな答弁はされたことないんです、現行法においても。それを、こういう特定なことをいうと大臣が答弁したそのこと自身が、私は、まさに政治介入になっていく。実際には新しい学術会議、いろんなことでがんじがらめにしている中で、大臣がこういうことを発言をしたこと自身が政治介入だと。私は、この答弁は撤回をしていただきたいと改めて求めたいと思います。
その上で、昨日も聞きました前文について。
本法案が現行の学術会議法の前文を削除していることについて、大臣は答弁で、本法案に引き継がれていると、こういうふうにおっしゃいました。
しかし、この現行の前文にある、我が国の平和的復興、これが、この経済社会の健全的発展、健全な発展にこの思いが込められているというんですよ。でも、平和を削減してですよ、経済社会の健全的な発展、違うじゃないですか。何でこれ込められていると言えるんですか。
○政府参考人(笹川武君) お答え申し上げます。
現行法の理念を、その拡大、深化した形で、七十六年の時の経過、社会の変化、学問の発展を踏まえて現代的な視点から捉え直して書いているということでございまして、私どもは、経済社会の健全な発展というところで平和的復興を読み込み、さらにそれを将来に向けて発展させていくというつもりで提案させていただいているところでございます。
○井上哲士君 いいですか、日本国憲法の三大原則、その一つが平和主義なんですよ。こんな経済の発展に読み込めるようなものじゃないんです。
しかも、これがどういうことをもたらすか。二〇〇二年のJAXA設置法にあった平和の目的に限りという文言は、二〇一二年の法改正で削除されました。その後、JAXAは防衛省との協力を始めまして、超音速飛行の基礎研究に参加をしておりまして、ミサイル防衛を無力化して戦争の様相を根本的に変えると言われる超音速ミサイルの開発に結び付く、こういう研究なんですよね。ですから、平和の文言が削除をされました。こういう軍事の論理にのみ込まれていくんですよ。にもかかわらず、あなた方は削減した。この法案の狙いがそこにも表れていると思います。
更に聞きますが、昨日の本会議では、この前文の科学者の総意の下という文言は学術会議の独立性や自律性や自主性のよりどころだと指摘をした上で、この科学者の総意の下はどこに引き継がれているのかとお聞きしましたけれども、大臣から明確な答弁がありませんでした。改めてお聞きいたします。
○国務大臣(坂井学君) この法案は、設立以来七十六年の学術の進歩と社会の変化を踏まえ、拡大、深化する役割に実効的に対応していくために、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるためのものでございます。七十六年前に科学者の総意の下に設立されたという基本的な在り方及び前文に書かれている設立時の理念は、我が国のナショナルアカデミーの基本理念として、時代の変化に合わせた形で新法、新法人に受け継がれていくものでございます。
学術会議におかれましても、四月十五日の総会における声明において、日本学術会議の理念と位置付けは変わらず存続する、これまでの歩みや取組を世界及び国内の社会課題の解決に寄与しつつ、学術の更なる発展のために自ら行動し、次世代へと引き継いでいくと宣言されているものと承知しているところでございます。
○井上哲士君 昨日の本会議と全く同じ答弁なんですよ。その答弁があったから今質問しているんですから、もうちょっとまともに対応してほしいんですよ。
そこで、光石会長に来ていただいておりますが、今ありましたように、四月十五日の学術会議の声明が日本学術会議の理念と位置付けは変わらなく存続しと述べていることをもって、今大臣は、これを、それを根拠にしてこの法案に現行法の理念が引き継がれていると、こういうふうに答弁をされるわけですが、私は、この声明のこの文言は学術会議としての決意などを述べたものであって、大臣が言うような趣旨ではないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○参考人(光石衛君) まず最初に、前文に関してですが、歴史的な背景を踏まえた科学者としての決意が表現された法律から、国、政府の側から見た学術への期待を表現する法律に変質されているというふうに分析をしております。
その上で、先月の総会で採択いたしました声明におきまして、日本学術会議の理念と位置付けは相変わらず、変わらず存続しとありますのは、いかなる状況にありましても、日本学術会議のこれまでの歴史を踏まえつつ、その先もその理念及び位置付けは変わらず存続し、学術の振興を通じて文化を育み、平和で豊かな社会をつくり、国民の安心して生きがいがあり健康で文化的な生活の維持、増進に貢献していくという日本学術会議があるべき姿について言わば宣言したものでございます。
○井上哲士君 今ありましたように、日本学術会議があるべき姿を宣言をしたものだということであって、この法律の前文に、法律に、これまでの前文が、趣旨が盛り込まれていることと全く違う意味だとおっしゃっているんですよ。
大臣の答弁、違うじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(坂井学君) 学術会議の基本理念は国民の理解と支持を得て学術の向上、発達、社会課題の解決への寄与という重要な目的のために、国が設立する法人の基本理念へと拡大、深化した形で、現代の視点から、法制的な観点からもあり、適切な用語を用いて記述され、受け継がれていくものであると考えております。
○井上哲士君 いやいや、学術会議はそうは思っていないと今あったわけですよ。
そして、四月十五日の総会の声明を引用されて大臣の答弁の合理性を言われたけれども、それも違うということなわけですね。
引き継がれていると言いますけれども、じゃ、条文のどこにそれがあるんですか。いかがですか。
○政府参考人(笹川武君) 学術会議は、学術に関する知見が人類共有の知的資源であるとともに、経済社会の健全な発展の基盤となるものであることに鑑み、世界の学界と連携協力して学術の向上発達及び学術に関する知見の活用の推進を図り、もって人類社会の持続的な発展及び国民の福祉に貢献するものとする、こういったことを、今大臣から答弁ありましたとおり、七十六年前の経緯も含めて今の時点から捉え直して、国民と理解の支持の下、法律という国が設置する法人という形で更に前に進めていくということでございますので、これを包含し、更に発展させるものというふうに考えております。
○井上哲士君 これ、科学者によって起草されて、作られたのがこの法律なわけですね。それを、その当事者がこの法律に引き継がれているものでないと、先ほど答弁があったわけですよ。それを、そんな強弁をされても全く説得力も何もないという、受け継がれていないのは明らかだと言わなければなりません。
さらに、光石会長にお聞きしますけれども、私は昨日の本会議で、学者コミュニティーに対する学問の自由の保障は、思想、信条、信教、表現の自由などとは異なって、個々の科学者の研究、発表、教授の自由の保障に加え、科学者の相互批判と検討を可能とする科学者集団の自律的な規律があってこそ保障されると、科学者コミュニティー自体に学問の自由の保障が及ぶのは当然だと指摘しましたけれども、大臣から明確な答弁はありませんでした。
光石会長は、この学者コミュニティーと学問の自由について、どのようにお考えでしょうか。
○参考人(光石衛君) 日本国憲法にあります学問の自由が保障する範囲につきましては、法学の専門家でもないためお答えすることは困難ではございますが、一般論で申し上げれば、知的活動を担う科学者にとって学問の自由が保障されていることは当然重要であります。
他方で、科学者及び科学者コミュニティーは、自らの専門知識、技術等の維持向上に加え、これらを生かして人類の健康と福祉等に対して貢献したり、社会における様々な課題の達成に向けた期待に応える責務も有していると考えております。
○井上哲士君 もう一点、光石会長にお聞きいたしますが、昨年七月三十日の文書の中で、大臣任命の監事や評価委員会、中期目標、中期計画の法定、次期以降の会員選考に特別な方法を導入すること、それから選定助言委員会、この五点について、近視眼的な利害に左右されない独立した自由な学術の営みを代表するアカデミーの活動を阻害するもので、到底受け入れられないと厳しく批判を、指摘をされました。今年三月二十四日には、提出された法律案に対して、幹事会が整理した十六項目の権利、懸念事項を示しており、この五点も含まれております。
ところが、大臣は、日本学術会議がこの法案や法人化に反対をしていないと繰り返し答弁をされているんですね。この間の説明や衆議院での質疑を踏まえて、これら五点、あるいはそれ以外の幹事会が指摘した懸念事項に関する懸念は、払拭をされたんでしょうか。いかがでしょうか。
○参考人(光石衛君) 先月の総会で採択されました声明におきまして、法案に関して、まず、プロセスにおいて当事者である日本学術会議との間で完全な合意には至らなかったにもかかわらず、科学者の代表により起草された現行法を廃止し、日本学術会議の理念や組織の骨格を定める内容の法案を政府が提出したことは、遺憾と言わざるを得ないとした上で、内容につきまして、日本学術会議の基本理念、政府任命による監事による監査、中期的な活動計画や年度計画の策定と、内閣府に置かれる評価委員会の関与、選定助言委員会の設置を含む会員の選任の仕組み、法人発足時等の会員選考等について、ナショナルアカデミーとして組織が満たすべきものとして日本学術会議が示す五要件のうち、特に活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性が充足されていない等の懸念が多くの会員から提起されたことを指摘し、これらの懸念点について、国会においても修正の可能性を含め十分に慎重な審議を望むとしております。
この法案が日本学術会議の独立性を高めるものであって外部からの不当な介入を許容するものではないという点につきましては、政府からもお答えがあったものと思いますが、やはり日本学術会議総会における会員の意思は、条文の修正という形でそれを明らかにしてほしいというものであって、この間の法案の審議により、これまで示してきた懸念が完全に払拭されたと申し上げることはできないと考えております。
○井上哲士君 懸念は払拭されていないということであります。
終わります。
内閣委員会(日本学術会議法案)
2025年5月29日(木)