○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
国会議員執行経費基準法に関わって、法案に関わって、障害者や高齢者の投票機会の確保、参政権の保障の観点から、投票環境の改善についてお聞きいたします。
まず、障害者の投票環境の改善について、政府はこの間、投票所の設備等に関する留意事項という通知を出して、障害のある方に配慮した事例集も発行をしております。その内容及び周知の取組についてまずお聞きします。
○政府参考人(笠置隆範君) 障害のある方が円滑に投票できる環境については重要であると考えてございまして、総務省では、国政選挙や統一地方選挙に際しまして、御指摘ございましたが、投票所の設備等に関する留意事項の通知を各選挙管理委員会に発出し、周知、要請を図っているところでございます。
その内容でございますが、一部御紹介申し上げますと、投票所の入口等に投票の順序、投票所の見取図を掲示をし、また投票所内においては投票のための順路を適切な方法で明示するなどの措置を講ずること、幅が広く堅固な記載台や記載のための照明灯の設置、車椅子や車椅子用の記載台、点字や拡大文字による候補者名簿、標準点字盤など、より投票しやすい設備や備品を準備すること。また、投票所を設置した施設の敷地の入口から投票、記載する場所までの間に段差があるような場合には、スロープの設置や人的介助が可能な体制を取るなど適切な措置を講ずることなどを要請をいたしております。
また、もう一つ御紹介ございました障害のある方に配慮した選挙事務の事例につきましては、投票所における障害のある方への対応として、投票所の実際に事務に従事している方が各障害の特徴を理解した上でそれぞれの有権者に適切に対応することが必要であることから、障害の特徴を踏まえたコミュニケーションの方法、投票支援カードやコミュニケーションボードなど先進的な取組例を取りまとめたものでございまして、全国の選挙管理委員会において参考となるよう周知を図ってございます。
引き続き、障害のある方が円滑に投票することができるよう、夏の参議院通常選挙に向けた選挙管理委員会に対する会議なども活用しながら周知、要請を図ってまいりたいと考えてございます。
○井上哲士君 この対応例、事例集、初めて作成されたとお聞きしておりますが、障害者の皆さんの声も反映されており、全国の投票所で活用されるように周知をしていただきたいと思うんですね。
一方、障害者団体からは、ここにはまだ記載のないことについても様々な要望や声が寄せられております。例えば、投票所のバリアフリー化の更なる支援、投票箱にも必ず点字シールを貼ること、自分で使っている使いやすい筆記用具の持込み、それから、視覚障害者の場合に自分で使っている点字器の持込みができるように、それから、同行支援やガイドヘルパー、知的障害者の家族などの同行者が投票所の入口までしか行くことができないというこのルールを見直すべきではないかなどなど挙がっておりますけれども、総務大臣、それぞれ是非お答えいただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(村上誠一郎君) 井上委員にお答えします。
障害のある方が投票しやすい環境を整備していくことは非常に重要であると考えております。
総務省におきましては、これまでも、障害者団体の御要望等を踏まえ、各選挙管理委員会に対しまして、投票所の場所は歩行が困難な方々に配慮して選ぶこと、点字器や車椅子用の記載台などの必要な備品を準備することなどを要請するとともに、取組状況について調査し、改善を図ってきております。
その上で、まず投票所のバリアフリーにつきましては、昨年の衆議院選挙の状況を申し上げますと、段差等の障害のある投票所につきましては、ほぼ全てにおいて簡易スロープの設置や事務従事者による人的介助等の対応が図られております。
次に、投票箱の点字シールを貼ることにつきましては、二つ以上の選挙が同日に行われる場合におきましては、投票箱がどの選挙のものかを判断できるように、ものであると認識しております。そのような場合には事務従事者が、付添いの方が誘導しているものと考えますが、御指摘のような取組を行っている自治体もあると承知しております。
次に、選挙人が使い慣れた筆記用具や点字器を持参することにつきましては可能であります。各選挙管理委員会に対してその旨を周知しております。
最後に、選挙人を介護する皆さんなどが投票所に入ることにつきましては、やむを得ない事情がある、投票管理者が認めた場合には投票所に入ることができることとされております。各選挙管理委員会に対しその旨を周知しております。
今後とも、様々な御意見を伺いながら、障害のある方の投票がしやすくなるよう取り組んでまいりたいと考えております。
以上であります。
○井上哲士君 例えば使いやすい筆記用具の持込みでいいますと、持参したら投票所で駄目だと言われて、いや、そんなことないでしょうと言ってやり取りをして、十分間ぐらい掛かってやっと認められたというお話も聞いているんです。ですから、なかなか現場に周知徹底をしていない。特にやっぱり投票所の職員の方というのは、ふだんは選挙に携わっていない方もたくさんいらっしゃいますので、これ是非徹底をして、更に声を聞いていただきたいと思います。
その上で、投票の改善は必要ですけれども、そもそも一人で投票所に行くこと自体が困難な方もいらっしゃいます。障害で一人では投票に行って投票することが困難な方の投票権や参政権の保障についてお聞きしますが、総務省には自治体が選挙投票の際の移動のために福祉タクシーやタクシー券の配付などの支援を行った場合の費用を補助する移動支援の制度があると思いますけれども、その概要や支援内容、それから実際に市区町村で活用された実績はどうでしょうか。
○政府参考人(笠置隆範君) お答えいたします。
投票所までの巡回送迎バスの運行やバスの無料乗車券の発行など、選挙人に対する投票所への交通手段の提供、いわゆる移動支援に関する施策につきましては、高齢者や障害者の方など投票所への移動が困難な方はもとより、選挙人の投票の機会を幅広く確保する観点から効果的な取組であると考えてございます。
このため、総務省におきましては、国政選挙や統一地方選挙に際しまして、各選挙管理委員会に対して、選挙の公正を確保しつつ積極的な対応を要請するとともに、国政選挙における移動支援に要する経費につきましては、今御審議いただいておりますが、執行経費基準法に基づきまして全額を措置しているというところでございます。
移動支援を行う自治体の実績というお尋ねでございますが、令和三年の衆議院総選挙では二百八十団体、令和四年の参議院通常選挙では三百六団体、昨年、令和六年の衆議院総選挙では三百三十二団体と、取組団体数は増加してきているところでございます。
引き続き、各選挙管理委員会におきましてこうした移動支援の取組が積極的に行われるよう周知してまいりたいと考えてございます。
○井上哲士君 三百三十二まで増えてきたというお話でありますが、全額国費で措置されている、されるのにこの数にとどまっているとも言えると思うんですよね。ですから、自治体への周知とともに、やっぱり有権者の方がこういうのやってくれと言えるような、有権者への周知も含めてお願いをしたいと思うんですが。
さらに、厚労省にもお聞きいたしますけれども、障害者で一人では投票に行って投票することが困難な方への同行支援、ガイドヘルパーの支援というのはどのようになっているでしょうか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
選挙の際の投票など障害のある方の政治参加のために、障害のある方が安心して投票に参画できるようにしていくこと、これは重要なことであるというふうに考えてございます。
障害のある方が投票所へ行って、そして投票されるための外出支援につきましては、各市町村において実際の支給の決定というのはされるものではございますけれども、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護でございますとか同行援護などの個別給付サービスの利用が可能でございます。また、地域の実情や利用される方々の状況に応じて地方自治体が柔軟な形態で事業を展開する地域生活支援事業というものがございまして、この中のメニューに移動支援事業というものがございます。この事業によって支援が行われるというようなこともあるものと承知をしてございます。
このように、個別給付の対応あるいは地域生活支援事業の対応というツールはありますので、引き続き、当事者の方々の御要望でございますとか自治体のお考えなども伺いながら、移動支援に取り組んでまいりたいと考えております。
○井上哲士君 自治体がそれらを利用した場合の国の負担はどういうふうになるんでしょうか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
障害者総合支援法に基づく個別給付である重度訪問介護等々の福祉サービスにつきましては、市町村が行った給付費の半分、二分の一を目途とした国庫負担でございます。
地域生活支援事業の方は、国の予算、総額で今五百億ちょっと取っておりますが、これは法律上二分の一の範囲内で、予算の範囲内で補助をするというふうになっております。
○井上哲士君 この総務省、厚労省、それぞれのいろんな制度があるわけでありますが、先ほども言いましたけど、まだまだ全部のところで行われておりませんし、利用者自身がこういう制度があることを知らないということも随分あるわけですよね。是非これを徹底していただきたいと思うんですが。
さらに、そうした支援を受けても投票所に行くこと自体が困難な方への支援が必要だと思うんですね。先ほどもありましたけど、成り済まし投票を防ぎ、投票の秘密や自由意思の投票を確保しながら投票できるようにするという上で、立会人と一緒に投票箱を車に載せて、施設や自宅など要望がある場所に行って投票ができる巡回投票が非常に有効だと私たち思います。
これ、是非進めるべきだと強く申し上げてきたんですが、例えば移動期日前投票所を開設している北海道の士幌町では、町の広報で、高齢、障害等の理由により投票所までの移動が困難な方の投票機会を確保するため、自宅前で投票できる移動期日前投票所を開設します、御利用には事前の申込みが必要ですと、こういうふうに紹介をされておりまして、電話で申し込むと、後日、移動投票所が自宅前まで来ると、その日時の連絡が来ると、こういうふうになっております。
お聞きしますと、二〇二三年の知事選、道議選挙では九世帯十五人が投票され、二四年の総選挙では十四世帯十八人が投票されたということなんですね。これ、割と小さな町なんですけど、これ有権者が四千八百二人ですから、同じ割合でいいますと、東京でいいますと、総選挙では四万二千六百七十二人が投票したということになるわけでありまして、こういう移動投票所の有用性についての大臣の認識や、国としては自治体の経費負担にどのような支援をしているのか、この間の実際行っている市区町村の推移はどうなっているか、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(村上誠一郎君) お答えします。
複数の箇所を巡回する自動車を用いた移動期日前投票所につきましては、投票所への交通手段の確保が難しい選挙人などの投票機会の確保の観点から有効な取組と考えております。このため、総務省におきましては、国政選挙及び統一地方選挙に際し、各選挙管理委員会に対して積極的に設置を検討するように通知しております。
前回、令和四年の法改正におきましては、移動期日前投票所の設置に要する経費につきまして執行経費基準法上の対象であることを明記しまして、国政選挙において各選挙管理委員会が要した経費を全額措置しているところであります。
近年の国政選挙における移動期日前投票所の設置状況につきましては、令和三年衆議院選挙では五十九団体、令和四年参議院選挙では八十八団体、令和六年衆議院選では百三十一団体と、取組団体は増加しているところであります。
総務省としましては、このような取組が着実に増加するよう各選挙管理委員会の積極的な取組を促してまいりたいと、そのように考えております。
○井上哲士君 全額国費負担になって広がっていますけど、まだまだなんですね。これも是非周知をしていただきたいと思います。
最後に、供託金制度についてお聞きします。
昨年の、国連女性差別撤廃委員会が、その日本の定期報告書に対する最終見解の中で、日本の供託金制度が女性の政治参加を阻んでいると、このことを示して、これを減額をするという勧告をし、しかもフォローアップ項目として重視をされて、取組状況を二年以内に報告するように求められておりますけれども、まさにこの高い供託金が女性の政治参加を阻んでいるという、こういう指摘について大臣はいかがお考えでしょうか。
○委員長(豊田俊郎君) 申合せの時間が参りましたので、答弁は簡潔にお願いします。
○国務大臣(村上誠一郎君) はい。
政治分野における女性の参画拡大が進むことは重要であると考えております。
供託金制度は、真に当選を争う意思のない者、いわゆる泡沫候補者が出てくることを防止するためのとも解しております。
供託金の在り方につきましては、立候補制度に関わる事柄でありまして、選挙制度の根幹に関わる事柄でありますので、各党会派の先生方で御議論をいただきたいと考えております。
以上であります。
○井上哲士君 是非各党でしっかり議論をしていきたいと思います。
ありがとうございました。
政治改革特別委員会(国会議員執行経費基準法、障害者・高齢者の投票機会の確保)
2025年5月23日(金)