国会質問議事録

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内閣委員会(盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案は、近年増加する金属窃盗の防止対策として、特定金属くず買受け業者に対して都道府県公安委員会への届出や買受け時の本人確認を義務付けるものです。
 何を特定金属にするかは政令で定め、当面は銅のみの指定とされておりますけれども、将来、アルミや鉄にも拡大をする可能性についてはどうか、また、その際、この指定が拡大される場合の要件、それから判断基準はどのようになるでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 現時点では、銅以外の金属を特定金属として政令で追加すべき情勢にはないと考えているところでございますが、鉄やアルミニウムにつきましても、今後の窃盗の認知件数や被害額の推移、取引価格の状況等を踏まえ、特定金属として指定する必要を検討してまいりたいと思っております。
 政令で定める特定金属につきましては、今申し上げましたとおり、窃盗の認知件数や被害額、取引価格の状況等から盗難を防止する必要性、これを総合的に判断して検討していきたいと考えております。
○井上哲士君 午前中からの質疑でも、本人確認については写真付きの証明書、犯罪収益移転防止法における本人確認の手法などを検討していると、こういうお話でありました。
 そこで、一問飛ばして聞きますが、空き缶集めとかスクラップ集めをしてスクラップ業者に販売して生活費としている方々がいます。その中で、ホームレスの方の場合は身分証明書を持っていないということが想定をされるわけですよね。本来的にはこういう貧困状態を放置せずに住まいや生活の支援、自立支援が求められると思いますけれども、現に生活の糧にしているということを禁止をすれば、ホームレスの人などのこの自立のすべを奪うことにもなりかねないと思います。
 今回の法案の本人確認義務の措置によってこういう人々を締め出すということになるおそれはないのかというのが一点、それから、古物営業法では、取引における本人確認について、コンピューターソフト、CD、DVD、書籍、オートバイやオートバイ部品を除いて、美術品、時計、宝飾品類その他の古物の一万円未満の取引は本人確認を不要としております。同様にこの一万円未満は本人確認を不要とするなど、これからの国家公安委員会の規則で本人確認方法を定める際には、こうした空き缶集めなどをされているホームレスの方などにも配慮した方法を検討すべきでないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 本法律案におけます本人確認につきましては、盗品の処分を防止するために重要なものでございます。具体的な方法につきましても、厳格な本人確認ができるよう国家公安委員会規則を定める必要があると考えておりまして、例外を設けることは慎重に検討しなければならないというふうに認識しております。
 また、本人確認義務の除外対象ということでございますけれども、現状では脱法行為を防止するためにそのような規定というものは必要は、必要性を全く感じていないところでございますけれども、今後の状況によりまして、現在は銅を特定金属として対象とすることとしておりますけれども、それ以外のものを拡大するに当たりましては様々なそういった要因も考えていかなければならないのかなというふうには考えております。
○井上哲士君 対象を拡大するときには考えなくちゃいけないというお話がありましたけど、つまり、この国家公安委員会規則で一万円未満は本人確認を不要とするという規則を設けることは禁じられてはいないということで、確認してよろしいですか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 具体的な本人確認の方法につきまして、国家公安委員会規則に委任されておりますので、国家公安委員会規則の中で本人確認が必要でないものを規定するということは、法律上は、済みません、古物営業法と違いまして、法律上除外するというものがございませんので、本人確認はいずれにしても必要になるということと考えております。
 ただ、その本人確認の仕方、やり方につきまして、確実に確認するためにどのようなもので確認するのか、その方法につきましては規則の中で検討する話でございます。
○井上哲士君 この点について、警察庁の生活安全局長の下に設けられた検討会の報告書でも、取引時の本人確認の方向性として、一万円未満の金属くずについて本人確認等を免除することは抜け穴となるおそれがあるため適当でないとまとめられております。今日も、先ほど、この免除することとすると法の規制を潜脱されるおそれがあると、こういう答弁もありました。
 しかし、この三回行われた検討会の議事要旨を読みましたけれども、そういう発言や意見は見られないんですよね。逆に、例えば、議事要旨には、業界団体の代表からも、鉄スクラップの買取りについて総額一万円以下の取引はほとんどない、例えばグレーチングでいえば、一枚だけ持ってくるということはまずあり得ず、二十枚、三十枚あれば一万円は優に超えてしまうといったものや、非鉄スクラップ買取りについても現状で総額一万円以下の取引はほとんどないという意見がありまして、負担軽減を求める議論はありましても、一万円未満の本人確認免除は抜け穴になるという意見は少なくともこの議事要旨には見当たらないんですけれども、一体誰の発言だったんでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 御指摘の点につきましては、第一回の金属盗対策に関する検討会におきまして、規制の目的と業者全体に課される負担とが均衡している必要がある、鉄スクラップの買取りについて総額一万円未満の取引はほとんどない、非鉄スクラップの買取りについても現状で総額一万円以下の取引はほとんどないといった御意見があったところではございます。他方で、検挙事例の中には、公園から窃取されたグレーチング二枚が四千七百円で売却されていたといった事例もあったところでございます。
 第一回検討会における有識者の御意見とこの検挙事例を踏まえ、第二回の金属盗対策に関する検討会におきまして、事務局において整理した論点案としまして、金属くずの買取りについては適正な業者にとってほとんど負担軽減とならない一方で、抜け穴となるおそれがあることから、一万円未満の取引に関する本人確認義務等の免除は不要かという論点案をお示しし、御議論いただいたところでございます。
 こうした経過を経まして、一万円未満の金属くずについて本人確認を免除することは抜け穴となるおそれがあるため適当でないとの提言が第三回検討会におきまして議論され、有識者検討会によって取りまとめられた報告書に盛り込まれたものでございます。
○井上哲士君 今もありましたように、事務局が一回目の論点からの整理としてこういう提起がしたということでありますけど、結局、専門家から、こういう一万円未満については免除は抜け穴になるから適切でないと、こういう発言は実際はなかったんじゃないんですか。結局、専門家等による検討会の意見かのようにして、実際は警察庁の主張を盛り込んだということではないんですか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 繰り返しにはなりますけれども、先ほど御説明いたしましたように、第一回の検討会の資料におきまして、論点案としまして、金属くずの買取りについては適正な業者にとってほとんど負担軽減とならない一方で、抜け穴となるおそれがあることから、一万円未満の取引に関する本人確認義務等の免除は不要かという論点を提示いたしまして、そこで御議論いただいた、特にこれについて、いや、不要であるとか必要であるという御意見もなく、またこの論点につきまして最終的には承認されたという流れでございます。
○井上哲士君 ですから、ないんですよ、専門家からそういう意見は。当局の側がそういう論点を設置をした、それについても専門家から全くいいとも悪いとも意見がなかったのに、何か最後のまとめには、それが専門家からの意見だったかのようなまとめがされているんですね。私、これはやり方おかしいと思うんですよ。結局、専門家でまとまった意見だからとか、有識者からの意見だから、それを錦の御旗にしてやるということがほかの法案でもやられていました。
 追加して、国家公安委員長、聞きますけど、こういう専門家による検討会ではなかったような発言を警察の判断で盛り込むようなことが行われるのは私は不適切だと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(坂井学君) そこでほかにどのような御意見が出たのかという詳しいところまでは私も今は、今この時点で承知はしておりませんが、ただ、論点として提出をさせていただいていて、しかも、その中で特別この論点案に関して不都合があるということであれば必ずそこには御意見が付されるだろうということではありますので、この表記の仕方はともかくとして、この論点案、論点がその有識者の皆様方にとって不適切なものだとは認められなかったというその結論に関しては適切なものだと言っていいのではないかなと思います。
○井上哲士君 この論点が適切だという意見も出ていないんです。にもかかわらず、そうだったかのように書かれているのはおかしいじゃないかということを私は申し上げております。以降、きちっとこれはやっていただきたいと思います。
 近年、一般廃棄物のごみ収集所から古紙回収業者等による資源ごみの持ち去りが問題になって、一般ごみの持ち去り禁止条例の制定が広がっております。環境省の調べでは、全国四百十一の市区町村でできているという話です。
 この中で、大阪市の持ち去り禁止条例は、空き缶を収集することを自立の手段としている方々もいるということを理由に、空き缶を対象外にしているんですね。大阪市のホームページ見ますと、本市では、古紙、衣類の持ち去りは条例で規制しておりますが、空き缶等については、収集することを自立の手段としている方々もおられることから、福祉的な観点も勘案し、持ち去り行為を直ちに規制の対象とすることは慎重にならざるを得ないと考えていると、こういう説明がされております。
 警察庁、お聞きしますけれども、こういう全国で一般廃棄物の持ち去り条例を制定している市区町村の中で、この大阪市の条例のような空き缶を規制対象外にしている自治体については把握をされているのか、そしてまた、この法案の検討過程でこういうホームレスの方々などの空き缶集めに対する影響というのは検討されたんでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 全国におけます一般廃棄物の持ち去り条例、これにつきましては、警察の方では内容を把握しているものではございません。
 また、本法律案は、金属盗の防止を図るため必要な措置、実効性等を検討し、まとめたものでございますが、本法律案策定に当たりまして殊更空き缶集めで生計を維持する方々への影響について検討したものではございません。
○井上哲士君 実際にはしかし影響があるわけですし、それを考慮したこういう条例も作られているわけですね。
 そこで、坂井委員長にお聞きしますけれども、今後、本人確認方法を定めることになるわけでありますが、その際に、このホームレスの方々の空き缶集めを金属スクラップ業者の取引から締め出すようなことになったり、この大阪市のようにこの福祉的配慮から空き缶を対象外にしている自治体の条例の理念に反するようなことは私はあってはならないと考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 御指摘の条例は、廃棄物の適正処理でありますとか生活環境の清潔保持等を目的とした条例でございまして、今回何度か御説明もしておりますが、金属盗の防止という本法案の目的とは異なるものであるところから、本人確認の方法につき規定する国家公安委員会規則が条例の理念を否定するという御懸念は当たらないものと考えております。
○井上哲士君 結果として、そういう配慮がされている人がこれによって排除をされてしまうと、自立のすべを失うというようなことはあってはならないということを申し上げているので、是非これはしっかり配慮をしていただきたいと思います。
 次に、いわゆる特定金属切断工具の隠匿携帯の禁止についてお聞きをいたします。
 こういう切断工具の所持そのものを禁止すべきという議論もありますが、今日も汎用性があるという答弁ありましたように、例えば私の実家の周りの農家なんかも皆さん普通に持っているわけですよ。それを犯罪に使用するのが問題なのであって、所持を禁止してがんじがらめにするような社会は私はあってはならないと思います。
 その上で、何が特定金属切断工具にするかは政令で定めますが、まず確認したいのは、この隠匿携帯を禁止することの保護法益というのは一体何なんでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止につきましては、これらが特定金属製物品の窃取に利用されることを防ぐためのものでございまして、その保護法益は、特定金属製物品の窃取の防止に資することにより国民生活の安全と平穏を確保するということと考えております。
○井上哲士君 国民生活の平穏と安全を確保することだということでありました。その点でも、所持そのものの禁止ということではないんだろうと思うんです。
 そこで、この隠匿して携帯するというのはどういうことなのかということなんですが、例えば車のトランクに入れてあるとか、あるいはかばんやリュックの中に入れていて見えないようになっているとか、こういうことも含まれるということなんでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 隠匿の隠してとは、他人が通常の方法で観察した場合にその視野に入ってこないような状態に置くこと、つまり、普通では人の目に触れぬ、触れにくいようにすることを言うものである、言うものでございます。また、携帯とは、法令上、人が物を現に携え持っている場合にのみ用いられる用語でありまして、人が物を事実上支配している場合に広く用いられている用語である所持よりも狭い意味に用いられております。
 指定金属切断工具の隠匿携帯規制に該当するかどうかにつきましては、個別具体の事例に基づいて、携帯している方の職業、携帯している状況、携帯に係る動機、目的、時間的、場所的合理性といった要素を勘案し、正当な理由の有無、隠していると認められるかどうかを総合的に判断することとなります。その上で、一般論としては、御指摘のような事例につきましても、隠匿携帯に該当するケースもあるのではないかと考えております。
○井上哲士君 トランクなどはぱっと普通に誰でも見れる状態なんですが、その場合でもあり得るということですが、結局これは現場警察官の総合的な判断ということになるわけですね。そうなれば、やっぱり不適切な運用や濫用が懸念をされるわけでありますけれども、それを防ぐためにはどのような措置を講ずるおつもりか、国家公安委員長、お願いします。
○国務大臣(坂井学君) この本法律案の運用に当たっては、適正な運用が地域で差が出たりすることなく全国で斉一的に行われることが重要でありまして、そのために、警察庁から都道府県警察に対して、具体的な運用基準を示してその指導を徹底し、正当な理由があって指定金属切断工具を携帯している者が不当に取り締まられることがないよう警察を指導してまいりたいと思います。
○井上哲士君 今回の禁止、携帯禁止罪の規定は、二〇〇三年のピッキング対策法でのマイナスドライバーやバールなどの指定侵入工具の隠匿携帯禁止罪の規定を下敷きにされていると説明をされております。このピッキング対策法の趣旨、要点及び運用上の留意事項についてという通知では、各都道府県警にあっては、いやしくも取締りの権限の濫用のそしりを受けることのないよう、濫用の絶無を期すと、ことが記載をされております。こういう通知であったと思うんですが、実際どうなのかとこの後お聞きしますと、報告を受けていないというだけであって、調べていないというわけですよね。
 私は、やっぱり本当にこれ徹底する上でいえば、実際に濫用がなかった、どうか、なかったのかどうかということをしっかり把握をするということが必要だと思う。その上で徹底をすることが必要だと思いますけれども、最後に大臣、いかがでしょう、あっ、国家公安委員長、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 先ほど申し上げたように、全国で斉一的に、しかもこの濫用がなく、適切に運用されることが重要であると考えております。
 今、実際問題として、ピッキング防止法違反で検挙した事例について、無罪判決が確定したという事例は把握していないという現状でございます。
 いずれにせよ、引き続き適正な法の運用がなされるよう警察を指導してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 濫用など決してないようにしていただきたいと思います。
 終わります。

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