○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
朝の理事会で自民党から今日の採決の提案がありました。しかし、審議の前提としてきた六人の任命拒否のその理由と経過、そしてその根拠となった法解釈の変更の行政文書の黒塗りの開示、いずれも朝の理事会では拒否、ゼロ回答でありました。そういう中で、本日の質疑終局、採決などは言語道断だと言わなければなりません。
通告した質問の前に、一点、大臣に質問します。法案への反対は今、日に日に広がって、昨日は五十人の学者の方が会館前に座込みをされました。特に怒りを広げているのが、大臣の、特定なイデオロギーや党派的主張を繰り返す者はこの法案で解任できるという答弁です。しかも、そのために学術会議が規則にあらかじめ定めておくとまで答弁をされています。あからさまな政治介入なわけですね。政府の気に入らない学者は排除するというこの法案のまさに狙いを示したものと言わざるを得ません。
しかも、先週五日の質疑の中で大臣は、この答弁を合理化するためにこう言いました。特定なイデオロギーや政治的活動を繰り返すことが望ましくないということは衆議院からの審議でも共有されている、コンセンサスが取れていると、そう答弁したんですよ。どこにコンセンサスがあるんですか。朝からの質問も、私も、ずっとこの答弁の撤回求めているんですよ。なぜそれをコンセンサスがあると言えるんですか。自分の気に入らない質問は存在も認めない、聞く耳も持たないと、そういう姿勢じゃありませんか。いかがですか。
○国務大臣(坂井学君) 先ほどから申し上げておりますが、それはこの法案の解任の仕組みに関して御説明をさせていただいた一節でございまして、その中にも、政府は一切この解任には関与をしないということを何度も申し上げているところでございますので、今委員が御指摘いただいたような、政府の気に入らない学者を排除をしようというようなことをやろうと思ってもできない法案だということを、要は政府が介入ができないんだということを申し上げ、そのことは学術会議が決めるんだということを申し上げているところでございますので、委員の御指摘は、その政府の気に入らない学者を排除しようとする法案ではないか、聞く耳持たないんではないかという御指摘は当たらないものと思います。
○井上哲士君 ちゃんと答弁してくださいよ、かみ合って。あなたが答弁の中で、特定なイデオロギーや党派的な主張を繰り返したことは望ましくないということは衆議院からの審議の中でも共有されている、コンセンサスが取れていると言ったんですよ。
コンセンサスないじゃないですかと、何でこんなこと言うんですかと聞いているんです。
○国務大臣(坂井学君) それは、あくまで私が感じたことでございますが、しかし、衆議院の答弁から、政治的や、あと何でしたっけ、宗教的等々に偏った、政治的、社会的、宗教的な勢力からの影響を受けるような活動は望ましくないという御意見、御質問、そしてまた様々な審議がその中であったと私が認識をしたので、そう申し上げたところでございます。
○井上哲士君 そういう質問もありました。だけど、答弁撤回しろと、こういう声もたくさん出ているんですよ。にもかかわらず、コンセンサス、共有されていると。結局これは、意に沿わない質問はもう存在すら認めないと、こういう姿勢じゃないかということを申し上げているんです。こんな下で採決などあり得ないということを改めて申し上げなければなりません。
この法案は、現行の日本学術会議法の前文を削除しています。しかし、前文には、この戦前の日本政府が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたと、この痛苦の反省が込められております。
一九四三年三月二十日、当時の政府は閣議決定によって、科学研究は大東亜戦争の遂行を唯一絶対の目標としてこれを推進するとしました。このように政府が学問研究の自由を奪って、戦争を唯一の目標として科学を動員したと、この歴史について大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 学術会議は、昭和二十四年一月の第一回総会で採択された声明にもあるように、これまで我が国の科学者が取りきたった態度について強く反省し、つまり、この取りきたった態度というのが今御指摘をいただいた一九四三年の科学研究の緊急整備方策要領だということだと思います。今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、我が国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うとの決意を表明して、科学者の総意として発足したと承知をしているところでございます。
このような当時の科学者の総意は私も重く受け止めているところでございまして、また同時に、この設立時の理念は我が国のナショナルアカデミーの基本理念として、法人化により否定されたり切断されたりするわけではなく、いずれの時代の変化に、いずれも時代の変化に合わせた形で新法、新法人に受け継がれていくものと期待をいたしております。
○井上哲士君 じゃ、何で理念を受け継ぐと言いながら、前文を削って、しかも平和的復興を経済の健全な発展に言い換えると。あり得ないですよ。
先ほどのことは、これは政府自身の反省なんですね。一九四九年一月の日本学術会議の発足会の祝辞で、当時の吉田総理はこう述べています。戦争を永遠に放棄し平和的文化国家として新しい日本を建設することを決意した私どもは、文化の発達なかんずく科学の振興を通じて、世界の平和と人類社会の福祉に貢献しようとする大きな理想を持たなければなりませんと。その上で、日本学術会議が、科学振興のこのような国家的要請に応えて設立したと、こう言っているわけです。
大臣は、有識者懇談会の報告書が、そもそも政府の機関であることは矛盾を内在しているという点について問われて、政府に対して独立をする立場で客観的に意見を申し述べるという役割があるにもかかわらず、政府の一組織であるということが矛盾だということが指摘されていると、それは七十五年続いてきていると、こういうふうに答弁をされました。
しかし、先ほど、吉田総理の祝辞では、日本学術会議は国の重要な機関として設立されるが、その使命を達成するために、時々の政治的便宜のための制肘を受けることのないよう、高度の自主性が与えられているとはっきり述べているんですよ。
学術会議の使命と国の機関でありながら独立して職務を行うという現在の学術会議の組織形態は一体不可分であり、何の矛盾もないはずなんですね。
この吉田総理の言葉に、一体大臣の言う矛盾がどこにあるんですか。
○国務大臣(坂井学君) 現行法では、学術会議は行政機関であります。関係府省庁との調整等により自由な意思表出等ができなくなることを避けるため、独立して職務を行うという規定を置いておりますが、独立して職務を行うという規定の意味は、政府、各省の制肘を受けないことだと理解をされています。現行法のこの解釈は吉田総理の言葉を踏まえたものと考えられ、現在の国の機関としての組織形態との間に矛盾はありません。
その上で、報告書で指摘している矛盾という点については、先日、元会長が記者会見で、学術会議会長は総合科学技術・イノベーション会議のメンバーだったが、政府が決めようとしていることに疑問を持っている場面で、総理が目の前にいる中で、組織の一員として批判的な意見を言えるのかということについて悩んだ、海外アカデミーと話すときに、日本は政府組織だが、それで独立性が保たれるのかと聞かれることがあると語っており、矛盾を内在しているとはまさにこのようなことではないかと思っています。
先ほど、我妻委員のお話が出ましたけれども、我妻委員も同じこの矛盾の中で悩んでいたということが文章から明らかになっているということで、私が指摘を、触れさせていただいたのはここの矛盾ということでございまして、現在の組織形態が矛盾を内在しているという有識者懇談会の認識に問題はないと考えております。
○井上哲士君 個々のことをいろいろ持ち出されましたけれども、実態として、吉田総理のお言葉が言ったように、時々の政治的便宜のために制肘を受けることがないような高度の自主性が与えられているんです。それを変えるような必要性はどこにもないと思うんですね。
しかも、学術会議は設立の趣旨に基づいて、一九五〇年に戦争を目的とする科学の研究には絶対従わないという決意の表明をし、一九六七年にも同様の声明を出しました。一方、政府は、二〇一五年に安保法制を強行し、その年に防衛装備庁を設置し、そして安全保障技術研究推進制度を創設しました。この制度に対して、学術会議が、二〇一七年、過去の声明を継承し、軍事的安全保障研究に関する声明を発表しました。この間、この声明に対し、あたかも学術会議が個々の研究者の学問の自由を侵しているかのような質疑がこの委員会でもありましたけれども、全くこの声明の趣旨を履き違えたことだと思います。
防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度はどのような制度か、私、当時、外交防衛委員会で質問もしましたけど、まず目的は、防衛分野での将来の研究開発に資する基礎研究を公募、委託する、研究の進捗管理は外部ではなくて防衛省の職員が行う、他の制度にはないやり方なんです。しかも、研究成果については兵器産業に無償利用されることは拒めないと、こういう制度になっているんです。こういう制度だから、声明は、研究の自主的、性、自律性、研究成果の公開性の観点から問題が多いということで、研究資金の出所に関する慎重な判断を大学等の研究機関に呼びかけたんですよ。学問の自由を守るためにこういう声明を出したんです。
学問の自由を侵害するおそれのある資金について、学術会議が慎重な判断を求めるのは当然じゃありませんか。
○国務大臣(坂井学君) この点につきましては、光石会長からは、声明は、大学等の各研究機関にその適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的、倫理的に審査する制度を設けるべきことを求めるものであり、いわゆるデュアルユースに係る研究のような安全保障に資する研究を一律に禁止するという趣旨のものではない、令和五年にはいわゆるデュアルユースを有する先端科学技術、新興を係る研究が大学等の研究機関で円滑に実施される方策について研究インテグリティーの観点から見解を取りまとめていると答弁があったと承知をしております。
したがって、この学術会議が大学等の各研究機関に対して慎重な判断を求めたということではないと認識しており、今後、この見解が大学等の研究機関の現場にしっかり浸透し、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などにつながることを期待しているところでございます。
○井上哲士君 全く私の質問答えていないんですよ。
こういう、防衛省が資金を出して研究の目的、進捗、成果の活用にまで口を出すと、こういう資金における研究は学問の自由が守れないという立場で学術会議が声を出した。私、当然のことだと思うんですね。政府から独立した組織であるからこそ、学問の自由を守る立場でこうした声明も出せたんです。
二〇一五年の有識者会議の報告書でも、国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、かつ、政府に対して勧告を行う権限を有している現在の制度は、日本学術会議に期待される機能に照らしてふさわしいものであり、これを変える積極的な理由を見出せないと、こう言っているんですよ。にもかかわらず、今回このような法人化の法案が出されたのかと。
結局、今の政府が、吉田総理があの最初に述べたような、基本的平和国家として、そういう立場から今の政府が変わってしまうからじゃないですか。安保法制、そして二三年の安保三文書を閣議決定して、軍需産業を成長産業にする、そして戦争する国づくり、これに向かっている中でこういう自主的な組織が声を上げることが邪魔になると、だからこそこういう法案が出されていると。
私は、本法案が学術会議の自主性、自律性を高めるという政府の言い分は通用しないし、審議の前提を欠いたままこのような法案を採決するなどは絶対あり得ないということを繰り返し申し上げまして、質問を終わります。
内閣委員会(日本学術会議法案)
2025年6月10日(火)