○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
法案は、文部科学省所管の国立女性教育会館法を廃止し、国立女性教育会館、NWECを改組して、内閣府所管の男女共同参画機構を設立するものであります。このNWECは、女性教育の振興により男女共同参画社会の形成の促進に資するということを目的としてきました。
そこで、まず大臣に基本的認識をお聞きしますが、この男女共同参画社会の形成にとって、この女性教育の意義についてどのように認識をされているでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 社会のあらゆる分野に女性が参画していくためには、男性のみならず女性自身がこうしたジェンダー構造に気付いて、それを打破するための力を付けるエンパワーメントが非常に重要であり、そのための女性教育の振興は、男女共同参画社会の形成の促進にも資するものであると考えております。
男女共同参画社会の実現においてこうした女性教育の果たす役割は今後も非常に重要であることから、機構におきましても、引き続きしっかりと女性教育の振興にも努めてまいりたいと考えてございます。
○井上哲士君 女性とエンパワーメントが非常に大事だという御答弁がありました。その重要な女性教育を担って大きな役割を果たしてきたのが、このNWECなわけですね。このNWECの行う女性教育、ジェンダー平等に係る教育、研修事業の目的は、まさに女性のエンパワーメントにあります。
女性差別撤廃条約の一般勧告第三十六号、女児及び女性の教育を受ける権利、この序論にはこう書いております。「教育は人権という価値を促進する上で、変革を起こし、力を与える極めて重要な役割を果たし、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントにつながる道として認識されている。」と、こうしているわけですね。
このようにエンパワーメントというのは、もう単なる知識を身に付けるだけではなくて、学ぶことを通じて、抑圧され、周辺に追いやられている人々が自覚をし、自己決定能力、経済的、社会的、法的、政治的な力を付けて、そうした個人の連帯が人々による社会変革を実現をするプロセスを目指すと、こういうふうに言われております。
今回の機構の創設によって、業務の範囲が女性教育から男女共同参画全般に広がるとされていますけれども、そうであるならば、これまで以上に、この男女共同参画社会の促進の基盤となる女性教育、ジェンダー教育が重要になると考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 先ほども申し上げましたけれども、女性自身がこうしたジェンダー構造というものに気付いて、それを打破するための力を付けるためのエンパワーメントにつながる女性教育、これは引き続き非常に重要なものと認識をしております。
機構は男女共同参画に関する施策を総合的に推進していく役割担いますが、その中においても女性教育の重要性は変わることなく、女性教育に関する研修、調査研究、また情報収集等にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。一方で、あらゆる分野における女性の社会への参画を推進していくという観点では、アンコンシャスバイアスの解消などを取り組む男女共同参画社会の形成の促進が必要であると考えております。
そのためには、女性だけではなく男性に対するアプローチも非常に重要であり、男性の立場に立った又は男性の関心が高いテーマについての教材開発を行うことなど、男性をターゲットにした事業も含めて、総合的に男女共同参画社会の形成の促進に取り組んでいける体制を整備することが重要であり、その役割を機構において担っていくものと考えております。
○井上哲士君 女性教育、ジェンダー教育は引き続き重要であると、そして機構でそれをしっかり位置付けているという答弁なんですが、果たして法案がそうなっているのかなというのが私の疑問なんですね。女性教育とかジェンダー教育というのは、一方的な知識の伝授やオンライン研修、出張講座等ではなし得ないものがあると思うんです。
NWECの主催事業等の実施報告書では様々な事例が紹介をされています。例えば、二〇一九年に教職員や教育委員会の職員を対象に一泊二日で行われた学校における男女共同参画研修というのが報告をされています。全国から集まった教育関係者が同じ施設に宿泊し、共に学ぶ環境が整えられたことで、講義だけでなく、夜間の情報交換会などを通じた交流やネットワークがつくられたり、学校現場の喫緊の課題を踏まえた模擬授業の参観や体験型ワークショップなど連続性のあるプログラムが無理なく構成できたと、こう報告もされているんですね。つまり、研修施設とその宿泊施設が一体となった現在のNWECだからこそ、こうした充実した研修が可能になっているということだと思うんですね。
今回、新たに成立される機構の主たる事務所はNWECの所在地に置いて研修、調査研究等を行うわけですが、宿泊棟や研修棟、体育施設等は撤去するとされております。対面で、しかも宿泊もしながら一定期間学びを共にするという、こういう研修の意義や重要性についてはどのように認識をされているでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 機構におきましては、宿泊及び研修施設を自前で保有することは考えておりませんけれども、今後ともオンラインだけではなくて、宿泊を伴うものも含め、対面での集合研修は大変必要であると考えております。そのため、対面により同じ時間、場所を共有し、学べる機会は参加者のネットワーク形成に有効であるため、引き続き全国各地で対面による研修を実施していく予定であります。
また、研修、宿泊研修につきましても、今後はより幅広い層に御参加いただけるように、全国各地の民間施設等を活用して実施をしたいと考えております。こうした各地で研修等を実施していくことで、年齢が若い方や障害をお持ちの方などにとっても移動の御負担や時間、費用面での御負担が減ることで、むしろ学びの機会を得やすくなると考えております。
今後とも、対面研修や宿泊研修の実施によって、これまで培われてきた男女共同参画に関する草の根のネットワーク、こうしたものを大切に維持発展をさせてまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 対面は研修であり、これからも各地でというお話がありました。
実際にNWECで宿泊研修を体験した方は、自然豊かな環境の下、ゆったりと過ごす時間の中で、女性たちは自分を見詰め、他者から学び、お互いの成長を喜び合いましたと、宿泊棟、研修棟なくしてこの豊かな女性教育の蓄積は得られなかったということもおっしゃっております。
対面型研修重要だということであれば、答弁あったようないろんな地域でやるということと、やっぱり全国からこの嵐山町に集う形式のどちらもできるようにするということは私重要だと思うんですよね。
NWECの宿泊棟や研修棟を撤去する積極的理由はないと思うんですけれども、追加していかがでしょうか。
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
今委員御指摘のように、国立女性教育会館の施設の撤去については様々な御意見があることは承知をしておりますけれども、施設の利用率が低迷していること、老朽化に伴いまして毎年平均して二、三億円程度の修繕費や警備や清掃のために多額の委託費を要していること、オンラインの活用やアウトリーチにより各地で研修を行うことでより多様かつ多くの参加者が見込めることなどを踏まえまして、男女共同参画機構におきましては自前の研修施設を保有する必要性は乏しいと考えているところでございます。そのため、国立女性教育会館の機能強化を図るに当たりまして、所有施設での自前の研修中心の機関からの転換、施設中心から機能中心の機関への転換を進める必要があると考えてございます。
先ほど大臣の答弁にもございましたが、会館を機能強化した後の男女共同参画機構におきましては、全国各地における民間施設等を活用しての宿泊研修、幅広い分野の専門家等の協力を得ての調査研究の実施など、特定の場所や方法にとらわれない多様な事業を展開してまいります。
○井上哲士君 そういう様々なことをやるの、それを否定するものではありません。しかし、これやっぱり果たしてきた役割を照らせば、両方ができるようにするべきでないかと考えますし、様々な費用面のことも言われましたけれども、運営費交付金を減らし続けてきた政府の責任こそが問われるということを指摘をしておきます。
さらに、この女性版の骨太方針二〇二五や新・女性デジタル人材育成プランでは、不足するデジタル人材を女性に求めて、デジタルスキルを身に付けて地元で起業や就職をしてもらって女性の経済的自立を促進するとか、それによって地方から都市への若年女性の流出を食い止める少子化対策の側面が非常に強調されております。
どうも女性の対するこのエンパワーメントよりも、経済界の求めるデジタル人材の育成にNWECや男女共同参画センターを活用しようと考えているように見えるんですけれども、大臣、御見解いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 女性の起業支援につきましては、実際に女性というだけで融資を得ることが困難であることやハラスメントを受けるといったジェンダーギャップがあることを鑑みて、地域の男女共同参画センター等をサポート拠点として抜本的に強化、そして女性の起業支援を行うことを考えているものでございます。
また、デジタル人材育成については、実際にIT技術者に女性が少ないことですとか、デジタル技術を身に付けることが女性の経済的自立に資する有効な手段であることを踏まえ、女性デジタル人材の育成を目指すものでございます。
ジェンダー平等及びジェンダーの視点をあらゆる施策に反映するいわゆるジェンダー主流化が重要でありまして、性別由来の困難や課題に直面しているとの声や事業ニーズは分野を問わず存在しておりますので、そのような状況を踏まえて、幅広くジェンダーギャップの解消に取り組むことが女性のエンパワーメントに資するものと考えています。
今後も、男女共同参画センターは、法律に関係者相互間の連携、協働の拠点と位置付けられることを踏まえ、経済界とももちろん連携をし、そのニーズに応じた取組を進めることも女性のエンパワーメントのために重要なことだと、そうなっていくというふうに考えてございます。
○井上哲士君 女性の経済的自立やデジタルスキルの習得、少子化対策、それ自体は否定をいたしませんけれども、しかし、そういうスキルだけを身に付けたとしても、それだけでは厳然として横たわっている男女差別を乗り越えていくことはできないと思うんですよね。やはり、女性に対するエンパワーメントとスキルの両方の取得があってこそ、これが達成をできるとし、男性自身のこのアンコンシャスバイアスを克服する学びも必要だと思います。
現在の国立女性教育会館は文部科学省が所管する社会教育施設でありますけれども、今後は大半は機構のですね、なって、この内閣府の管理監督を受けるということになりますと、女性教育やジェンダー教育の位置付けが後景に追いやられないか、大変懸念を持っております。
もう一点お聞きしますが、今後、自治体が、男女共同参画センター、これが法的に位置付けられるわけでありますが、いろんなアンケートを見ましても、職員の理解が少ない、意欲に欠けているとか、専門性の高い職員の配置が不可欠という声が寄せられております。今後この男女共同参画センターの職員の専門性の向上が大事でありますが、設置の形態、そこで働く職員の雇用形態が多様で多くは非常に不安定雇用になっていると。
また、自治体職員の場合は三から五年で異動するなど専門的なスキルの蓄積がされていないという指摘がありますが、今後この男女共同参画センター職員の処遇改善、必須だと思いますけれども、どのように政府は対応するんでしょうか。
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
今般の法改正によりまして、男女共同参画センターは、関係者相互間の連携、協働の拠点と位置付けられ、地方公共団体にはそのための体制確保に努める義務が課せられることとなりますので、まずは各地方公共団体において、各地域の課題やニーズに応じて、センターの体制や事業、必要な予算措置について御検討いただきたいと思います。
その上で、政府といたしましては、今後策定いたしますセンターの設置、運営に関するガイドライン等により、センターの職員が能力と業務に見合った処遇を受けられるよう配慮することを促すとともに、男女共同参画機構によるセンター職員の専門性向上等に資する研修プログラムや業務に必要な情報等の提供、また地域女性活躍推進交付金の活用などを促すことで支援していくことを考えております。
○井上哲士君 これまで、そういう地方のこの男女共同参画の取組の職員の研修などにもやっぱりNWECは大きな役割を果たしてきたわけですよね。その感想でも、やっぱり集まって一緒に議論をしてきたことが大きな力になったと言っているわけでありまして、こうした学びの機会を奪うということは機能強化とは逆の方向になるんじゃないかと考えますし、日本の男女共同参画の促進となっていくこの女性教育の後退だけではなくて、NWECがアジア地域において非常に大きな国際貢献の分野で貢献してきましたけれども、この点の後退にもならざるを得ないと。機能強化というならば、今のNWECを維持発展をさせるべきだということを強く求めたいと思います。
最後に、この間、女性トイレの行列解消を度々、当委員会でも取り上げてまいりました。政府は昨年十二月に、能登半島地震の教育を踏まえて避難所の運営指針を改定しました。その中で、これまでは参考にとどまっていた国連のスフィア基準を満たすべき基準として、男女のトイレの割合を一対三を確保するようにと、こういうふうに明記をされました。
これを踏まえて、今年四月十五日の当委員会で質問しましたら、三原大臣からは、できる限り待ち時間の男女の均等化が図られるよう強めることが望ましいことを自治体に周知してまいりますと、こういう答弁がありました。こういう基準を災害時だけではなくて日常の社会生活で広げていく上で、私は学校というのは非常に重要な位置付けがあると思うんですね。
一方、以前質問でも紹介した、この公共空間のトイレの数を調べている百瀬まなみさんが六月八日付けの朝日新聞でこう述べております。都内のある区の教育委員会に電話をしました。区立小中学校全体で男子用便器数は小学校が女子の一・三九倍、中学校が一・四二倍でしたと。これが現状なんですね。ですから、混み合うときには、女性の方が時間掛かりますから、やっぱり列ができることもあるでしょう。
これまで、学校でのトイレの数の男女比というのはどのような考え方で設置されているのか、今後、待ち時間の均等化、重要だという答弁もあったわけで、どのようにこれを周知して徹底していくのか、文科省、いかがでしょうか。
○政府参考人(金光謙一郎君) お答え申し上げます。
学校施設におきます男女のトイレの数に関する法令上の基準は設けられておりませんが、一般的に、公共施設におきましては、建築設備関係の学会が定めた基準を参照しつつ、各施設管理者が施設の実態に応じて整備を行っているものと承知をしております。
文部科学省におきましては、学校施設を整備する際の計画、設計上の留意事項をお示しをした学校施設整備指針を作成しておりまして、その中で、トイレにつきましては、男女別に児童数、利用率等に応じた適切な数の衛生器具を設置できるようにということをお示しをさせていただきまして、各学校設置者に対し、男女比も含め適切なトイレ整備を促しているところでございます。
今後とも、引き続き、各学校設置者において適切なトイレ整備が進むよう、支援や周知に努めてまいります。
○井上哲士君 適切な整備とおっしゃいましたけど、先ほど、現実に、ある都区内の小中学校で男性の方が多いということになっているわけでありまして、まあスフィア基準の中に示されたものからいえばかなり格差があるわけですね。
これ、やはり、しっかり徹底をしていただきたいんですが、特に、災害時には学校の体育館の多くが避難所になります。能登半島地震では、冷たい床に雑魚寝で、温かい食事も提供されないなど様々問題になったわけでありますが、やはり、きちっと計画と備蓄が必要だと思うんですが、この学校が避難所になる場合どう備えるのか、そして、特にこの女性トイレの確保、どういう方針を持って備蓄をし、新しい指針の下でどう強化していくのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(金光謙一郎君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、学校施設については、災害発生時には避難所として利用されますことから、トイレを含めその防災機能を確保することは重要であると考えてございます。
文部科学省におきましては、過去の災害における経験を踏まえ、平成二十六年に有識者会議の報告書を取りまとめてございまして、その中で、トイレにつきましては、複数の対策を組み合わせ必要なトイレ数を確保することが重要であるとの考え方をお示しするとともに、仮設トイレにつきましては、男性に比べ女性の方が混みやすいことから女性用トイレを多めに確保することが望ましいことをお示しをさせていただきまして、各学校設置者に周知をさせていただいているところでございます。
引き続き、関係省庁とも連携し、学校のトイレの問題含め、学校施設の防災機能強化に取り組んでまいります。
○井上哲士君 多めにとどまらず、スフィア基準に沿って一対三、是非これが厳守されるように必要な備蓄や取組をお願いしたいと思います。
終わります。
内閣委員会(男女共同参画機構法案、学校トイレの男女格差是正)
2025年6月19日(木)